12 / 21
12.
しおりを挟むギガルドたち愚かな4人組が郊外の家に着いたらしい。
私はベッドで寝たふり。
家に4人が入ってきた。
「おーザック。上手く行ったか?」
「うん。隣のベッドで眠らせてる。」
「起きたか?」
「起きそうになったから、さっき薬を多めに嗅がせた。だからまだ起きない。」
「じゃあ、仮面はいらないな。ちょっと覗きに行ってみるか。」
4人は隣の部屋に移動した。
「おーヴィッテじゃん。」
「この女か。意外と可愛いんじゃないか?」
「体はどうなんだ?貧乳じゃなさそうだな。」
「服を脱がせればわかるさ。後で仮面つけてから手足を押さえつけようぜ。」
「はい。アウト。誘拐容疑と強姦未遂で逮捕。」
どこからともなく現れた男たちに4人は確保された。
もちろん、私は真っ先に守られていたけど。
ギガルドは何が起こったのかよくわからなかったようだ。
「え?何?誰?ナニコレ?」
「お前らは、身代金目的の誘拐と強姦未遂、更に言えば慰謝料目的も加えた容疑で逮捕だ。」
「え?……ザックか。裏切ったな!」
「裏切りたくもなるでしょ。こんな捕まるとしか思えない犯罪なんて加担したくないさ。」
「計画は完璧だった!」
いやいや、穴だらけだよ?
「長時間、馬車が同じ場所にあるって思ってるところから破綻してるぞ?」
馬は動く生き物。誰も見張っていない馬車なんて盗まれてもおかしくないし。
所詮、貴族のお坊ちゃまたちが考えた案だということだ。
誘拐という犯罪は罰が重い。
彼らはもう貴族には戻れないし、逆恨みも考慮されてもう会うことはないだろう。
帰る馬車の中で、リカルド殿下が教えてくれた。
バンズ侯爵家は揃いもそろって浪費家で見栄張りらしい。
先代の築いた財を使い果たし、次は領地からの税収を誤魔化し、それでも足りないので裕福な家に援助してもらおうと考えたそうだ。
どの道、5年毎の監査が今年で税の誤魔化しが明らかになる年だったということらしい。
なので、現在の侯爵一家にはギガルドの件も併せて全員が罪になる。
領地管理は管理者が真面で問題なかったので、遠縁を当主として引き継がせる。
但し、領地は縮小されて男爵家として。
金がないのが幸いしたのか、他に大きな犯罪はなかった。
あったのは、パルテ伯爵への暴漢と使用人たちへの脅しくらい。
家族を路頭に迷わせないために、パルテ伯爵の財力が必要なのだと護衛と使用人たちを脅し、まんまと婚約することに成功はしたが、援助を得ることができなかった。
やっぱり長男に裕福な高位貴族の嫁を貰おう。
ヴィッテは格下の伯爵家だったから、援助が圧力と捉えられた。
同等の侯爵家の嫁なら援助してもらえるはず。
だが、どこにも断られる。どうすればいいのだ?
と、悩んでいたところを一家まとめて捕らえたということだ。今日の昼間に……
誘拐が未遂に終わっていたとしても、ギガルドは貴族ではなくなっていたのだ。
つまり、ヴィッテとの婚約は白紙。なかったことになったのだった。
125
お気に入りに追加
1,377
あなたにおすすめの小説
会うたびに、貴方が嫌いになる
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。
アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。
貴方でなくても良いのです。
豆狸
恋愛
彼が初めて淹れてくれたお茶を口に含むと、舌を刺すような刺激がありました。古い茶葉でもお使いになったのでしょうか。青い瞳に私を映すアントニオ様を傷つけないように、このことは秘密にしておきましょう。
婚約者の心変わり? 〜愛する人ができて幸せになれると思っていました〜
冬野月子
恋愛
侯爵令嬢ルイーズは、婚約者であるジュノー大公国の太子アレクサンドが最近とある子爵令嬢と親しくしていることに悩んでいた。
そんなある時、ルイーズの乗った馬車が襲われてしまう。
死を覚悟した前に現れたのは婚約者とよく似た男で、彼に拐われたルイーズは……
やり直し令嬢は本当にやり直す
お好み焼き
恋愛
やり直しにも色々あるものです。婚約者に若い令嬢に乗り換えられ婚約解消されてしまったので、本来なら婚約する前に時を巻き戻すことが出来ればそれが一番よかったのですけれど、そんな事は神ではないわたくしには不可能です。けれどわたくしの場合は、寿命は変えられないけど見た目年齢は変えられる不老のエルフの血を引いていたお陰で、本当にやり直すことができました。一方わたくしから若いご令嬢に乗り換えた元婚約者は……。
愛を語れない関係【完結】
迷い人
恋愛
婚約者の魔導師ウィル・グランビルは愛すべき義妹メアリーのために、私ソフィラの全てを奪おうとした。 家族が私のために作ってくれた魔道具まで……。
そして、時が戻った。
だから、もう、何も渡すものか……そう決意した。
二人ともに愛している? ふざけているのですか?
ふまさ
恋愛
「きみに、是非とも紹介したい人がいるんだ」
婚約者のデレクにそう言われ、エセルが連れてこられたのは、王都にある街外れ。
馬車の中。エセルの向かい側に座るデレクと、身なりからして平民であろう女性が、そのデレクの横に座る。
「はじめまして。あたしは、ルイザと申します」
「彼女は、小さいころに父親を亡くしていてね。母親も、つい最近亡くなられたそうなんだ。むろん、暮らしに余裕なんかなくて、カフェだけでなく、夜は酒屋でも働いていて」
「それは……大変ですね」
気の毒だとは思う。だが、エセルはまるで話に入り込めずにいた。デレクはこの女性を自分に紹介して、どうしたいのだろう。そこが解決しなければ、いつまで経っても気持ちが追い付けない。
エセルは意を決し、話を断ち切るように口火を切った。
「あの、デレク。わたしに紹介したい人とは、この方なのですよね?」
「そうだよ」
「どうしてわたしに会わせようと思ったのですか?」
うん。
デレクは、姿勢をぴんと正した。
「ぼくときみは、半年後には王立学園を卒業する。それと同時に、結婚することになっているよね?」
「はい」
「結婚すれば、ぼくときみは一緒に暮らすことになる。そこに、彼女を迎えいれたいと思っているんだ」
エセルは「……え?」と、目をまん丸にした。
「迎えいれる、とは……使用人として雇うということですか?」
違うよ。
デレクは笑った。
「いわゆる、愛人として迎えいれたいと思っているんだ」
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる