上 下
13 / 21

13.

しおりを挟む
  
 
無事に伯爵家まで戻ると、両親と弟が駆け寄ってきた。

囮になることは了承していたけれど、やはり心配させてしまったようだ。 


「ただいま。」

「おかえり。無事でよかった。」


発端が自分にあった父は、ずっと私の婚約を何とかしたいと思ってくれていた。
税収の誤魔化しだけでも婚約は解消されただろうけど、婚約解消の傷は残る。
今回のようにギガルド自ら犯罪を犯したことで、婚約はなかったことになった。

綺麗さっぱり。バンズ侯爵家、そんなのあったっけ?で済む。



「パルテ伯爵、詳しい説明はまた後日。
 ヴィッテ嬢も疲れているでしょうから、ゆっくり休んでください。」


リカルド殿下の言葉と送り届けてくれたことにお礼を告げ、屋敷に入った。 


多少疲れてはいるけど、開放感の方が大きかった。


それにしても、殿下はともかくディート様は何なんだろう?
異変に気づいたのがディート様って言ってたけど、異変って?

リカルド殿下が指揮してたのかな?今回のバンズ侯爵家のこと。 
ディート様はリカルド殿下の側近みたいな位置なのかな?
それで今回もずっと一緒だったのかも。

よくわからないけど、後で詳しく話してくれるみたいに言ってたから、待ってたらいいよね?





翌日、図太くも元気な私はちゃんと学園に行った。

リカルド殿下は笑って、ディート様は驚いて私を見ていた。
そして、こっそりと紙を受け取り、帰りに王族に許可された応接室に呼び出された。

この3人で話せる場所はあまりない。

殿下に合わせると、王城に行かなければならない。
ディート様に合わせると、私が公爵家に伺う理由を勘繰られる。
うちに来てもらうのもそうなのだ。
 


授業終了後、殿下たちが移動したのを確認して、私もこっそりと応接室の扉をノックした。

「さて、ヴィッテ嬢、昨日はお疲れさま。
 君の尽力によって、危険思考の男4人を犯罪者にすることができたよ。ありがとう。」

「いえ、こちらとしても意外に早く婚約がなかったことに出来て、家族共々安心しています。」

「だよねぇ。家族や事業を盾に金を巻き上げられ始めたら、終わりが見えなくなる。
 まぁ、どの道、没落が見えていたんだけどね。」

「あの時、殿下たちに見られたお陰ですね。ありがとうございました。」

「君が毎週同じ時間にいなくなることに気づいたのがディートなんだ。」

へ?何それ。

「えーっと。それが昨日言ってた異変でしょうか?」

「そう。あの前の週に、ギガルドに会ってお金を渡しているのを見たのが調査のきっかけ。」

前の週…ってことはその前もあったから気づいたってことよね?何で?

「ディートが何で気づいたかが不思議だよね?君の告白がキッカケだったんだって。」

告白が?というか、リカルド殿下に言ったの?それに、何で殿下が全部話してるの?

「ほらディート。自分で説明しろよ。細かい経緯は知らないんだから。」

そりゃそうだ。全部知ってたら怖い。

ディート様が話出した。

「君が私に告白したのは、バンズ侯爵家から助けてもらおうと思ったからなんだろ?」


………は?なんですって?






 



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】

雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。 誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。 ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。 彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。 ※読んでくださりありがとうございます。 ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

裏切りの公爵令嬢は処刑台で笑う

千 遊雲
恋愛
公爵家令嬢のセルディナ・マクバーレンは咎人である。 彼女は奴隷の魔物に唆され、国を裏切った。投獄された彼女は牢獄の中でも奴隷の男の名を呼んでいたが、処刑台に立たされた彼女を助けようとする者は居なかった。 哀れな彼女はそれでも笑った。英雄とも裏切り者とも呼ばれる彼女の笑みの理由とは? 【現在更新中の「毒殺未遂三昧だった私が王子様の婚約者? 申し訳ありませんが、その令嬢はもう死にました」の元ネタのようなものです】

【完】婚約者に、気になる子ができたと言い渡されましたがお好きにどうぞ

さこの
恋愛
 私の婚約者ユリシーズ様は、お互いの事を知らないと愛は芽生えないと言った。  そもそもあなたは私のことを何にも知らないでしょうに……。  二十話ほどのお話です。  ゆる設定の完結保証(執筆済)です( .ˬ.)" ホットランキング入りありがとうございます 2021/08/08

そんなあなたには愛想が尽きました

ララ
恋愛
愛する人は私を裏切り、別の女性を体を重ねました。 そんなあなたには愛想が尽きました。

ガネス公爵令嬢の変身

くびのほきょう
恋愛
1年前に現れたお父様と同じ赤い目をした美しいご令嬢。その令嬢に夢中な幼なじみの王子様に恋をしていたのだと気づいた公爵令嬢のお話。 ※「小説家になろう」へも投稿しています

【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから

よどら文鳥
恋愛
 私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。  五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。  私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。  だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。 「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」  この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。  あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。  婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。  両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。  だが、それでも私の心の中には……。 ※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。 ※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。

この国に聖女はいない

豆狸
恋愛
いるのは、愛に狂った女だけ── なろう様でも公開中です。

裏切りの代償~嗤った幼馴染と浮気をした元婚約者はやがて~

柚木ゆず
恋愛
※6月10日、リュシー編が完結いたしました。明日11日よりフィリップ編の後編を、後編完結後はフィリップの父(侯爵家当主)のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  婚約者のフィリップ様はわたしの幼馴染・ナタリーと浮気をしていて、ナタリーと結婚をしたいから婚約を解消しろと言い出した。  こんなことを平然と口にできる人に、未練なんてない。なので即座に受け入れ、私達の関係はこうして終わりを告げた。 「わたくしはこの方と幸せになって、貴方とは正反対の人生を過ごすわ。……フィリップ様、まいりましょう」  そうしてナタリーは幸せそうに去ったのだけれど、それは無理だと思うわ。  だって、浮気をする人はいずれまた――

処理中です...