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5.
しおりを挟む眉をひそめていたお父様が決意したように言った。
「ルイーズは、令嬢らしく育てていないのです。
高位貴族の夫人と渡り合えるほどの話術がない。
遠回しの言葉を嫌い、ズバッと物言いするような娘です。
昔に比べれば少しは令嬢らしい擬態はできていますが、お転婆ですし。
とてもセルフィ夫人に代わるような社交などできません。」
「それは構わない。ガレントに爵位を譲るのもまだ先だ。
妻から学べばいいし、心が弱い令嬢よりもよほど好ましい。
夜会などで第2夫人だと陰口もあるだろう。それに負けない令嬢がいいんだ。」
なるほど。揶揄されたり罵倒されたりするかもしれないのね。
言わば、愛人だものね。それも、堂々と連れ歩ける愛人。
男性からはガレント様は羨ましく思われ、女性からは私が蔑まれる。
まぁ、その立場になってみないことには本当かわからないけれど。
それにしてもガレント様は第2夫人の話になってから口を挟まないわね。……挟めないのか。
セルフィ様の父親であるイーグル侯爵が私を勧めて、モール公爵は受け入れた。
この2人が認めたのであれば、お父様はこれ以上反対はできない。
チラッと見ると、セルフィ様のお母様やお兄様も反対していない様子。
残るは私とガレント様だけなんだけど、私の意見は……必要なさそうよね。
ここで私がガレント様を拒絶すると、彼は非常にショックを受けるに違いない。
もう第2夫人なんていらない!って言いそう。
彼は私より繊細な人だと思うから。
それに、ガレント様はやらかしてしまった手前、率先して意見を言えない。
彼は私を受け入れるという答えしかできないから。
みんな、それがわかっているから親同士で解決している。
まぁ、お父様以外は茶番みたいなものね。
モール公爵側は、体の弱い妻を娶ることになった息子が、いろいろと我慢を強いられているから。
イーグル侯爵側は、体の弱い娘を嫁がせたことで務めが果たせず罪悪感があるから。
王族云々も事実だろうけど、ガレント様が私を抱いたことは都合が良すぎたのだ。
結婚後、妻であるセルフィ様以外の女性と関係を持ったことがあるのかはわからない。
あったとしても一晩の関係で、続けることをするような人ではないと思う。
だけど、未婚で純潔の私に手をつけてしまったのは事実。
改めて別の女性を第2夫人にして子作りするように言われるよりかは、責任を取って私を選ぶわよね。
第2夫人ね。
セルフィ様が認めて下さるのであれば、問題ないわ。
それと、ローラお嬢様に嫌われないのであれば、ね。
モール公爵家は働きやすい貴族家。
陰で主たちの愚痴を言ったり、非難したりするような使用人はいない。
さすが、高給であるだけに使用人の質も高かった。
私が第2夫人になったとしても、初めは驚かれるだろうけどセルフィ様より気安く接してくれそうな気がする。
心の中ではどう思っていようが、口や態度に出なければ問題ない。
侍女の中には、ガレント様を狙っていた令嬢もいるだろう。
第2夫人・愛人・専属侍女……正妻。
ガレント様の心あるいは体に付け込めば、可能性がないことはない。
だけど、屋敷の侍女・メイドに対してガレント様は一律同じ対応だったように見えた。
あるいは、少しでもそういう素振りを見せると、侍女失格として追い出されてるのかも。
侍女の中では新しく入った私が一番下っ端だからよく知らないけれど、安全・安心侍女だけが残っているというなら、面白いわね。
そう言えば、私より少しだけ早く入ったはずの侍女がいなくなってるのは……まさかねぇ。
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