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しおりを挟むラフィティのオナラは強烈で、執務室にいた者たちは窓を開けたまま帰ることになった。
隣の応接室では国王である父とラフィティの父であるハーモニア公爵、他数名がいたが、カインロットとマリージュを入れると国王とハーモニア公爵以外は退席した。
「ハーモニア公爵、申し訳ありませんが私はもうラフィティを妻として女として見ることができません。
ですが息子たちの母親であり、妃であることに変わりはありません。どうかご理解ください。」
ハーモニア公爵は恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていた。
「いえ、娘は私から見ても王太子妃として見かねた外見をしていると認めます。殿下がソノ気になれないと思われるのも男として理解できます。申し訳ございません。」
「予定では半年後にマイルスをお披露目をします。ヘインズの1歳のお披露目はラフィティは妊娠中でしたので表には出ませんでしたが、マイルスのお披露目には出ることになります。人目を意識することで少しでも元の体形に近づいてくれることを願うばかりです。」
今のあの体形のまま表に出ると、驚いた後に嘲笑されることになるだろう。
それでもラフィティがニコニコとし続けていられるのであれば構わないが、恥ずかしい思いをすることは間違いない。
「王子殿下たちの足を引っ張るような存在に成り果てれば、幽閉してくださって構いません。」
ハーモニア公爵の覚悟が見えた。
娘よりも孫2人の方が大事だと彼は言った。
それはそうだ。ハーモニア公爵家の血筋が王家に混ざるのだ。これは久しぶりのことなのだ。
以前嫁いできた女性は子供ができなくて、側妃が産んだ子供が王になった。
ラフィティは子供を産むという役目を立派に果たした。
不祥事があっても、出戻りではなく幽閉を願うということは病死という名の処分も視野に入れてよいということになる。
まぁ、よほどのことがない限り、そこまでする気はないが。
ハーモニア公爵が退席した後、残ったのは国王である父とマリージュとカインロット。
国王はずっと顔色が悪いままだった。
それはそうだ。娘かもしれないマリージュと息子が関係を持っていることを知ったのだから。
「カインロット、マリージュから聞かなかったのか?」
「マリージュが妹かもしれないということですか?聞いてますし知っていましたよ。」
「知っていた?」
「ええ。私が6歳、マリージュが5歳の頃まで曾祖母の離宮で何度も会っていましたよね?
その時にあなたとマリージュの母が話していた会話を覚えています。確か、マリージュの耳の形が父上にそっくりだから父上の子供に間違いないというような話をしていましたね。」
「そんな……知っていて、なぜなんだ?」
「何か問題が?私たちは離れて暮らしていたので他人同然です。実際に兄妹かどうかもわからないし。
ですが、倫理観を気にしそうな父上を気遣って子供を産ませるつもりはありません。だからこそラフィティに2人産んでもらったのですから。
子供を産まなければ、ただの男と女です。違いますか?」
父はマリージュを見たが、マリージュはただ微笑むだけだった。
「何代前でしょうか。200年前くらいまでは近親婚は当たり前でした。兄と妹、姉と弟、叔父と姪。
血が濃すぎる弊害を知り、血は薄まった。血を継ぐ子供を産まなければいいだけです。私がマリージュを愛することには関係ない。禁断の関係なのかもしれませんが、それがどうした?と思うだけです。」
「……そう言ってしまえば、そうなんだが。」
「マリージュの母上を愛していた父上ならわかるでしょう?一度愛してしまうと手放せない。」
「……ああ。わかった。2人がそれでいいならもう何も言わない。」
心境は複雑なのだろう。だが父も、今更もう遅いとわかっているのだ。
こうしてカインロットとマリージュの関係は父の知るところとなった。
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