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しおりを挟むメリーアンは意外と箱入りなのかもしれない。
タルボットと婚約していなければ、伯爵令嬢という身分から同格の伯爵家はもちろん、侯爵家あるいはその上の公爵家とも懇意になるためにあちこちに顔を出していたはずだった。
だが、子爵家に嫁ぐ予定だったので、両親もメリーアンに社交性を強いることはなかったのだ。
ユーシスはメリーアンの知り合いが令嬢ばかりであると知り妙に頷いていたが、兄は少し考えた後にメリーアンに言った。
「メリーアン、入学してもなるべく男の友人は作らないでくれ。タルボットと婚約解消しても次の婚約者を探しているということは言わないでくれよ。」
「どうして?」
「子爵家だけでなく男爵家まで名乗りを上げてくるかもしれないから。」
落ちぶれ始めているタルボットのレッテン子爵家とは違いクルミック伯爵家は上向き傾向にある。
そんな伯爵家と縁を結びたい下位貴族は大勢いるのだ。
「お前は一度婚約解消しても自分の価値が下がったと思わなくていい。相手は選んでやるから。」
そう言えば、兄は前にもそう言っていた。すでに何人か思い当たる人がいるのかもしれない。
「メリーアン嬢は、次の婚約者に何か望むことはある?」
ユーシスに聞かれたが、特に思いつかなかった。
「じゃあ、例えば次に婚約した相手と結婚したけれど、相手が浮気をしたらどうする?」
浮気……浮気かぁ。この場合は体の関係もアリってことよね。
「お互いに前向きで結婚したのに浮気された場合、一度だけのことなら知りたくありません。」
「一度だけなら知りたくない。なるほど。どうして?」
「妻や子供を裏切ってまで相手の方に惹かれたことになりますが、一度で終わるのであればそれで満足したか、過ちとして後悔したということです。家族が大切だと思い直してくれて自分を戒めるのであれば、知らないままの方が私は幸せです。」
一度の浮気を懺悔されても、こっちが困る。許すしかないだろうけど、しこりが残りそう。
「なるほど。じゃあ、惹かれた相手を愛人にしていたけれど君と離婚して愛人と再婚したいと言われたら?」
「子供の年齢にもよるかもしれませんが、母親として定期的に会わせてもらいたいですね。
そしてできればその愛人の方と友人になりたいです。子供の義母になるのですから。」
そう言うとユーシスにも兄にも驚かれた。
確かにその時になってみないと本当に友人になりたいかどうかはわからないけれど、夫が自分を捨ててまで選んだ女性の何が良かったのか、自分に何が足りなかったのかを知りたい。
そして子供に悪影響にならないように配慮することが大事だと思うから。
もちろん、子供がいなければ友人になりたいとは思わないだろうけど。
そう言うと、兄が『お前が前向きであまり怒らない子だと思っていたがここまでとは』と自分のこめかみをグリグリしていた。頭痛でもするのだろうか。
でも、怒ったところでどうしようもないことって多いと思うのよね。
ユーシスが改めて別の質問をしてきた。
「じゃあ、君との結婚に前向きじゃない男と結婚した場合は?」
「あぁ、小説でよくある『お前を愛することはない』とかいうやつですね?その場合はどちらの家に利がある結婚かによりますね。暴行や虐待を受けない限り実家に利がある結婚なら続けると思います。それこそ、愛人大歓迎かもしれません。」
メリーアンの言葉に、兄はとうとう頭を抱えてしまった。
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