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しおりを挟む先に到着していたモール公爵が指示したのか、ルイーズには新しい部屋を準備するのでローラお嬢様を部屋に連れて行った後、そのまま部屋で待っていてほしいと伝えられた。
そっか。ローラお嬢様の侍女も辞めないといけないのよね。
うわぁ。それが一番つらいかも。
毎日どこかでお嬢様と接することができる時間を作ってもらえないかしら。
癒しの時間が欲しいわ。
ローラお嬢様の侍女は元々私の他にもいる。
なので、特に引き継ぎが必要なわけでもないし、私は遊び相手みたいなものだったから。
侍女長がやってきて、やはりローラお嬢様の侍女の仕事は辞めることになると伝えられた。
「毎日、どこかでお嬢様とお会いできる時間って作れませんか?朝食の時とか。」
「朝食はルイーズ様と共に召し上がる場にはお連れできません。」
そう言えばそうか。
ローラお嬢様は部屋で朝食を取る。半分侍女が食べさせているようなものだから。
一緒に食べている気分だったから間違えた。
「それに……ルイーズ様も朝決まった時間に朝食を召し上がれるとは限りません。
閨事があった翌朝は、いつも通りに起きることができるとは限りませんので。」
あー。恥ずかしい。いろんな意味で恥ずかしい。
生温い目でそう言ってくる昨日までの上司に『様』付けされているのも慣れない。
身分の上下はどうあれ、侍女は名前に『さん』付けだったから。
「午前のお茶の時間は、セルフィ様のお加減が宜しければお嬢様と過ごされています。
ですので、午後のお茶の時間にルイーズ様はお嬢様と過ごされてはどうでしょうか。」
「そうですね。問題なければそれでお願いします。お嬢様と会えなくなるのは寂しくて。」
「わかりますよ。
ですがルイーズ様、お嬢様とお呼びするのはよくありません。
第2の母になったのですから。
セルフィ様はおそらく、あなたに母親役もお願いします。
ですので、後ほどセルフィ様にお嬢様への呼び方を確認なさって下さい。
おそらく、『ローラ』と呼び捨てか『ローラちゃん』になるでしょう。」
祖母である公爵夫人は『ローラちゃん』呼びしている。まだ幼いから『ちゃん』付けは可愛いものね。
「それと、私共にも敬語を使われないようにお願いします。
ご実家の使用人に接していたのと同じような感じで。
いきなりですので慣れないとは思いますが、ここは公爵家ですので。」
「わかりました。わかっています。だけど、切り替えが難しいです~。」
侍女長はまるで母親のようにルイーズに優しく言った。
「昨日の今日で、下っ端の侍女から第2夫人ですからね。戸惑いもあるでしょう。
ですが、あなたは立派に務めを果たせる夫人になれると信じています。
私たちは味方です。いろいろと協力しますからね、頑張りましょう。」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
侍女長の温かい言葉に抱きつきたくなったけど、ダメなのよね……
実家の伯爵家でもちゃんとマナー教育は受けていた。
だけど、堅苦しくなく使用人との距離も近いような伯爵家だったの。
さすがにここの公爵家で、そこまで崩した接し方はできない。
それに、私にも専属侍女がついたりするんだろうな。仕方ないか。
やがてセルフィ様がお呼びだと言われ、向かうことになった。
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