13 / 15
13.
しおりを挟むカルダモ伯爵が放ったこの言葉。
『あなたが前公爵の孫かもしれないって噂を聞いたのですが、それって近親相姦ってことですよね?
その息子、祖父と孫がまぐわって産まれたってことでいいですか?』
数年前から噂になっていたことは知っていた。
ラモン公爵家からではなく、マローネの実家である子爵家の関係者から漏れたのだろうと思う。
マローネの妊娠は子爵家では何人もの使用人が目にしていたはず。
マローネの兄嫁である義姉が妊娠を偽装した上で自分たちの子供として育てたのだ。子爵家にいた者はマローネが産んだ子供だと知っていた。外は騙せても内は騙せない。
相手までは知らなくともマローネが直前まで働いていたのがラモン公爵家だということを知っている使用人もいただろう。退職した使用人が自分の想像を身内にポロっと話していたのかもしれない。
マローネが産んだミレーネがオズワルドの子供だと断定した噂に変わるのは早かった。
ミレーネが産んだのがセレーネ。つまりセレーネはオズワルドの孫だということも。
事実だとも、事実無根だとも、ラモン公爵家として何も答えたことはない。
というか、馬鹿正直に確認してくる貴族などいないのが当然だ。
もちろん、セレーネの父は何も知らない。
子爵家の伯父たちもミレーネのことは実の妹だと思っていたので知らない。
公爵家に聞くような愚かなことを誰がする?そんな愚か者がカルダモ伯爵だということだ。
「カルダモ伯爵、先ほどの許しを取消してあなたを侮辱罪で訴えることにしましょう。亡きオズワルド様に対する侮辱。口にしていいことではありません。もちろん、現公爵である私への侮辱もです。」
「なっ!図星だからだろう?事実だからだろう?それなのに俺を悪者にするのか?」
何を逆ギレしているのか、この伯爵は。
「では、ラモン公爵家の前公爵と現公爵を侮辱したのではなく確たる証拠をお持ちということでよろしいでしょうか?」
「確たる……証拠?」
「当然のことでしょう?社交界で噂されている全てのことが事実だと?まさか無責任な噂を信じて近親相姦によって息子が産まれたなどと伯爵という地位にある者が口にしたというわけではないですよね?」
「……それは、その、……」
「それからもう一つ、カルダモ伯爵はどちらの噂を信じているのでしょうか。
あなたの息子さんは、私が不貞をして産まれたのがジェラルドだと言いました。
伯爵は、祖父との近親相姦で産まれたのがジェラルドだと言いました。
どちらもあなたが口にしたのだと思いますが、我が公爵家の使用人に発言の根拠となった証人がいるということでよろしいでしょうか?その上で伯爵はどちらの証言が正しいと?」
「……どっちって、え……?公爵家の証人?」
「あら。違うようですね。軽々しく仕えている公爵家の内情を売る使用人が我が家にいるのかと思いましたが。証人ではないとなると何か物的証拠がおありで?」
「…………浅はかな発言でした。申し訳ございません。」
「今更謝罪されても、放った言葉というのは取り消せませんのよ?こんなに証人がいるのですから。しかるべき対応はさせていただきます。ですが、そうですね。少しだけ噂話の解消のお手伝いはしましょう。」
オズワルド様が亡くなって10年も経った。息子であるジェラルドの今後のためにも疑惑を晴らすことにしましょう。
435
お気に入りに追加
1,143
あなたにおすすめの小説


初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました
山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。
だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。
なろうにも投稿しています。

もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました
柚木ゆず
恋愛
《もうすぐアンナに婚約の破棄を宣告できるようになる。そうしたらいつでも会えるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ》
最近お忙しく、めっきり会えなくなってしまった婚約者のロマニ様。そんなロマニ様から届いた私アンナへのお手紙には、そういった内容が記されていました。
そのため、詳しいお話を伺うべくレルザー侯爵邸に――ロマニ様のもとへ向かおうとしていた、そんな時でした。ロマニ様の双子の弟であるダヴィッド様が突然ご来訪され、予想だにしなかったことを仰られ始めたのでした。

【完結】消えた姉の婚約者と結婚しました。愛し愛されたかったけどどうやら無理みたいです
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベアトリーチェは消えた姉の代わりに、姉の婚約者だった公爵家の子息ランスロットと結婚した。
夫とは愛し愛されたいと夢みていたベアトリーチェだったが、夫を見ていてやっぱり無理かもと思いはじめている。
ベアトリーチェはランスロットと愛し愛される夫婦になることを諦め、楽しい次期公爵夫人生活を過ごそうと決めた。
一方夫のランスロットは……。
作者の頭の中の異世界が舞台の緩い設定のお話です。
ご都合主義です。
以前公開していた『政略結婚して次期侯爵夫人になりました。愛し愛されたかったのにどうやら無理みたいです』の改訂版です。少し内容を変更して書き直しています。前のを読んだ方にも楽しんでいただけると嬉しいです。

〖完結〗旦那様が私を殺そうとしました。
藍川みいな
恋愛
私は今、この世でたった一人の愛する旦那様に殺されそうになっている。いや……もう私は殺されるだろう。
どうして、こんなことになってしまったんだろう……。
私はただ、旦那様を愛していただけなのに……。
そして私は旦那様の手で、首を絞められ意識を手放した……
はずだった。
目を覚ますと、何故か15歳の姿に戻っていた。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全11話で完結になります。

結婚式をボイコットした王女
椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。
しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。
※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※
1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。
1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)

【完】隣国に売られるように渡った王女
まるねこ
恋愛
幼いころから王妃の命令で勉強ばかりしていたリヴィア。乳母に支えられながら成長し、ある日、父である国王陛下から呼び出しがあった。
「リヴィア、お前は長年王女として過ごしているが未だ婚約者がいなかったな。良い嫁ぎ先を選んでおいた」と。
リヴィアの不遇はいつまで続くのか。
Copyright©︎2024-まるねこ

公爵令嬢は運命の相手を間違える
あおくん
恋愛
エリーナ公爵令嬢は、幼い頃に決められた婚約者であるアルベルト王子殿下と仲睦まじく過ごしていた。
だが、学園へ通うようになるとアルベルト王子に一人の令嬢が近づくようになる。
アルベルト王子を誑し込もうとする令嬢と、そんな令嬢を許すアルベルト王子にエリーナは自分の心が離れていくのを感じた。
だがエリーナは既に次期王妃の座が確約している状態。
今更婚約を解消することなど出来るはずもなく、そんなエリーナは女に現を抜かすアルベルト王子の代わりに帝王学を学び始める。
そんなエリーナの前に一人の男性が現れた。
そんな感じのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる