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無事に伯爵家まで戻ると、両親と弟が駆け寄ってきた。

囮になることは了承していたけれど、やはり心配させてしまったようだ。 


「ただいま。」

「おかえり。無事でよかった。」


発端が自分にあった父は、ずっと私の婚約を何とかしたいと思ってくれていた。
税収の誤魔化しだけでも婚約は解消されただろうけど、婚約解消の傷は残る。
今回のようにギガルド自ら犯罪を犯したことで、婚約はなかったことになった。

綺麗さっぱり。バンズ侯爵家、そんなのあったっけ?で済む。



「パルテ伯爵、詳しい説明はまた後日。
 ヴィッテ嬢も疲れているでしょうから、ゆっくり休んでください。」


リカルド殿下の言葉と送り届けてくれたことにお礼を告げ、屋敷に入った。 


多少疲れてはいるけど、開放感の方が大きかった。


それにしても、殿下はともかくディート様は何なんだろう?
異変に気づいたのがディート様って言ってたけど、異変って?

リカルド殿下が指揮してたのかな?今回のバンズ侯爵家のこと。 
ディート様はリカルド殿下の側近みたいな位置なのかな?
それで今回もずっと一緒だったのかも。

よくわからないけど、後で詳しく話してくれるみたいに言ってたから、待ってたらいいよね?





翌日、図太くも元気な私はちゃんと学園に行った。

リカルド殿下は笑って、ディート様は驚いて私を見ていた。
そして、こっそりと紙を受け取り、帰りに王族に許可された応接室に呼び出された。

この3人で話せる場所はあまりない。

殿下に合わせると、王城に行かなければならない。
ディート様に合わせると、私が公爵家に伺う理由を勘繰られる。
うちに来てもらうのもそうなのだ。
 


授業終了後、殿下たちが移動したのを確認して、私もこっそりと応接室の扉をノックした。

「さて、ヴィッテ嬢、昨日はお疲れさま。
 君の尽力によって、危険思考の男4人を犯罪者にすることができたよ。ありがとう。」

「いえ、こちらとしても意外に早く婚約がなかったことに出来て、家族共々安心しています。」

「だよねぇ。家族や事業を盾に金を巻き上げられ始めたら、終わりが見えなくなる。
 まぁ、どの道、没落が見えていたんだけどね。」

「あの時、殿下たちに見られたお陰ですね。ありがとうございました。」

「君が毎週同じ時間にいなくなることに気づいたのがディートなんだ。」

へ?何それ。

「えーっと。それが昨日言ってた異変でしょうか?」

「そう。あの前の週に、ギガルドに会ってお金を渡しているのを見たのが調査のきっかけ。」

前の週…ってことはその前もあったから気づいたってことよね?何で?

「ディートが何で気づいたかが不思議だよね?君の告白がキッカケだったんだって。」

告白が?というか、リカルド殿下に言ったの?それに、何で殿下が全部話してるの?

「ほらディート。自分で説明しろよ。細かい経緯は知らないんだから。」

そりゃそうだ。全部知ってたら怖い。

ディート様が話出した。

「君が私に告白したのは、バンズ侯爵家から助けてもらおうと思ったからなんだろ?」


………は?なんですって?






 



 
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