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しおりを挟む部屋に戻ったラフィティは恥ずかしさで死にそうな思いだった。
口が臭い?体形が好みじゃない?オナラが臭う?
確かに、体形はちょっと、何とかしないといけないとは思っていたけど、私ってそんなに臭うの?
侍女に聞いてみた。
「ねぇ、私って香水以外に何か臭うかしら?」
「……ここからですと香水の匂いだけですが。」
「そうよね?……え?近づくと違ったりするの?」
侍女は口を開けては閉じ、やがて泣きそうな顔になった。
「怒らないから正直に言って?」
「……恐れながら、妃殿下は嗅覚に異常があるのではないかと思われます。」
「嗅覚……?って何だっけ。」
「においを感じ取る感覚のことです。いい匂い、嫌な臭いを感じにくくなっているのでは、と。」
カインロットが言っていた口臭やオナラの臭いを自分が平気だったのはにおいがわからないせい?
「妃殿下は、私たち侍女が妃殿下におつけした香水が匂わないとおっしゃって更に自分でつけられますが、つけすぎだと思っていました。今も部屋中に充満しています。」
ラフィティは部屋のにおいを嗅いでみたが、よくわからなかった。
そして、口を開けてハーっと息を吐き出してみると、侍女は顔をしかめて後ずさった。
「……臭い?」
「……はい。」
「オナラをした時の臭いも?」
「……はい。しばらくの間、臭います。」
ラフィティは自分の部屋では気にすることなくオナラをしている。ゲップも。
いつも近くに誰かがいるが、侍女たちは気にする相手ではないから。
さすがに場所は選んでおり、先ほどの執務室でのことは腹を立てたことで力みすぎた誤射だった。
閨事でナカを刺激されるとオナラが出るのはそういうものなのだと思っていたが、それも違うようだった。
しばらくの間、臭う。ということは、カインロットは息をするにも辛かったに違いない。
オナラが臭いということは知っている。知っていたのにいつから臭わなくなってた?
音だけだと思っていた。カインロットも気にしていないようだったので臭わないと思っていた。
閨事の最中に刺激されて出るオナラは、臭わないものなのだろうと。
侍女が更に続けた。
「それに、おそらく嗅覚だけではなく味覚にも異常が出ておられるかと。味付けが薄いとおっしゃる妃殿下のお食事だけ、濃く味付けされております。お野菜はお召し上がりになられませんしお肉ばかりですので、医師にも注意を受けられておられましたが覚えておられますか?」
覚えていない。虫歯は痛いから覚えているけど。そう言えば歯を磨くように言われた気がする。
「医師を呼んでくれる?いつもちゃんと聞いていなかったから話が聞きたいわ。」
難しい言葉で説明されるから、何を言っているのかがわからなかったのよ。
やってきた医師には、太っている原因も食生活と運動不足のせいだと言われた。
体形やオナラの臭いをなんとかしたいと思っているのであれば、文句を言わずに出された食事だけをよく噛んでとるように言われたが、何の味もしない食事もおやつも楽しくなくなった。
ただ、お腹回りはすっきりしてきた。しかし、皮がたるんで居座っていた。
それでもコルセットがつけられるようになったことで、妊婦服をお別れとなった。
歯磨きは侍女に監視されながらすることになった。
はじめの頃は臭うためか距離をあけたところから見張っていたが、ひと月経つ頃には近くにいた。
歯だけでなく歯茎や舌、上あごまで磨くと粘つきがなくなった。
ただ、歯は何本か失った。
それでも、においはわからないし味もわからないままだった。
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