上 下
15 / 18

15.

しおりを挟む
 
 
メリーアンが新たな婚約者ユーシスと長期休暇を楽しんでいた頃、婚約を解消されたタルボットは学園を退学して実家に連れ戻されていた。
このままタルボットを学園に通わせていてもおちぶれた子爵家に嫁いでくれるような新たな婚約者は望めるはずもなく、また、タルボットが跡継ぎのままではクルミック伯爵家に申し訳がたたない。
歳の離れた弟を跡継ぎにすることで、タルボットのやらかしを過去のことだといつか水に流してくれることを期待したのだ。
その頃まで子爵家が残っていれば、のことだが。
 

アデラも同様に学園を退学させられ、親からは選択肢が与えられた。
一つ目は修道院、二つ目は隠居貴族の後妻、三つ目は女学院で学び独身のまま働くこと。
アデラは三つ目の女学院を選んだ。
淑女科で学び、家庭教師になれば雇い主の愛人に、あるいは自分が妻にと望まれるに違いないと思ったからだ。

数年後、貴族令息への虐待と性的興奮を促す薬物を雇い主に飲ませようとした罪でアデラは犯罪者として捕まってしまうのだが、この時はまだ何も知らない。
 




タルボットとアデラがいなくなった学園後期は穏やかな時間が流れていた。

2人と一緒のグループにいた男女たちも、2人の浮気には気づいていた。
そもそも、アデラはユーシスに学園での接触を拒まれてからは少し浮いた存在だったという。
庇護欲をそそる顔を自覚しているアデラが声をかけるのは男性ばかりで、その婚約者たちは気が気ではなかった。
一緒にいたのはアデラに引っ掛かりかけた男たちとその婚約者あるいは見張りの女性たちだったのだ。

つまり、アデラに傾倒しても誰からも注意を受けなかったタルボットはアデラへの生贄のような存在だった。

そうすることで他の男がアデラに構われないようにしていたようだ。


「今回のことで、期間限定だろうが秘密だろうが、婚約者がいるのに浮気をすることは身の破滅に繋がるといい教訓になったらしいよ。怪しげな行動をしていた者たちがいなくなったらしい。」


他にも浮気者が大勢いたということか。バレないと思っていてもバレていることもある。
タルボットとアデラが2人きりで会っていたあの裏庭には、他に何人も来ていたのをメリーアンも見ていたのだから。


そして、学園の後期が終わった。
つまり、ユーシスと兄は卒業してしまったのだ。

入学してから昼休憩は一緒に過ごしてきたので少し寂しいが、メリーアンはあと2年学園に通うのだ。
ユーシスの婚約者として、今までとは違う付き合いも必要になる。

ピオニーという心強い友人もいる。ピオニーの婚約者でユーシスの弟でもあるザカリスもいる。

メリーアンは新たな気持ちで新学期を迎えた。

1年のときはメリーアンはピオニーと同じクラスでザカリスとは別だった。
2年になるとザカリスと同じクラスでピオニーは別になった。

お互い、他にも友人がクラスにいるけれど離れてしまったことは寂しかった。 


メリーアンとザカリスは、隣のクラスに入ったピオニーに起こっていることを知らなかった。
何が起こっていたのかを知ったのは昼休憩が終わる頃だった。



 


 


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そういうとこだぞ

あとさん♪
恋愛
「そういえば、なぜオフィーリアが出迎えない? オフィーリアはどうした?」  ウィリアムが宮廷で宰相たちと激論を交わし、心身ともに疲れ果ててシャーウッド公爵家に帰ったとき。  いつもなら出迎えるはずの妻がいない。 「公爵閣下。奥さまはご不在です。ここ一週間ほど」 「――は?」  ウィリアムは元老院議員だ。彼が王宮で忙しく働いている間、公爵家を守るのは公爵夫人たるオフィーリアの役目である。主人のウィリアムに断りもなく出かけるとはいかがなものか。それも、息子を連れてなど……。 これは、どこにでもいる普通の貴族夫婦のお話。 彼らの選んだ未来。 ※設定はゆるんゆるん。 ※作者独自のなんちゃってご都合主義異世界だとご了承ください。 ※この話は小説家になろうにも掲載しています。

形だけの妻ですので

hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。 相手は伯爵令嬢のアリアナ。 栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。 形だけの妻である私は黙認を強制されるが……

なにひとつ、まちがっていない。

いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。 それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。 ――なにもかもを間違えた。 そう後悔する自分の将来の姿が。 Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの? A 作者もそこまで考えていません。  どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。

妻の死で思い知らされました。

あとさん♪
恋愛
外交先で妻の突然の訃報を聞いたジュリアン・カレイジャス公爵。 急ぎ帰国した彼が目にしたのは、淡々と葬儀の支度をし弔問客たちの対応をする子どもらの姿だった。 「おまえたちは母親の死を悲しいとは思わないのか⁈」 ジュリアンは知らなかった。 愛妻クリスティアナと子どもたちがどのように生活していたのか。 多忙のジュリアンは気がついていなかったし、見ようともしなかったのだ……。 そしてクリスティアナの本心は——。 ※全十二話。 ※作者独自のなんちゃってご都合主義異世界だとご了承ください ※時代考証とか野暮は言わないお約束 ※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第三弾。 第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』 第二弾『そういうとこだぞ』 それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。 ※この話は小説家になろうにも投稿しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

愛してしまって、ごめんなさい

oro
恋愛
「貴様とは白い結婚を貫く。必要が無い限り、私の前に姿を現すな。」 初夜に言われたその言葉を、私は忠実に守っていました。 けれど私は赦されない人間です。 最期に貴方の視界に写ってしまうなんて。 ※全9話。 毎朝7時に更新致します。

初恋が綺麗に終わらない

わらびもち
恋愛
婚約者のエーミールにいつも放置され、蔑ろにされるベロニカ。 そんな彼の態度にウンザリし、婚約を破棄しようと行動をおこす。 今後、一度でもエーミールがベロニカ以外の女を優先することがあれば即座に婚約は破棄。 そういった契約を両家で交わすも、馬鹿なエーミールはよりにもよって夜会でやらかす。 もう呆れるしかないベロニカ。そしてそんな彼女に手を差し伸べた意外な人物。 ベロニカはこの人物に、人生で初の恋に落ちる…………。

処理中です...