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しおりを挟むシードたちの調査員の仕事。それは基本的には平民に関わることである。
ある時、媚薬と麻薬が出回っていると情報が寄せられた。
軽い程度の物で、平民にも買いやすい値段設定らしい。
調査の結果、辿り着いたのがネイラたちがいた町だった。
あの町は王都の調査担当範囲だったのだ。
捕らえた者から聞き出した情報で、薬を渡したと思われる人物が5人あげられた。
ネイラとルルもその中にいた。
彼女たちがシードら調査員に薬を使えばすぐに捕まえられた。
そうすれば、誰からの指示だったかもわかるはずだった。
しかし、彼女たちを担当した男はそれぞれが………ミスをした。
声をかけるのはいいとして、誰もが媚薬を使って誘惑されるほどの期間がなかった。
つまり、誘われても断って焦らす予定が簡単に誘惑されてしまったのだ。
媚薬なんて使う必要もなく、あっさりと。
既に体の関係を持っているのに、媚薬を使う必要がどこにある?
いつまで待っても使うはずはない。
ただ単に、抱きに通う男たちの出来上がりだった。
そんな男たちに麻薬ももちろん必要ないし、手元に置いておけば捕まるだけなので売り捌き終えている。
彼女たちが諜報員を誘惑している間に、その町で薬をバラ撒いた謎の男はとっくに姿を消していた。
まだ町にいるように思わせるため、調査対象になっていない者が続けて売っていたのだ。
日中、彼女たちを監視している者はそのことに気づかなかった。
そんなことは知らず、さりげなく家探ししたり媚薬を試してみたいことを仄めかしたり。
全く意味のないことをしていた5人。
しかも、そのうち2人は全く関係のない女性だった。
ネイラは、小遣い稼ぎで薬を売る手伝いをした者だ。
自分で使うのはよくないとわかっていたので使っていない。
シードが薬について調べていることはすぐにピンときた。
在庫はすぐに売り捌き、手元には残さなかった。
だから、いくら探されても見つかるはずもない。
体の相性が良いので、妊娠して結婚してもらおうと計画した。
妊娠すれば、あの手の男は絆されるはず。
予定外だったのは結婚したばかりの奥さんがいたこと。
それを聞いて、後をつけた。
早く奪い取らなければ。そう思った。
愚かで可愛いシードは、避妊薬を信じて中に出した。
間違いなくシードの子供。
薬を売り捌いた過去はあっても、捕まってはいないし証拠もない。
頼まれたからその人の代わりに売った。熱冷ましの薬だと聞いていた。そう言った。
頼んだ男の人相も、覚えていない。それ以上答えようがない。
ネイラ以外の2人も同じ答えだった。
現行犯でもなく証拠物もない3人は無罪放免だった。
ネイラはシードに妊娠を理由に結婚を迫った。
だけど、シードは断り続けた。養育費は払うからと。
やがて産まれた自分そっくりな子供を見て………絆されて結婚した。
ロイドはレッティに謝り続けた。
だけどレッティは受け入れなかった。
やがて、前からレッティが好きだったという兄の友人と再婚した。
王都に遊びに来たルルと偶然出会ったロイドは………再び関係を持ってしまった。
ルルが王都に来たのは偶然ではない。ロイドの離婚を知ったからだった。
そのままロイドの家に居座って、やがて妊娠して結婚した。
お隣同士になったネイラとルル。
同じ町で知り合いでもあった2人は、自分たちの成功を祝った。
エヴリンはマークをご近所に預かってもらおうとしたが、短時間ならともかく長時間預かってくれる人はいるわけがない。
実家も病気の母に断られ、託児所も定員オーバー。
夜なら空いてるといわれ、仕方なしに調査員を辞めて昼夜逆転の仕事についた。
酔っ払いに酒や料理を出したり、それだけのつもりが体が寂しくて体を売ることが多くなった。
それを見かねた元調査員の知り合いが、どうせ体を売るなら娼婦になって情報を売れと貴族向けの娼館に臨時調査員として配属されるように手配してくれた。
10年間、娼婦と臨時調査員として働き、十分お金が貯まったところで遠くの町へと移った。
誰も知らない町で昼間の仕事につき、息子と普通の暮らしを送った。
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