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しおりを挟むカインロットは以前にも伝えたはずなのに再び執務室にやってきたラフィティにウンザリした。
「ここには来ないように言っただろう?出て行ってくれ。仕事の邪魔だ。」
「カイン様っ!私とカイン様は夫婦ですよね?それなのにもう閨事をしないってどういうこと?」
「……ここでする話ではないだろう?また時間を取るから出て行ってくれ。」
「嫌です。私は今すぐ理由を知りたいの。教えてくれるまで動かないわ。」
そう言ってラフィティはソファに座って腕を組んでいた。……子供みたいだな。
カインロットはため息をついてからラフィティに言った。
「結婚する時に伝えただろう?ラフィティは子供を2人産んでくればいい、と。」
「閨事は子供をつくるためだけじゃないでしょ?それに結婚当初は子作り以外でも来てくれていたわ。」
「それは王家の習わしみたいなものだ。新婚なのに妊娠しやすい日にだけ抱くのは妃が不安になるから。」
「じゃあ、もう子作りの必要がないからってこと?」
「そうだ。」
「でも、男性は性欲があるのでしょう?私がいないと……え?誰か相手がいるの?」
執務室にいた事務官たちの目が一点に向かうことにラフィティは気づいたのだろう。
その先にはマリージュがいる。カインロットは振り向かなくてもそれがわかった。
「え……相手、マリージュさんなの?どうして?代行側妃のはずよね?」
「……ああ。代行だよ。正妃である君のね。言ったはずだ。マリージュに子供は産ませない。それは君の役割だからとね。だからそれ以外のことはマリージュが全てやってくれている。執務も私の相手も。」
「いつから?」
「初めから。離宮に来た時からだな。」
「結婚前じゃないっ!」
「そうだな。だが何人もと浮気するよりいいだろう?」
カインロットはしれっと答えた。結婚前だから浮気と言えば浮気だろう。
ラフィティは怒っていたが、いい案が浮かんだという顔をして言った。
「私の代わりはもうしなくていいわ。マリージュさんは仕事だけしてくれたらいいの。」
仕事だけは押しつけるままなんだな。めげない性格は鈍感だからか?
「いや、私の相手はマリージュだ。ラフィティを抱く気はもうない。」
「どうしてっ!!」
「理由は、そうだな。3つある。今ここで言っていいのか?」
「今ここで知りたいの!!」
ここにいる事務官とマリージュ以外に、その扉の向こうの応接室にも何人もいるんだけどな。
いい機会だから、絶望してもらおうか。
「まず、ラフィティは口臭がきつい。歯を磨いていないのだろう?虫歯もあると聞いた。虫歯が移りそうだし臭いにも耐えられないから口づけをしたいとは思わない。」
結婚当初は問題なかった。だが、悪阻で歯磨きも気持ち悪くなったのをきっかけに、歯を磨かなくなったと聞いた。子供たちも近づかないのはそれが原因だろう。
「それから、その体形。すまないが私の好みではない。勃つ気がしない。」
2人目のマイルスを産んだ後、コルセットをつけようとしたが用意していたものでは締めることができなかったらしい。特注したが、その頃には更に胴体が大きくなっていて結局は妊婦服のままだ。
父親のハーモニア公爵より腹が出ていそうだ。
「最後に、オナラだ。君は膣を刺激するとオナラをする。何度も、何度も。ひどい悪臭の中、私は萎えそうになるのを何度も耐えて子種を授けた。結果が実ってホッとしている。もうあの臭いはごめんだから抱きたくない。」
オナラにつられて中身まで出てこないかと気もそぞろになりながら手早く終わらせるのがどれだけ大変なことか。
もう二度と経験したくないんだ。
「そんな……あれは生理現象よ!みんなそうじゃないの?」
マリージュ以外は男ばかりだが、既婚者だ。妻たちはどうだ?
カインロットは後ろを振り返って確認したが、みんな顔を横に振っていた。
「嘘よっ!」
ラファティが叫んだ瞬間に、プッと音がした。ラファティは真っ赤になって執務室から出て行った。
即座に窓を開けたのは言うまでもない。
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