12 / 18
12.
しおりを挟むタルボットがどんな言い訳をしようと、こちらは迎え撃つことができる。
しかし、私たちの言い合いを聞いていた父が口を挟んだ。
「ほお?小遣いにも困るほど子爵家は困窮していると?それならますますメリーアンを嫁がせることなどできないじゃないか。苦労することが目に見えているからな。」
「いえ、そんな困るほど少ない額ではありません!タルボット、誤解するようなことを言うんじゃない!」
レッテン子爵がいくら送金しているのかは知らないが、タルボットは毎週のように街で友人たちと過ごしているし、毎回アデラの分まで払っているとなると足りなくなるのは当然だろう。
「メリーアン、彼女とは浮気していないがそんなに彼女のことが気になるのであれば悲しいことだが友人をやめることにするよ。君を嫉妬させてまで友人でいるわけにはいかないからね。これで許してくれるか?」
何を言っているのかしら?嫉妬?するわけないじゃない。
「別に友人をやめる必要はないわよ?私たちは婚約解消するのだからご自由に。
ちなみに、あの方も近々婚約者から同じことを言い渡されるはずよ。理由はあなたとの浮気、で。
私の友人の婚約者の兄が、あなたの浮気相手の婚約者なの。あぁ、兄の友人でもあるけど。
兄に呼ばれて向かった場所で、しっかり見たわ。2人が何度もキスをしているところを。
見たのは私たちだけじゃないのよ?」
兄と私以外に、タルボットの浮気相手の婚約者であるユーシス、兄の婚約者であるマチルダ、友人のピオニー、ピオニーの婚約者のザカリス、教師2人と証人を指折り数えているとタルボットが叫んだ。
「嘘だっ!あの場所は、どこからも見えないと先輩に聞いたんだ!周りに誰もいたこともない!」
あぁ、あの悪いことばかり伝統的に伝わるという寮にいる先輩からね。
というか、浮気を白状しているような言葉だと気づいてないの?
「見えるわよ?外からはすりガラスだと思われている窓、あれは中からだとはっきり見えるの。」
タルボットは絶望したような顔になった。
あの場所が浮気にいい場所だと寮生に伝わっているのを逆手に取って、今回みたいに浮気の証人を得るために窓ガラスを変えた先輩がいたのだろう。
その後もひたすら、メリーアンと結婚するつもりだった、学生の間だけの恋のつもりだった、もう裏切らない、とゴネていたが、こちらは伯爵家だ。悪くもないこちらが従う理由もない。
家に利益があるわけでもなく、しかも浮気をする男に誰が嫁ぎたいと思うだろうか。
それでもいいと思えるほど、タルボットのことを男として好きではなかったとこの1年で納得している。
婚約解消届にサインをし、融通していた領地内のことや慰謝料については両親が話し合うことになった。
父には慰謝料は最低限でいいと伝えている。全てが悪い思い出ではないのだから。
「タルボット、あの方も婚約解消されるから恋人になれるわね?」
アデラと恋人になったとしても、いつまで続くだろうか。
彼女が田舎に住むとは思えないが、今回のことで結婚相手がいなくなればタルボットに可能性がないこともない。
しかし、すでに落ちぶれ始めているというレッテン子爵領が耐えられるのかどうかは、アデラの伯爵家の援助にかかっているのではないか。
ビンガム侯爵家に慰謝料を払うことになれば、レッテン子爵家に援助どころではないだろうけど。
たとえ、期間限定と言っても婚約者がいる相手となれば痛い目を見る可能性を考えておくべきなのだけど、それができないからこんなことになるのよね。
1,580
お気に入りに追加
1,117
あなたにおすすめの小説

嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

なにひとつ、まちがっていない。
いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。
それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。
――なにもかもを間違えた。
そう後悔する自分の将来の姿が。
Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの?
A 作者もそこまで考えていません。
どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。


大恋愛の後始末
mios
恋愛
シェイラの婚約者マートンの姉、ジュリエットは、恋多き女として有名だった。そして、恥知らずだった。悲願の末に射止めた大公子息ライアンとの婚姻式の当日に庭師と駆け落ちするぐらいには。
彼女は恋愛至上主義で、自由をこよなく愛していた。由緒正しき大公家にはそぐわないことは百も承知だったのに、周りはそのことを理解できていなかった。
マートンとシェイラの婚約は解消となった。大公家に莫大な慰謝料を支払わなければならず、爵位を返上しても支払えるかという程だったからだ。

フランチェスカ王女の婿取り
わらびもち
恋愛
王女フランチェスカは近い将来、臣籍降下し女公爵となることが決まっている。
その婿として選ばれたのがヨーク公爵家子息のセレスタン。だがこの男、よりにもよってフランチェスカの侍女と不貞を働き、結婚後もその関係を続けようとする屑だった。
あることがきっかけでセレスタンの悍ましい計画を知ったフランチェスカは、不出来な婚約者と自分を裏切った侍女に鉄槌を下すべく動き出す……。

見えるものしか見ないから
mios
恋愛
公爵家で行われた茶会で、一人のご令嬢が倒れた。彼女は、主催者の公爵家の一人娘から婚約者を奪った令嬢として有名だった。一つわかっていることは、彼女の死因。
第二王子ミカエルは、彼女の無念を晴そうとするが……

結婚式をボイコットした王女
椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。
しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。
※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※
1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。
1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)

そういうとこだぞ
あとさん♪
恋愛
「そういえば、なぜオフィーリアが出迎えない? オフィーリアはどうした?」
ウィリアムが宮廷で宰相たちと激論を交わし、心身ともに疲れ果ててシャーウッド公爵家に帰ったとき。
いつもなら出迎えるはずの妻がいない。
「公爵閣下。奥さまはご不在です。ここ一週間ほど」
「――は?」
ウィリアムは元老院議員だ。彼が王宮で忙しく働いている間、公爵家を守るのは公爵夫人たるオフィーリアの役目である。主人のウィリアムに断りもなく出かけるとはいかがなものか。それも、息子を連れてなど……。
これは、どこにでもいる普通の貴族夫婦のお話。
彼らの選んだ未来。
※設定はゆるんゆるん。
※作者独自のなんちゃってご都合主義異世界だとご了承ください。
※この話は小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる