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しおりを挟むルイーズがボーっと考え事をしている間に、話はキチンと纏まっていた。
ルイーズはモール公爵令息であるガレントの第2夫人となり、正妻セルフィに代わって公の場に同行する。
肩書は第2夫人ではあるが、公の場に同行した時は正妻と同様の扱いになるそうだ。
他貴族の愛人同様の扱いを受けることはない。
愛人だと侮辱された場合、訴えることができるほど強い立場になる。
そして、ルイーズが子供を出産した場合も子供は庶子扱いにはならない。
セルフィの子ローラ同様、嫡出子として扱われる。
これは第2夫人として届け出された場合のみとなる。
なので、愛人が産んだ子供は普通に庶子扱いとなるため、ルイーズが妊娠している可能性もあるために早急に届け出することになった。
いつの間にか書類も準備され、サインを済ませばモール家の侍従が届け出に行った。
それを待つ間、昼食をとることになった。
ようやくローラお嬢様とも会うことができた。
従兄弟と楽しそうに遊んでいたところに顔を出すと、嬉しそうに抱きついてきた。
このハグがお別れにならなくて済んだことは嬉しいことだけど、成長して第2夫人の意味がわかった時に嫌わないでね。と心の中で祈っておいた。
やがて、届け出が受理されたと侍従が戻って来たので私は一応結婚したことになる。
実家に帰る回数も今までのようにはいかないだろうなぁと思いながら、お父様に別れを告げた。
モール公爵は乗ってきた馬車がある。
なので、私はガレント様とローラお嬢様と馬車に乗ることになった。
長時間乗るわけではない。
だけど、お嬢様はあっという間に寝てしまったため、ガレント様と2人きりのようなものだった。
あれから直接2人で話をしていないのだ。
「ルイーズ、改めて謝罪させてほしい。すまなかった。
だが、こうなってしまった以上、私は君を大切にしたいし仲良くしていきたいと思う。
文句があってももう後戻りはできないから、君には私の子供を産んでほしい。
男であれ女であれ構わない。いいかな?」
「……女の子であれば、ローラ様同様王家に欲しいだなんて言われませんよね?」
「それは……さすがにないと思う。
ただ、他の公爵家・侯爵家も欲しがるだろう。あるいはうちに婿入りか。
セルフィの兄上も女の子が欲しいようだが3人目も男だったら、と作るのを悩んでいるらしい。」
「産まれてみないとわかりませんからね。
男の子ばかりだと継がせる爵位も困りますし。
伯爵家に婿入りを狙う貴族が増えそうですね。」
「それが……聞いた話によると、公爵・侯爵家に女の子が少ないことで一人っ子が少ないらしい。
上位貴族と縁を結べる可能性が高いから、子作りする夫婦が増えたそうだ。」
「女の子が産まれるといいですね。
王家の王子様たちは、5歳、3歳、1歳でしたっけ?
ローラ様は2歳だから、上の2人の王子様の婚約者になる可能性が高いのですね。
なんだか責任重大ですね。私が一人は必ず産まないとローラ様は嫁げないのですから。」
「うん。だから……今日から私と閨を共にしてほしい。
あ、いや、体が辛いようなら無理にとは言わないが。」
「あー……思ったよりも平気そうです。……優しくしていただいたので。」
「……覚えてるのか?」
「まあ?なんとなく?ですが。ガレント様は?」
「ああ、私もだ。ルイーズが可愛いと思ったことは確かだ。」
そう言ったガレント様が赤面して顔を隠すので、ルイーズもつられて赤面してしまった。
実はなんとなく?ではなく、わりと覚えている。というか、いろいろと思い出したから。
馬車が公爵邸に着き、ガレント様が言った。
「セルフィの体調が良ければ、今から私が先に話しておく。
ルイーズもその後に呼ばれるだろう。
彼女はおそらく君が第2夫人になったことを喜んでくれるはずだ。心配ない。」
「わかりました。お願いします。」
私はこの公爵邸の住人の一人になり、もう侍女ではなくなったのだ。
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