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12.
しおりを挟むジェラルドが12歳になった頃、子供同士の交流を図るお茶会があった。
そこである伯爵令息が口にしたのだ。
「お前、ニセモノ公爵令息なんだってな。母親が不貞して産まれたから公爵家の血を継いでいないと聞いたぞ。ズルいな。ニセモノでも将来公爵になれるなんて。」
周りはシーンとなった。そこへ慌てて令息の両親が駆けつけた。
「なんてことを言うんだ!申し訳ありません。まだ子供だとお許しを。」
息子を叱りつけた後、ジェラルドとジェラルドのそばに駆けつけたセリーナたちに伯爵が謝罪した。
「子供?僕より年上に見えるけど。」
伯爵の謝罪が気に入らなかったのか、ジェラルドがそう呟いた。
「それに、彼は誰からそんな話を聞いたのでしょうか。あぁ、なるほど。彼がまだ善悪の区別も自分でできないような子供だから伯爵は彼の前で母を侮辱するようなことを口にしたのですね。子供は素直ですからね。大人が嘲笑うように話したことを彼は笑い話だと受け取ったのでしょう。いくら自宅であっても爵位が上の者を貶す時は周りに気をつけた方がいいと思いますよ。」
まだ子供と言えるジェラルドより明らかに年上の自分の息子が幼い子供のように言われた伯爵は顔を真っ赤にした。恥ずかしさと怒りで。
セレーネは、伯爵相手に12歳の息子が堂々と立ち向かう姿に関心した。
だがこれ以上は自分の出番なので口を開いた。
「ニセモノ公爵、ですか。カルダモ伯爵、この国の貴族家は直系だけで血が繋がってきたとでも?過去には薄い血筋で爵位を得た者もいれば養子になり爵位を得た者もおります。その全てをニセモノだと?」
「……そういうわけでは。ですが、あなたは明らかにニセモノですよね。公爵代理なのですから。」
なるほど。このカルダモ伯爵は10年もの間、勘違いをしているらしい。
セレーネを公爵代理だと思っているということは、ジェラルドが爵位を継ぐまでの繋ぎだと思っているのだろう。だから軽々しくセレーネを貶す言葉をこの場でも言えるのだ。
同じように勘違いに気づいた貴族が息を飲んだり、伯爵に対して嘲笑を浮かべたりしている。
「カルダモ伯爵、あなたは私が公爵代理だからと軽んじているようですね。ですが不思議です。どうして私は公爵代理だと思われているのでしょうか。この10年、どなたにも代理と呼ばれた記憶などございません。
なぜなら、私は国王陛下から正式にラモン公爵と認められておりますので。」
知らなかったのか、忘れていたのか、それとも本当に繋ぎの公爵代理だと思っていたのか。
カルダモ伯爵は周りにいる貴族たちを伺ったが誰もが否定せずに頷いているのを見て、自分の勘違いを悟ったらしい。
「そ、それは失礼しました。正式にラモン公爵家の権限をお持ちとは知りませんでしたので。」
「あなたも息子さんも、言葉の選び方を学ぶべきね。自分の無知を言い訳に謝罪しても謝罪に聞こえなくて問題だわ。
まぁ、今回は許します。うちの息子よりも年上の子供、厳しく躾け直しなさい。」
セレーネは大事にするつもりはないので伯爵親子の不敬を許し、二度目はないとその場を去ろうとしたが、カルダモ伯爵がセレーネの背中に放った言葉に、怒りが沸いた。
「あなたが前公爵の孫かもしれないって噂を聞いたのですが、それって近親相姦ってことですよね?
その息子、祖父と孫がまぐわって産まれたってことでいいですか?」
………カルダモ伯爵、潰してやる。
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