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しおりを挟むバンズ侯爵家とパルテ伯爵家の婚約契約時の話をクラウドは父である国王陛下と兄の王太子に話して聞かせた。
「現侯爵が跡を継いでからのこの4年間、何だかんだと言い訳をして年々納税額が減っていた。
ここらで然るべき調査をする時期が来たな。」
「呆れますね。長男は確か、数年前に婚約を解消しています。
それからは高位貴族令嬢に婚約を打診しては断られているとか。
パルテ伯爵家に目をつけるのも当然ですね。……次男に継がせるつもりだったなんて。」
王太子は失笑した。
クラウドは国王陛下に許可を求めた。
「父上、バンズ侯爵家がパルテ伯爵家に婚約を打診した経緯を詳しく知りたいのです。
断れない何かがあったとしか思えません。
いくら格上からの打診だとはいえ強制はできませんし、伯爵家に有利な点は何もないのです。」
「もちろん、調査チームを立ち上げさせるが、侯爵家の内情よりも婚約が気になるようだな。
クラウド、まさかお前はパルテ伯爵令嬢に好意があるのではないだろうな?」
「いえいえ。私は婚約者を大切に思っていますよ。
パルテ伯爵令嬢に興味を示しているのはディートです。」
「あぁ、そういうことか。まだ婚約者が決まっていなかったな。
伯爵令嬢か。問題はなさそうな令嬢か?」
「ええ。真面目で成績もいいですし、地味な装いをしていますが可愛い令嬢です。」
「なるほど。…侯爵位が一つ空きそうだし、伯爵位から陞爵させると釣り合いもとれるな。」
バンズ家を落としてパルテ家を上げるのか。
伯爵令嬢でも問題はないが、侯爵令嬢の方が将来の公爵夫人としてはいいだろう。
元々、ディートは妹の婚約者候補であったため、婚約者が決まっていなかった。
しかし、妹は隣国の王族との婚約者が決まったため、ディートは婚約者が必要になった。
本人にまだその気がないので、打診はあっても断っている。
こうしてディートとヴィッテ本人たちの意思は考慮されることなく、勝手に話が進みつつあった。
そして翌週にヴィッテがあの男と会うところを再び後をつけて、手をあげられそうになったところでクラウドとディートが声をかけて止めたのだ。
バンズ侯爵令息ギガルドは、婚約者に金をたかる小さい男だということは先週わかっていた。
しかし、今週は簡単に手をあげようとする短絡的思考の男だということもわかった。
つまり、逆ギレして何を仕出かすかわからない。
ヴィッテには人気がないところに一人で行かないようにと助言はしたが、心配ではあった。
隣にいるディートはヴィッテの後ろ姿をずっと見送っている。
学園にいる時は、この男がヴィッテの行動に目を光らせそうだ。クラウドはそう思った。
調査チームも発足され、侯爵家はこれからどんどん暴かれていくことになる。
そして、クラウドの要望通り、早いうちにパルテ伯爵家にも密かに調査官が訪れた。
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