14 / 15
14.
しおりを挟む息子ジェラルドが不貞で産まれたか、近親相姦で産まれたか。
他家のことなど関係ないだろうに、この手の噂はいつまでも燻ぶり続ける。
なので、ジェラルドの今後のためにも少し解消することにした。
「ジェラルドが不貞で産まれたという噂の方ですが、それの何が問題なのでしょうか。愛人の子供を跡継ぎに据えてきた貴族家は少なくありません。数十年前までは女性に継ぐ権利がなかったのですから、正妻に女の子しか産まれなかった場合は現当主が不貞で産まれた子供という貴族家も珍しくないでしょう。違いますか?
私はラモン公爵家の籍に入っている公爵家の者です。その私が産んだ子供が私の跡を継ぐ。それは正当な権利です。父親が誰であってもニセモノではありません。国の法律で認められているのですから。」
正妻の子供でないと跡を継げないという決まりはない。血の繋がりが必要だという決まりもない。
それは国の法律で定められているため、ニセモノ呼ばわりはしてはいけない。
男が不貞をして愛人に産ませた子供を跡継ぎにすることは今までにもあったが、女側が同じことをすると理解を得られないのは間違いだ。それなら男にも許してはならないのだ。
「次に、近親相姦の噂の方ですが、仮にオズワルド様が私の祖父だったとしましょう。オズワルド様は身に覚えがあり、私を孫だと知った。でも、公表したところで信じられるわけがない。私が財産や爵位を狙っていると周りから疑われるだけになります。他にも子供だ孫だと名乗りをあげる者も出たでしょう。実際にオズワルド様の死後にそういって名乗り出る者はおりましたし。
そんな面倒なことになるよりも、孫としてではなく妻として結婚してしまえばいい。そうすればラモン公爵家の籍に入れることもできる。私はオズワルド様の孫ということなのですから、私の産む子供は公爵家の血筋になるということです。もちろん、相手は祖父であるオズワルド様ではなく目に適った男性。近親相姦にはなり得ません。」
納得している人、頭が混乱してそうな人、理解できなかった人、など、いろんな顔があった。
その中の一人が聞いてきた。
「亡き公爵オズワルド様が、あなたが孫だと知らなかった場合は?」
「オズワルド様は私を孫だと知らなかったけど、私を結婚相手に望んだ場合も同じことです。
親というものは子供の出生について教えるものだと思います。それこそ近親相姦を避けるために。
祖母から母に、母から私に。まぁ、私以降は近親相姦になり得る年代がいなくなりますので必要はないかと思いますが。つまり、私がオズワルド様の孫だった場合、私が母から聞いて知っているので近親相姦にはなり得ません。オズワルド様に私が孫であるということを打ち明け、それこそ正統な権利を主張して公爵家の籍に入り、オズワルド様の目に適う男性の子供を産みます。
つまり、不貞の噂も、近親相姦の噂も、公爵である私と子供たちを貶す根拠がありません。
おわかりいただけたでしょうか。」
結局2人は祖父と孫なのか?息子は誰の子なのか?
そんな声も聞こえたが、現公爵セレーネと子供たちがラモン公爵家の爵位と財産を正式に継ぐ者だと知らしめることができればそれでいい。内情を事細かに周知させる必要などどこにもないのだ。
478
お気に入りに追加
1,148
あなたにおすすめの小説


思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。


【完結80万pt感謝】不貞をしても婚約破棄されたくない美男子たちはどうするべきなのか?
宇水涼麻
恋愛
高位貴族令息である三人の美男子たちは学園内で一人の男爵令嬢に侍っている。
そんな彼らが卒業式の前日に家に戻ると父親から衝撃的な話をされた。
婚約者から婚約を破棄され、第一後継者から降ろされるというのだ。
彼らは慌てて学園へ戻り、学生寮の食堂内で各々の婚約者を探す。
婚約者を前に彼らはどうするのだろうか?
短編になる予定です。
たくさんのご感想をいただきましてありがとうございます!
【ネタバレ】マークをつけ忘れているものがあります。
ご感想をお読みになる時にはお気をつけください。すみません。

彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

私だけが家族じゃなかったのよ。だから放っておいてください。
鍋
恋愛
男爵令嬢のレオナは王立図書館で働いている。古い本に囲まれて働くことは好きだった。
実家を出てやっと手に入れた静かな日々。
そこへ妹のリリィがやって来て、レオナに助けを求めた。
※このお話は極端なざまぁは無いです。
※最後まで書いてあるので直しながらの投稿になります。←ストーリー修正中です。
※感想欄ネタバレ配慮無くてごめんなさい。
※SSから短編になりました。

【完結済み】私を裏切って幼馴染と結ばれようなんて、甘いのではありませんか?
法華
恋愛
貴族令嬢のリナは、小さいころに親から言いつけられた婚約者カインから、ずっと執拗な嫌がらせを受けてきた。彼は本当は、幼馴染のナーラと結婚したかったのだ。二人の結婚が済んだ日の夜、カインはリナに失踪するよう迫り、リナも自分の人生のために了承する。しかしカインは約束を破り、姿を消したリナを嘘で徹底的に貶める。一方、リナはすべてを読んでおり......。
※完結しました!こんなに多くの方に読んでいただけるとは思っておらず、とてもうれしく思っています。また新作を準備していますので、そちらもどうぞよろしくお願いします!
【お詫び】
未完結にもかかわらず、4/23 12:10 ~ 15:40の間完結済み扱いになっていました。誠に申し訳ありません。

それでも好きだった。
下菊みこと
恋愛
諦めたはずなのに、少し情が残ってたお話。
主人公は婚約者と上手くいっていない。いつも彼の幼馴染が邪魔をしてくる。主人公は、婚約解消を決意する。しかしその後元婚約者となった彼から手紙が来て、さらにメイドから彼のその後を聞いてしまった。その時に感じた思いとは。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる