17 / 20
17.
しおりを挟むラフィティのオナラは強烈で、執務室にいた者たちは窓を開けたまま帰ることになった。
隣の応接室では国王である父とラフィティの父であるハーモニア公爵、他数名がいたが、カインロットとマリージュを入れると国王とハーモニア公爵以外は退席した。
「ハーモニア公爵、申し訳ありませんが私はもうラフィティを妻として女として見ることができません。
ですが息子たちの母親であり、妃であることに変わりはありません。どうかご理解ください。」
ハーモニア公爵は恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていた。
「いえ、娘は私から見ても王太子妃として見かねた外見をしていると認めます。殿下がソノ気になれないと思われるのも男として理解できます。申し訳ございません。」
「予定では半年後にマイルスをお披露目をします。ヘインズの1歳のお披露目はラフィティは妊娠中でしたので表には出ませんでしたが、マイルスのお披露目には出ることになります。人目を意識することで少しでも元の体形に近づいてくれることを願うばかりです。」
今のあの体形のまま表に出ると、驚いた後に嘲笑されることになるだろう。
それでもラフィティがニコニコとし続けていられるのであれば構わないが、恥ずかしい思いをすることは間違いない。
「王子殿下たちの足を引っ張るような存在に成り果てれば、幽閉してくださって構いません。」
ハーモニア公爵の覚悟が見えた。
娘よりも孫2人の方が大事だと彼は言った。
それはそうだ。ハーモニア公爵家の血筋が王家に混ざるのだ。これは久しぶりのことなのだ。
以前嫁いできた女性は子供ができなくて、側妃が産んだ子供が王になった。
ラフィティは子供を産むという役目を立派に果たした。
不祥事があっても、出戻りではなく幽閉を願うということは病死という名の処分も視野に入れてよいということになる。
まぁ、よほどのことがない限り、そこまでする気はないが。
ハーモニア公爵が退席した後、残ったのは国王である父とマリージュとカインロット。
国王はずっと顔色が悪いままだった。
それはそうだ。娘かもしれないマリージュと息子が関係を持っていることを知ったのだから。
「カインロット、マリージュから聞かなかったのか?」
「マリージュが妹かもしれないということですか?聞いてますし知っていましたよ。」
「知っていた?」
「ええ。私が6歳、マリージュが5歳の頃まで曾祖母の離宮で何度も会っていましたよね?
その時にあなたとマリージュの母が話していた会話を覚えています。確か、マリージュの耳の形が父上にそっくりだから父上の子供に間違いないというような話をしていましたね。」
「そんな……知っていて、なぜなんだ?」
「何か問題が?私たちは離れて暮らしていたので他人同然です。実際に兄妹かどうかもわからないし。
ですが、倫理観を気にしそうな父上を気遣って子供を産ませるつもりはありません。だからこそラフィティに2人産んでもらったのですから。
子供を産まなければ、ただの男と女です。違いますか?」
父はマリージュを見たが、マリージュはただ微笑むだけだった。
「何代前でしょうか。200年前くらいまでは近親婚は当たり前でした。兄と妹、姉と弟、叔父と姪。
血が濃すぎる弊害を知り、血は薄まった。血を継ぐ子供を産まなければいいだけです。私がマリージュを愛することには関係ない。禁断の関係なのかもしれませんが、それがどうした?と思うだけです。」
「……そう言ってしまえば、そうなんだが。」
「マリージュの母上を愛していた父上ならわかるでしょう?一度愛してしまうと手放せない。」
「……ああ。わかった。2人がそれでいいならもう何も言わない。」
心境は複雑なのだろう。だが父も、今更もう遅いとわかっているのだ。
こうしてカインロットとマリージュの関係は父の知るところとなった。
911
お気に入りに追加
744
あなたにおすすめの小説
あなたが残した世界で
天海月
恋愛
「ロザリア様、あなたは俺が生涯をかけてお守りすると誓いましょう」王女であるロザリアに、そう約束した初恋の騎士アーロンは、ある事件の後、彼女との誓いを破り突然その姿を消してしまう。
八年後、生贄に選ばれてしまったロザリアは、最期に彼に一目会いたいとアーロンを探し、彼と再会を果たすが・・・。

(完結)第二王子に捨てられましたがパンが焼ければ幸せなんです! まさか平民の私が・・・・・・なんですか?
青空一夏
恋愛
※本文に盛り込んでいたAIイラストはギャラリーに全て移動しました。
私はアンジェリーナ・ウエクスラー。平民でデメクレティック学園を去年卒業したばかりの15歳だ。この国の平民は11歳から14歳までデメクレティック学園に通い、貴族は16歳までアリストクラシィ学園に通うことになっている。
そして、貴族も平民も15歳になると魔力測定を王城で受けなければならない。ここ70年ばかり、魔力を持った者は現れなかったけれど、魔力測定だけは毎年行われていた。私は母さんが縫ってくれたワンピースを着て王城に行った。今まで平民から魔力持ちが現れたことはなかったというから、私にそんな力があるとは思っていない。
王城では、初めて間近に見る貴族のご令嬢に目を付けられて意地悪なことを言われて、思わず涙が滲んだ。悔しいときにも涙が出てくる自分が嫌だし、泣きたくなんかないのに・・・・・・彼女達は私のワンピースや両親を蔑み笑った。平民でパン屋の娘が、そんなに悪い事なの? 私は自分の両親が大好きだし自慢にも思っているのに。
これ以上泣きたくなくて涙を堪えながら魔力測定の列に並び順番を待った。流れ作業のように簡単に終わるはずだった測定の結果は・・・・・・
これは平民でパン屋の娘である私が魔力持ちだったことがわかり、最初は辛い思いをするものの、幸せになっていく物語。
※魔法ありの異世界で、ドラゴンもいます。ざまぁは軽め。現代的な表現や言葉遣いがありますし、時代的な背景や服装やら文明の程度は作者自身の設定ですので、地球上の実際の歴史には全く基づいておりません。ファンタジー要素の濃いラブストーリーとなっております。ゆるふわ設定、ご都合主義は多分いつもなかんじ😓よろしくお願いしまぁす🙇🏻♀️なお、他サイトにも投稿します。一話ごとの字数にはばらつきがあります。
※表紙はAIで作者が作成した画像です。
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない
ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。
ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。
ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。
ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

領地経営で忙しい私に、第三王子が自由すぎる理由を教えてください
ねむたん
恋愛
領地経営に奔走する伯爵令嬢エリナ。毎日忙しく過ごす彼女の元に、突然ふらりと現れたのは、自由気ままな第三王子アレクシス。どうやら領地に興味を持ったらしいけれど、それを口実に毎日のように居座る彼に、エリナは振り回されっぱなし!
領地を守りたい令嬢と、なんとなく興味本位で動く王子。全く噛み合わない二人のやりとりは、笑いあり、すれ違いあり、ちょっぴりときめきも──?
くすっと気軽に読める貴族ラブコメディ!

花嫁は忘れたい
基本二度寝
恋愛
術師のもとに訪れたレイアは愛する人を忘れたいと願った。
結婚を控えた身。
だから、結婚式までに愛した相手を忘れたいのだ。
政略結婚なので夫となる人に愛情はない。
結婚後に愛人を家に入れるといった男に愛情が湧こうはずがない。
絶望しか見えない結婚生活だ。
愛した男を思えば逃げ出したくなる。
だから、家のために嫁ぐレイアに希望はいらない。
愛した彼を忘れさせてほしい。
レイアはそう願った。
完結済。
番外アップ済。

妖精隠し
棗
恋愛
誰からも愛される美しい姉のアリエッタと地味で両親からの関心がない妹のアーシェ。
4歳の頃から、屋敷の離れで忘れられた様に過ごすアーシェの側には人間離れした美しさを持つ男性フローが常にいる。
彼が何者で、何処から来ているのかアーシェは知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる