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しおりを挟む正妃ラフィティを自分の部屋に戻らせたカインロットは、マリージュが待っている自分のベッドへと向かった。
「ラフィティが部屋の前まで来ていた。君の言う通りだったな。」
「でしょう?ラフィティ様は嫉妬深いもの。あなたがいるかどうか確かめないと気が済まないと思ったの。」
カインロットはラフィティとの初夜が済むと隠し通路を通ってマリージュの部屋に行くつもりだった。
だが、マリージュが念のためにカインロットは部屋にいた方がいいと言ったのだ。
「ひょっとして毎晩確かめに来る気か?」
「どうかしら?夜着姿で夜な夜な出歩く王太子妃が不気味だと広めたら大人しくなるんじゃない?」
「そうだな。それでも来るようだったら眠り薬でも飲ませるか。」
カインロットとマリージュは口づけをしながら、お互いの夜着を脱がせ合っていた。
2人はすでに、1年以上関係を持っている。
それを知っているのはカインロットの侍従だけだろう。
マリージュがカインロットとの関係に忌避感を持たないとわかってから、昼に夜に時間があるときを見計らってマリージュのいる離宮を訪れて関係を持っていたのだ。
側妃になったことでマリージュも王宮内に部屋が与えらえた。
その部屋を、隠し通路を通って行ける部屋を選んだのはカインロットだ。
廊下に出ることがないため、マリージュの部屋を訪れていることを誰にも知られることはない。
この隠し通路も、昔の王族が大っぴらにできない愛人と会うために作られたとも言われている。
カインロットはラフィティとは違い凹凸のあるマリージュの体を存分に楽しんだ。
カインロットがラフィティを抱くのは週に1度と妊娠しやすい時期の3日間だけ。
ラフィティはカインロットの部屋を何度も訪れていたが、やがて夜は部屋から出してもらえなくなり、軽い眠り薬を飲まされて強制的に眠らされるようになった。
そして結婚から2か月が経った頃、ラフィティの妊娠が判明した。
「カイン様っ!赤ちゃんができたわ!」
「そうか。よくやった。大切な子だ。医師や侍女に従って安静に過ごしてくれ。」
「……カイン様、喜んでくださってる?」
「ああ、もちろんだ。嬉しいよ。元気な子を産んでくれ。」
ラフィティの頭を撫でてやると、彼女はとても嬉しそうな顔をした。
それからラフィティの出産が終わるまで、カインロットがラフィティの寝室を訪れることはなかった。
ラフィティも、僅かに与えられていた王太子妃としての仕事をマリージュに丸投げして公務を放棄し、お腹の子供のためだけに暮らしていた。
お腹の子供にいい食べ物を、飲み物を、楽しい音楽を、苦しくない妊婦服を、靴を………
そして自慢げにお腹を撫でながら意味もなく王城内を歩き回る姿が毎日のように見られた。
ラフィティが何をしようが、カインロットは放っておいた。
王城内で働く者たちも、ラフィティのことを明るくて可愛い王太子妃だと好意的に思っていたが、突如声を掛けられて言われるのだ。
『ねぇ、見て。私とカイン様の愛の結晶なの』と。
それにどう応えてほしいのだろうか。
『おめでとうございます』『お幸せですね』『うらやましいです』
そんな言葉を繰り返し言うことしかできない者たちは、ラフィティの姿を見ると隠れるようになった。
心情的には、『王太子妃の一番の責務だろう?』『妊娠させるためにヤるんだからいつかはできるだろう?』『何度も愛の結晶と言われると王太子殿下が子種を注ぐ姿を思い浮かべてしまう』と男も女もげんなりしているのだ。
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