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しおりを挟むギガルドは学園で、人づてに私を呼び出した。
呼び出された場所に行ってみると、手を出された。
首を傾げると、
「小遣いは?」
と言った。顔が引きつりそうだった。この人、本当に私からお小遣いを貰う気だったの?
「持ってきてません。」
「チッ…使えねぇなぁ。婚約者に貢げよ。」
「うちは倹約をモットーにしています。見てわかりませんか?」
そう言って、飾り気のない姿を、どうだ!と胸を張って見せた。
眉間に皺を寄せただけのギガルドは、毎週この時間、ここに小遣いを持ってくるように言って去っていった。
それから毎週、本当に小遣いを渡してやることになった。
「なんだ、この額は。」
「友人と買い物をしたので、残った額です。」
「買い物するな!」
次の週。
「なんだ、この額は。」
「友人とケーキセットを食べたので、残った額です。」
「食べるな!」
更に次の週。
「なんだ、この額は。」
「友人とお芝居を見たので、残った額です。」
「……お前、いい加減にしろよ?」
「何がですか?私の貴重なお小遣いをあなたにわけているんです。」
「貴族令嬢がこんなしみったれた額しか持ち歩いていないはずないだろ?」
「あなたに渡しているお小遣いは、本来なら教会に募金しているお金です。
私はいつも、こうやって生活しているんです。
しみったれた額を貰っていくあなたに非難される覚えはありません。」
「お前……!」
カッとなったギガルドが手をあげようとした時、声がした。
「へー。令嬢にたかる男がいるなんて。しかも手をあげようとしたか?」
声がした方を見ると、クラウド第二王子殿下とディートがいた。
「あ……」
「学園で金銭のやり取りは禁止だよ?ねぇ、君はこの男に借金でもあるの?」
「いいえ?全く。」
「じゃあ、やっぱりたかられてるの?」
「まぁ、そんな感じでしょうか?」
「おい!違います。彼女は婚約者なんで。」
「婚約者に、毎週、お小遣いを貰ってるのかい?」
言葉を区切りながら追い詰める殿下に、ギガルドは返答できない。
しかも、毎週ここにいることがバレてる。
「バンズ侯爵令息。君たちの婚約は釣り合っているのかな?」
「……失礼します。」
殿下が引き留める言葉を言わないうちに、ギガルドは悔しそうに去っていった。
「ありがとうございました。」
ヴィッテは助けてもらったお礼を言った。
「どういたしまして。あんなのが婚約者でいいの?」
「よくないです。ですが、仕方がないので。向こうの爵位が上ですし。」
「あまり煽って怒らせるようなことは言わない方がいい。
彼は少し短絡的みたいだからね。人気がないところに一人で行かないように。」
「……はい。」
そうね。あの調子じゃ何を仕出かすかわからない。
友人を巻き込みたくなかったけれど、いつも誰かと行動することにするわ。
来週からお小遣いはあげなくて良くなったのかしら?
屋敷には心当たりのない請求書が山のように送られてきていた。
バンズ侯爵家が買った物が、婚約を機にパルテ家へ請求書を回しているらしい。
毎月こんなに買ったらお金に困るのは当然じゃない?
これもお小遣いの一種よね………
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