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両親の話によると、レッテン子爵家は以前よりも落ちぶれてきているらしい。

そんなところにメリーアンを嫁がせてもいいものか、と悩んでいたところに、兄がもたらしたタルボットの浮気疑惑の話だ。
渡りに船と言わんばかりに、両親はタルボット有責での婚約解消ができることを期待するあまり、メリーアンの気持ちを聞くことを忘れていたと謝罪してきた。 


「すまなかったな。タルボットの浮気がどうあれ我々の中ではお前の婚約は解消するつもりでいたんだが、絶対に嫌だと言われたらどうするかと悩んだんだ。アイツと仲が良かったからな。 
お前は話せばわかってくれる子だと思っているうちに、どうしたいか聞き忘れた。今更だが、婚約は解消でいいか?」


申し訳なさそうにする父に笑いそうになった。
絶対に嫌だと言うことなく親の決定に従うとわかっているはずなのに。


「解消でいいですよ。自分の浮気を見られたくないからと私を女学院に行かそうとする男に気持ちなんてもう残っていませんから。期間限定でも浮気は浮気です。」

「それならよかった。だが、オービスが言うにはうちが先に婚約解消をしてしまうと友人が困るらしいんだ。だから、婚約解消は少し先になるがいいか?」

「ええ。どうせなら、決定的な浮気を理由に婚約解消した方がいいですし。」 

 
兄の友人の婚約者がタルボットの浮気相手なのだが、まだ決定的な証拠や証言がない。
しかも、相手有責で婚約解消できる状況になったとしても、今はまだ、時期が悪いのだという。
 

「時期が悪いって、いつならいいの?」

「メリーアンは、第二王女殿下のことを聞いたことある?」


時期のことを聞いたのに、兄は全然違う問いをしてきた。

第二王女殿下。メリーアンより一つ下の王女。


「ブランカ第二王女殿下、13歳で、少し……我が儘?」


言葉を選んでも、いい表現がない。癇癪持ちだの傲慢だのと耳にしたことがあるだけだから。


「うん。控えめな表現だ。まぁ、その我が儘が原因で婚約者がまだ見つかっていないんだ。」


つまりは…… 

 
「お兄さまのご友人が婚約解消をしてしまうと、その方が王女殿下の婚約者になってしまう?」

「そう。メリーアンはよくわかってるね。友人は侯爵家の跡継ぎだ。王女殿下の降嫁先になれる。
だから、王女殿下の婚約者が決まるまでは今の婚約を解消したくないということなんだ。」 


今の婚約者も嫌だけど、王女殿下はもっと嫌ってことなのね。


「うちがタルボットの浮気を理由に婚約を解消することになれば、相手の令嬢も同じように婚約解消されるのが当然のことになる。だから、時期を合わせてほしいというのが友人の頼みでね。」
 

侯爵家からのお願いを無下にするわけにはいかない。と思うのは兄よりも両親の方が強いだろう。

何らかのお礼、というか、見返りがあるはず。それが貴族だから。
 

 
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