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しおりを挟む『夜に部屋で待っている』
ラフィティはそう言ったが、侍女長によると妊娠しやすい時期ではなかったためカインロットは今日は行かないということを侍女長からラフィティに伝えるように頼んだ。
しかし、ラフィティは自分がカインロットの妻であることを思い出したせいだろう。
寵愛を求め夜中に部屋までやってきた。
「カイン様ぁ。私たちは夫婦です。子作り以外でも愛し合うべきですよ。部屋に入れてくださーい。」
そう叫びながら扉を叩いていた。護衛が止める声も聞こえるが、困っているようだった。
「……また眠り薬の処方が要りそうだな。」
ラフィティの妊娠前、この部屋に来れないようにするため何度かラフィティに薬を盛った。
おそらくまたラフィティが妊娠しない限り、せがみに来るようになる。
隣でクスクスと笑っているのはマリージュだ。
愛を交わしたばかりのマリージュの肌は、まだしっとりと汗ばんでいて情欲をそそる。
今からもう一度交わろうとしていたところだった。
ラフィティと2人目の子供を作らなければならない。
そのことは息子ヘインズが生後半年を過ぎた頃から頭にはあった。
だが、なかなかソノ気になれなかったのだ。
なぜなら、ラフィティが未だに妊婦服を着ているからだ。
ラフィティは元々凹凸の少ない体形だった。
だが産後、コルセットもせず楽な妊婦服ばかり着ているせいで妊婦でもないのに腹が出ている。
だからラフィティが妊婦だと勘違いしている使用人もいるくらいだ。
「ラフィティ様はまた元気なお子様を産んでくださるわ。」
「それだけが役割だからな。……追い返してくる。」
素肌にガウンを羽織り、寝室から出て隣の部屋の扉の前へと行った。
寝室の扉を閉めていれば、ラフィティの声は聞こえなかっただろう。
だが、今日はやってくるはずだとマリージュが言うので、廊下の声が聞こえやすいように寝室の扉を開けたまま閨事をしていたのだ。
扉の外にいる護衛に聞こえないように声を抑えるマリージュに興奮していつもより早く果てた。
「ラフィティ、明日は早いんだ。部屋に戻ってくれ。君の部屋を訪れる予定は侍女長の指示がある。」
「カイン様!侍女長の指示がなくても私、毎日待っています。いつでも来て。」
「……すまないが忙しいんだ。部屋に戻れ。騒ぎになるから来ないでほしい。」
「……おやすみなさい。」
それから3日後から3日間、カインロットはラフィティの元へと通った。
ふくよかな体形を否定する気はない。ただ、カインロットの好みではないが。
肌艶は手入れされていることから、クビレが全くないのも腹が出ているのもラフィティの怠慢なのだろう。
産後1年も経っていないし、公務を放棄しているラフィティが表立って顔を出す機会はない。
それがいいのか悪いのか。
貴族夫人や令嬢の目に晒されない分、ラフィティは楽な方に逃げ自己管理を怠っているのだ。
持ち上げる脚も非常に重く、ただ寝転がっているだけのラフィティに萎えそうになったが、逃げてもまた来月も抱かなければならないと思うと頑張るしかなかった。
その結果が実り、すぐにラフィティは2人目を妊娠した。
カインロットは苦行を終え晴れやかな気分になった。
そして悪阻が治まると、再び妊娠を自慢するように王城内を歩き回り始めた。
「おめでとうございます。僕の妻と同じくらいに出産になりそうですね。」
通りかかったある男にラフィティが妊娠を自慢し、その答えがそれだった。
「まあ!あなたの奥様も妊婦なのね?」
「ええ。今妊娠7か月です。」
「え……?私、まだ4か月よ?」
ラフィティのその言葉に男は顔を青くして逃げ去ったと耳にした。
普通、妊娠4か月だと外見ではわかりにくい。
要するに、ラフィティの腹は7か月の妊婦と同じくらい出ているということなのだろう。
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