上 下
14 / 14

14.

しおりを挟む
 
 
ルイーズは、娘を3人、息子を1人産んだ。

公爵家の長女ローラは王太子の婚約者に決まり、将来は王太子妃、王妃となる。 
妹弟の面倒を見てくれる、とても優しい姉。
母親が違うことは話してある。絵姿も渡してある。
母方の祖父母が違うので、気づくのは当然だ。
うっすらと、実の母親がベッドにいた姿と頭を撫でてくれたことを覚えているらしい。


男子継承優先のため、息子が跡継ぎとなる。

ルイーズが産んだ娘3人のうちの1人は、セルフィ様のお兄様の子供の婚約者。将来の侯爵夫人。
あとの2人も高位貴族との婚約が決まっている。 

ルイーズは我ながら頑張って産んだと思った。





ガレント様の妻になって16年が経ち、ローラが王太子に嫁いだ後、彼が懺悔するように言った。


「第2夫人になったせいで結婚式、してやれなくてごめんな。
 ルイーズが第2夫人に選ばれたのは、私のせいなんだ。」

「どういうことですか?」

「一度、セルフィに言われたことがある。
 私がルイーズをよく見ている。ルイーズが好みのタイプなのか、と。」

「どう答えたのですか?」

「……可愛いと思う、と。」

「私が公爵家で侍女になったのは、私が第2夫人に相応しいかどうかを見定めるためだと聞きました。
 なので、ガレント様の答えも一因かもしれませんが最初から候補だったそうですよ。」

「……だからか。あの夜はおそらく仕組まれたものだよな?」

「ええ。侯爵家にも頼んで夜間に2人で一緒の部屋にいたとして責任を取らせるつもりだったと。
 廊下でガレント様が出てくるのを待っていたそうです。」

「セルフィから聞いたのか?」

「はい。セイラを妊娠中に昔話を聞かせてくれました。その時に。
 まさか、ただ寝ていただけではないと知って、侯爵家でも驚いたそうですよ。」

「あぁ。本当に幸せな夢を見ているんだと思ってたんだ。
 部屋に入ってすぐ、ソファで少し寝てしまってベッドに移ろうとしたら君がいた。
 あの頃、毎日のようにルイーズを夢で見てて……抱きたかったんだ。
 ルイーズが応えてくれたから、絶対に夢だと思っていた。」

「私も本当にそう思っていたんです。
 ガレント様みたいな素敵な男性と初体験を出来るなんて、夢でしかないし夢だからいいかって。
 あの晩のお酒、絶対に酔いが回るのを飲まされましたね。」
 
「私は……あの夜の前からルイーズに惹かれていた。
 そのことに気づかされた夜だった。
 ルイーズ以外の女性だったら、夢でも逃げていたよ。
 君を抱いてしまったら愛しくて手放せなくなって、侯爵に君を第2夫人にしたいと言ったんだ。
 侯爵もそれを考えていたと言っていた。
 娘であるセルフィを押しつけてしまって申し訳なかったと受け入れてくれた。
 だけど……君が第2夫人になることは既に仕組まれていたんだね。
 すっかり騙されたよ。まさか16年経って知ることになるとは。」

「ごめんなさい。話し忘れていました。」

「いや、いいんだ。部屋がおかしいとは思ったんだ。
 使用人にアネモネの部屋だと言われたけど、朝、部屋を出る時はデイジーの部屋になっていた。
 付け替えたんだろうな。」


ガレント様は案内してくれた侍女と2人きりで部屋に入らないように、途中で案内を断って場所だけ聞くのはよくあることだそうだ。
その部屋の中には結局私がいたんだけど。


「何で今頃こんな話してるんでしょうね。」


笑えるわ。16年よ。いつでも話せたはずなのに、毎日が幸せすぎて忘れていたわ。


「本当だな。
 でも、ルイーズが私をすぐに受け入れてくれたのはなぜなんだ?
 わりと早くから私の愛に応えてくれていたよな。」

「最初の夜と次の日の初夜で思ったんです。
 ガレント様は性欲の発散ではなく、私のことが好きなんじゃないかって。
 毎日のように体を繋げていると、あなたの『愛してる』って言葉が嘘じゃないってわかって。
 子供を産むためだけの第2夫人じゃないと思ったら嬉しくて。
 セルフィ様からも、できればガレント様を好きになってほしいって言われていました。
 好きになってもいいんだって思ったら、愛に応えたくなるじゃないですか。」

「セルフィが。
 彼女はルイーズが誤解しないようにいろいろと先手を打ってくれていたんだな。」

「ええ。」 


5人の子供たちと公爵夫人としての仕事。
いろいろと大変な16年だったけど、まだ4人の巣立っていない子供たちがいる。
伯爵家の跡継ぎの予定が侍女として働くことになり、第2夫人になったかと思えば正妻にまでなってしまった。
思わぬ人生だったけど、幸せに過ごしてきた。

息子に爵位を譲るのはあと10年くらいかしら?

引退後は旅行をしたり料理をしたりして、私と2人きりの時間を楽しみたいとガレント様は言う。
子供たちに取られた時間が長かったから、と。
そうかな?夜はガレント様が独占していたけれど。


「ルイーズ、愛しているよ。」


そう言ってキスをするガレント様を私も愛している。これからも、ずっと。



<終わり>


 
 
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約者が好きなのです

maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。 でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。 冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。 彼の幼馴染だ。 そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。 私はどうすればいいのだろうか。 全34話(番外編含む) ※他サイトにも投稿しております ※1話〜4話までは文字数多めです 注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)

【完結】公爵子息は私のことをずっと好いていたようです

果実果音
恋愛
私はしがない伯爵令嬢だけれど、両親同士が仲が良いということもあって、公爵子息であるラディネリアン・コールズ様と婚約関係にある。 幸い、小さい頃から話があったので、意地悪な元婚約者がいるわけでもなく、普通に婚約関係を続けている。それに、ラディネリアン様の両親はどちらも私を可愛がってくださっているし、幸せな方であると思う。 ただ、どうも好かれているということは無さそうだ。 月に数回ある顔合わせの時でさえ、仏頂面だ。 パーティではなんの関係もない令嬢にだって笑顔を作るのに.....。 これでは、結婚した後は別居かしら。 お父様とお母様はとても仲が良くて、憧れていた。もちろん、ラディネリアン様の両親も。 だから、ちょっと、別居になるのは悲しいかな。なんて、私のわがままかしらね。

婚約者に裏切られた女騎士は皇帝の側妃になれと命じられた

ミカン♬
恋愛
小国クライン国に帝国から<妖精姫>と名高いマリエッタ王女を側妃として差し出すよう命令が来た。 マリエッタ王女の侍女兼護衛のミーティアは嘆く王女の監視を命ぜられるが、ある日王女は失踪してしまった。 義兄と婚約者に裏切られたと知ったミーティアに「マリエッタとして帝国に嫁ぐように」と国王に命じられた。母を人質にされて仕方なく受け入れたミーティアを帝国のベルクール第二皇子が迎えに来た。 二人の出会いが帝国の運命を変えていく。 ふわっとした世界観です。サクッと終わります。他サイトにも投稿。完結後にリカルドとベルクールの閑話を入れました、宜しくお願いします。 2024/01/19 閑話リカルド少し加筆しました。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください

迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。 アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。 断るに断れない状況での婚姻の申し込み。 仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。 優しい人。 貞節と名高い人。 一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。 細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。 私も愛しております。 そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。 「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」 そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。 優しかったアナタは幻ですか? どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。……これは一体どういうことですか!?

四季
恋愛
朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。

処理中です...