正当な権利ですので。

しゃーりん

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カルダモ伯爵が放ったこの言葉。
 

『あなたが前公爵の孫かもしれないって噂を聞いたのですが、それって近親相姦ってことですよね?
その息子、祖父と孫がまぐわって産まれたってことでいいですか?』

 
数年前から噂になっていたことは知っていた。

ラモン公爵家からではなく、マローネの実家である子爵家の関係者から漏れたのだろうと思う。
マローネの妊娠は子爵家では何人もの使用人が目にしていたはず。
マローネの兄嫁である義姉が妊娠を偽装した上で自分たちの子供として育てたのだ。子爵家にいた者はマローネが産んだ子供だと知っていた。外は騙せても内は騙せない。
相手までは知らなくともマローネが直前まで働いていたのがラモン公爵家だということを知っている使用人もいただろう。退職した使用人が自分の想像を身内にポロっと話していたのかもしれない。


マローネが産んだミレーネがオズワルドの子供だと断定した噂に変わるのは早かった。

ミレーネが産んだのがセレーネ。つまりセレーネはオズワルドの孫だということも。


事実だとも、事実無根だとも、ラモン公爵家として何も答えたことはない。
というか、馬鹿正直に確認してくる貴族などいないのが当然だ。

もちろん、セレーネの父は何も知らない。
子爵家の伯父たちもミレーネのことは実の妹だと思っていたので知らない。

公爵家に聞くような愚かなことを誰がする?そんな愚か者がカルダモ伯爵だということだ。 


「カルダモ伯爵、先ほどの許しを取消してあなたを侮辱罪で訴えることにしましょう。亡きオズワルド様に対する侮辱。口にしていいことではありません。もちろん、現公爵である私への侮辱もです。」

「なっ!図星だからだろう?事実だからだろう?それなのに俺を悪者にするのか?」


何を逆ギレしているのか、この伯爵は。


「では、ラモン公爵家の前公爵と現公爵を侮辱したのではなく確たる証拠をお持ちということでよろしいでしょうか?」

「確たる……証拠?」

「当然のことでしょう?社交界で噂されている全てのことが事実だと?まさか無責任な噂を信じて近親相姦によって息子が産まれたなどと伯爵という地位にある者が口にしたというわけではないですよね?」

「……それは、その、……」

「それからもう一つ、カルダモ伯爵はどちらの噂を信じているのでしょうか。
あなたの息子さんは、私が不貞をして産まれたのがジェラルドだと言いました。
伯爵は、祖父との近親相姦で産まれたのがジェラルドだと言いました。
どちらもあなたが口にしたのだと思いますが、我が公爵家の使用人に発言の根拠となった証人がいるということでよろしいでしょうか?その上で伯爵はどちらの証言が正しいと?」 

「……どっちって、え……?公爵家の証人?」

「あら。違うようですね。軽々しく仕えている公爵家の内情を売る使用人が我が家にいるのかと思いましたが。証人ではないとなると何か物的証拠がおありで?」

「…………浅はかな発言でした。申し訳ございません。」

「今更謝罪されても、放った言葉というのは取り消せませんのよ?こんなに証人がいるのですから。しかるべき対応はさせていただきます。ですが、そうですね。少しだけ噂話の解消のお手伝いはしましょう。」
 

オズワルド様が亡くなって10年も経った。息子であるジェラルドの今後のためにも疑惑を晴らすことにしましょう。





 
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