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しおりを挟む裏手に向かったヴィッテの後をこっそりと追いかけた。何故かクラウドもついてきたが…
誰かの声が聞こえる。
ケーキセット?何の話だ?
金を渡してる?
男がこっちに向かってきた。隠れて去るのを待った。
「なんでいつもこんなしみったれた金なんだよ…」
ブツブツと文句を言いながら男は去って行った。
恐喝なのか?毎週?彼女は何をしたんだ?どんな弱みを握られた?
ヴィッテもこっちへやって来た。
「お金を渡す義務もないのにあげてるのよ?何で文句言われなきゃいけないのかしら。」
……は?
恐喝じゃないのか?
「男はバンズ侯爵令息だな。あの家、没落寸前だぞ?
そうか。金目当てで婚約者になったのかもしれないな。パルテ伯爵家は裕福だから。
格上からの打診を断れなかったか、何か理由があるのかも。」
「婚約者?!だとすると最近なんだな。そうか…彼女は助けを求めて俺に告白したのか…」
「え?あの子に告白されてたの?だから気にしてたのか。
そんなに気にしてるのになんで断ったんだ?」
「断った時に、笑顔で礼を言って去って行ったんだ。
そんな令嬢は今までいなかったから気になって……彼女の意思での告白だったのかどうか。」
「家が絡んだ告白だったかもしれないって?
そうだな。お前と婚約したらバンズ家と縁を結ばなくて済むと思ったのかもな。」
「だけどな、もしそうだったなら、あっさりと去っていったのも謎だろ?
婚約を結ばなくても、うちとの縁を匂わせるだけでバンス侯爵家は引いたかもしれない。」
「…いや。お前が興味を引かれたのは、彼女が笑顔であっさりと去ったからだ。
婚約を断りたいからフリをしてくれと頼まれて了承するお前じゃないだろ?」
確かに。そんな頼みを引き受ければキリがないし、外堀を固められて本当に婚約する羽目になる。
「縁を期待してダメ元で告白して、やっぱり断られたから笑顔で去った。そういうことか。」
彼女が望んだのは避けたい婚約から助けてくれる相手だったんだな。
…好きですって言ったくせに。
「どうする?お前が気にした笑顔の理由は婚約絡みの告白だったということで合ってるだろう。
納得したか?それとも、彼女の婚約を解消できないか調べてみるか?」
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「学園で金銭のやり取りは禁止だろ?それに、あの男はそのうち恐喝したり暴力沙汰をおこしそうだ。」
「つまり、調べてみるってことだね?じゃあまず婚約契約書を調べておくよ。」
第二王子の権限で、閲覧くらいはできるんだろう。
「ああ、頼む。」
ヴィッテのためだけではない。あの男は嫌な感じだ。
調査しておいた方がいい。何か掴むことが出来ればついでに婚約も解消されるだろう。
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