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しおりを挟むルイーズの妊娠は、公爵家に喜びと安堵をもたらした。
第2夫人の仕事としては、正妻に代わって夜会の同伴や社交の役割を担うためというのはもちろんだけど、やはり今回は子供を期待されていたからだ。
ルイーズとしても、ホッとした。
少し悪阻はあったけど、順調に安定期を過ごしていたある日、セルフィ様が昔話をすると言った。
将来、ガレント様は絶対にローラには言わないだろうから、ルイーズからローラに教えるために知っておいてほしい、ということだった。
ローラが何も聞かなければ、話さなくてもよいとも言われた。
セルフィ様の体調を見ながら、少しずつ話を聞いた。
それは、婚約から結婚、妊娠に至るまでの経緯だった。
ガレントはセルフィの兄の友人で、何度も家に遊びに来ていた。
セルフィは体調を崩しやすい子であまり外出したことがなかったために、ガレントが来てくれることが楽しみだった。
兄よりも優しいガレント。兄には嫌がられるけど、よく割り込んで話をしていた。
ある日、ガレントが婚約者を決めることになりそうだと兄と話しているのを聞いてしまった。
帰ろうとしているガレントを呼び止めながら追いかけて、セルフィは転んでしまった。
顎と腕に傷を負った。
ガレントがセルフィの両親に謝ったため、ガレントが悪いということにされた。
セルフィは自分が勝手に追いかけて転んだと言えなかった。
顔に傷がついた責任を、という話になりセルフィがガレントの婚約者になった。
セルフィは嬉しかった。優しいガレントと結婚できることが。
しかし、一方で体調は体の成長と共に悪化していった。
セルフィはガレントに隠し続けたけれど、兄が伝えていたのでバレていた。
だけど、ガレントは公爵夫妻には伝えていなかったので、そこまで悪いと知られていなかった。
学園にはほとんど通えなかったけれど屋敷で試験を受けて卒業した後、ガレントと結婚した。
ガレントは初夜に言った。
子供を産むのはやめておいた方がいいと聞いている。
閨事も負担になるだろうから、するつもりはない。
何度もセルフィはガレントに迫った。
だけど、ガレントは受け入れなかった。
ガレントがセルフィのことを妹みたいにしか思っていないことは知っていた。
だけど、結婚したからには子供を産みたかった。
結婚して2年が過ぎ、セルフィは妊娠しやすい日を選んでガレントに迫った。
どうしても子供が欲しい。産むときに死んでもいい。
抱いてくれないのであれば、他の誰かに迫る、と。
ガレントは仕方なしに抱いてくれた。
気遣いながら、だけど行為時間は短く。
その時に気づいてしまった。
セルフィはガレントを男として愛していたわけではないことに。
ただ、優しくしてくれた兄のような人を取られたくなかっただけだった。
ようやくそれに気づいて、ガレントに申し訳なく思って離婚を考えた。
しかし、運がいいのか、その一度でローラを授かった。
元々、長く生きられないと言われた命。
出産時に死んでもおかしくはなかった。
だけど、何とか耐えることができてここまで生きられた。
妊娠中から側にいてくれるようになった侍従兼護衛のリンクに恋をした。
ガレントもそれに気づいている。
セルフィの恋を嬉しそうに兄目線で見守ってくれている。
リンクには告げたことはないけれど、両想いだと勝手に信じている。
今の関係がとても幸せだから。
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