誤解されて1年間妻と会うことを禁止された。

しゃーりん

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義兄上のクラークが言う。


「お前にも教えてやりたかったんだよ?
 だけど、不安定なアイリーンに不安定なお前を側に置くわけにはいかなかった。
 アイリーンが吐けばお前も吐きそうだし、アイリーンが歩こうとしても抱きかかえるだろう。
 そうすると出産に耐えうる体力もつかないし、悪循環になる。
 そう言われたら迷惑をかけないと言いそうだが、お前はアイリーンの前では無表情になれない。
 アイリーンと子供のために、お前には知らせない方が無事に出産できそうだという結論に至った。
 もちろん、お前の両親も了承済みだ。」


そう説明されてしまえば、何も反論はできない。
ただ単に僕へのお仕置きや困らせるためだけにアイリーンに会わせなかったのではないから。

むしろ、無事に子供が生まれてきてくれたのは僕が知らなかったからかもしれない。

鬱陶しいほどの心配をアイリーンにしてしまっただろう僕がアイリーンの負担にならないようにされてしまったということだ。


「調査もちょうどいい時間潰しにもなっただろう?
 ただ1年会えないとなると、お前の方も寝込んでは困るからな。
 アイリーンが受け取った手紙に作為を感じたから調査は必要だったんだ。
 アイリーンと侍女のローレンが言うには、あの手紙は男が出してきたと思っていたそうだ。
 『彼はあなたに相応しくない』とあったからな。
 アイリーンがお前に相応しくないというなら、女が離婚させるために送ってきたと考えられる。
 だが逆に取れる言葉だった。
 娼館に通ってアイリーンを裏切ったお前がアイリーンに相応しくない。お前を貶める言葉だ。
 アイリーンはお前を娼館に連れていくマーキュリーを見て、彼の可能性も考えたようだよ。
 まぁ、吐き気が治まってからようやくそう思ったらしいけど。」

「アイリーンに関わることでも冷静に判断できるようになれよ?」

「はい。ご迷惑をおかけしました。」

「ところで……覗き部屋ってどうだった?」

「………へ?」


義兄上が興味津々に覗き部屋について聞いてきた。
 

「絡みが見えるだけ?会話も聞こえる?」

「まぁ、そうですね。囁くような声はもちろん聞こえませんが。
 ですが、覗かれているのがわかった上の行為ですから、普通の会話は少ないかと。」

「そうだけど、声で知り合いだと判断できるかどうかなぁってね。」

「特徴のある声や、あるいはその人かもしれないと思いながら聞いたらわかると思います。」


僕はまさかあの男がマーキュリーだとは思っていなかったからすぐには気づかなかったけど。
それに興奮している時の声って通常の声とは少し違うから。

覗き部屋では複数人が同時に覗けるし、覗いて興奮してしまったら娼婦を抱くことを前提とした価格だったと説明した。
それにカーテンを引き忘れたら、隣の部屋から覗かれるかもしれないということを。


「それって乱交もあり得るってことじゃない?
 男2人で覗いてたら、その後に娼婦がそれぞれを相手するんだろ?
 1組が部屋を移れば問題ないけど、同じ部屋の中で2組が絡んだら娼婦も交換して交わりそうだ。」

「覗く者は覗かれたい思いもあるのかもしれないな。
 もしジョルジュがカーテンに気づかず娼婦を抱いたとしたら、言い逃れのできない状況だったな。」


マーキュリーはそれも望んでいたのかもしれない。
彼が2度目を終えた時には僕はいなかった。
僕が娼婦を抱いたかどうかはマーキュリーには判断できなかっただろう。


僕は確かに覗いたけれど、覗かれたい願望はない。
ただ、他の男と自分を比較して不安を解消したかっただけなんだから。
 

義兄クラークは何かに利用しようと考えているみたいだが好きにしたらいい。僕には関係ない。
もう二度と、娼館に行くことはないから。


 
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