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しおりを挟むセルフィは第2夫人のことについても話してくれた。
第2夫人の話を実家の両親から聞いて、ガレントとローラを任せられる人に来てもらいたいと思った。
こんな病弱な嫁などもっと早く実家に追い返されてもおかしくなかったのに、ローラがいるために公爵家に置いてくれていた。
どんな令嬢なら2人を任せられるか、侍女たちと考えた。
伯爵令嬢であるルイーズが仕事先を探していると聞いて、自分の近くに置いて侍女たちにもお願いして観察していた。
ローラがルイーズを気に入り、ガレントも新しく侍女になったルイーズを見守る目が優しかった。
ルイーズがガレントに取り入らずローラに夢中になったから。
ガレントを見た時の令嬢の反応は大体が2つ。
1つは、愛人狙い。あるいはセルフィの病弱具合を知ると妻を狙う。
もう1つは、憧れの目線。観賞に近いのでこちらはあまり害はない。
仕事を疎かにしてガレントに言い寄る令嬢は、すぐに首になる。
ルイーズはガレントのことをセルフィの夫という目線でしか見なかった。
なので、ルイーズは第2夫人候補に選ばれていた。
実家にガレントとローラ、ルイーズの3人で向かうようにしたのはワザと。
実家にも協力してもらい、ガレントがローラの寝ている部屋に入るように仕向けた。
ローラの部屋から出てくるガレントを侍女が見て、責任を取らせる計画だった。
だけど、ガレントは部屋から出てこなかった。
酔っ払ってか、寝ぼけてか、ソファかどこかで眠ってしまったのだとの判断になったけど、都合が良かった。
長時間一緒に過ごせば、言い逃れはできない。
結局、朝までガレントが出てこなかったために、侍女が起こすことになったという。
まさか、ルイーズの純潔を奪っているような事態になっているとは想定していなかった。とセルフィは苦笑した。
はい?
「え?あの夜は、私が第2夫人になるように仕向けていたということですか?」
「そうなの。
ガレント様は、このままでは私が死ぬまで新たな妻を迎えないと思ったの。
だけど死んですぐに新しい妻を娶るわけにもいかないでしょ?
そうすると何年も先になってしまうわ。
私が死ぬ前に無理やり第2夫人を押しつけてしまおうと思ったのよ。」
「でも……多分、一緒の部屋で過ごしたくらいでは私は逃げましたよ?」
「でしょうね。でも、ガレント様は自分が悪くないのに私と結婚したような方なの。
口止めしても噂になる可能性が僅かでもあると思えば責任を取るわ。
公爵家に請い願われては、伯爵家は従うでしょう?」
そうね。結局、父も断り切れなかったし。
「あなたはまだ若いから子供を数人産めるかもしれない。
寝込んでばかりで妻としての義務を果たせない私を見下すような強かな令嬢ではない。
涙を流せば許されると思うような愚かな令嬢でもない。
伯爵令嬢で、私の再従姉妹。
両親もあなたがローラと接する態度を見て、認めていたの。」
「公爵夫妻はご存知ではなかったのですか?」
「お義母様には伝えたわ。計画も。笑っていたわ。上手くいくといいわねって。
強引に進めないとガレント様が承知しないということはお義母様もわかってらしたから。」
あの時の公爵、お義父様の驚きは本物だったのね。
「私が生きた証、ローラを産むことができた。
好きな人がずっと側にいてくれて、幸せな温もりをくれる。
優しく見守ってくれたガレント様にもあなたがいる。
ローラの成長が見られないのは残念だけど、私を忘れてもあなたがいる。
もう満足だわ。
でも、そうね。あと数か月。産まれてくるローラの弟妹が見たいわ。」
少し膨らんでいるルイーズのお腹を見ながら、セルフィは微笑んだ。
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