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しおりを挟むメリーアンが新たな婚約者ユーシスと長期休暇を楽しんでいた頃、婚約を解消されたタルボットは学園を退学して実家に連れ戻されていた。
このままタルボットを学園に通わせていてもおちぶれた子爵家に嫁いでくれるような新たな婚約者は望めるはずもなく、また、タルボットが跡継ぎのままではクルミック伯爵家に申し訳がたたない。
歳の離れた弟を跡継ぎにすることで、タルボットのやらかしを過去のことだといつか水に流してくれることを期待したのだ。
その頃まで子爵家が残っていれば、のことだが。
アデラも同様に学園を退学させられ、親からは選択肢が与えられた。
一つ目は修道院、二つ目は隠居貴族の後妻、三つ目は女学院で学び独身のまま働くこと。
アデラは三つ目の女学院を選んだ。
淑女科で学び、家庭教師になれば雇い主の愛人に、あるいは自分が妻にと望まれるに違いないと思ったからだ。
数年後、貴族令息への虐待と性的興奮を促す薬物を雇い主に飲ませようとした罪でアデラは犯罪者として捕まってしまうのだが、この時はまだ何も知らない。
タルボットとアデラがいなくなった学園後期は穏やかな時間が流れていた。
2人と一緒のグループにいた男女たちも、2人の浮気には気づいていた。
そもそも、アデラはユーシスに学園での接触を拒まれてからは少し浮いた存在だったという。
庇護欲をそそる顔を自覚しているアデラが声をかけるのは男性ばかりで、その婚約者たちは気が気ではなかった。
一緒にいたのはアデラに引っ掛かりかけた男たちとその婚約者あるいは見張りの女性たちだったのだ。
つまり、アデラに傾倒しても誰からも注意を受けなかったタルボットはアデラへの生贄のような存在だった。
そうすることで他の男がアデラに構われないようにしていたようだ。
「今回のことで、期間限定だろうが秘密だろうが、婚約者がいるのに浮気をすることは身の破滅に繋がるといい教訓になったらしいよ。怪しげな行動をしていた者たちがいなくなったらしい。」
他にも浮気者が大勢いたということか。バレないと思っていてもバレていることもある。
タルボットとアデラが2人きりで会っていたあの裏庭には、他に何人も来ていたのをメリーアンも見ていたのだから。
そして、学園の後期が終わった。
つまり、ユーシスと兄は卒業してしまったのだ。
入学してから昼休憩は一緒に過ごしてきたので少し寂しいが、メリーアンはあと2年学園に通うのだ。
ユーシスの婚約者として、今までとは違う付き合いも必要になる。
ピオニーという心強い友人もいる。ピオニーの婚約者でユーシスの弟でもあるザカリスもいる。
メリーアンは新たな気持ちで新学期を迎えた。
1年のときはメリーアンはピオニーと同じクラスでザカリスとは別だった。
2年になるとザカリスと同じクラスでピオニーは別になった。
お互い、他にも友人がクラスにいるけれど離れてしまったことは寂しかった。
メリーアンとザカリスは、隣のクラスに入ったピオニーに起こっていることを知らなかった。
何が起こっていたのかを知ったのは昼休憩が終わる頃だった。
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