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しおりを挟むオズワルドの死後、セレーネが正式にラモン公爵だと国王陛下にも認められた。
だが、喪に服しているので公の場に姿を見せることはない。
しかも出産が控えているので尚更だった。
その間、オズワルドの隠し子もしくは孫と名乗る者が何人か訪れたらしいが、全て追い返したという。
生前のオズワルドが言っていたが、一夜限りの付き合いや愛人などは今までにいたことがないそうだ。
結婚前は閨事の手ほどきのために父親が手配した高級娼婦、結婚後は妻、そして強引に抱いたマローネだけという意外とあっさりとした女性関係を語った。
なので、息子や孫を名乗る人物は確実に偽者である、と。
臨月になり、セレーネは女の子を出産した。名前はカローネ。
もし女の子だったらマローネとセレーネに似た響きのカローネにしたいとオズワルドが決めていた。
ちなみに、マローネの娘でセレーネの母の名前はミレーネである。
そしてオズワルドの死から1年後、セレーネはジャイルズと再婚した。
葬儀でジャイルズの立ち位置を見ていた者は『やはりな』と思っていた。
ジャイルズの実家であるイーストン侯爵家には学生時代に一度だけ行ったことがあった。
学園卒業後にジャイルズと結婚して平民として暮らすことを報告するために。
それはオズワルドと婚約する2か月前のことだった。
オズワルドとの政略結婚によってセレーネとジャイルズの結婚の話は流れたが、ジャイルズは両親や2人の兄にオズワルドの元で働くことを伝えていた。
侯爵夫妻はそれを、オズワルドに自分を認めてもらい、オズワルドの死後にセレーネと結婚する許可をもらうためだと思っていた。
まぁ、ほぼ間違いではないけれど。
なので、セレーネはジャイルズとの結婚のために侯爵夫妻をラモン公爵家へと招き、2人の子供であるジェラルドとカローネにも会わせた。
もちろん、ジャイルズとの子供だとは口にしなかった。
しかし、間近で見れば気づいたのだろう。特にジェラルドはジャイルズに似ているのだから。
「……おい、ジャイルズ。前公爵閣下は承知の上だということでいいんだな?」
ジャイルズは父である侯爵の問いに頷いた。
「はい。オズワルド様公認でしたから。」
「知っている者は?」
「執事長・家令・侍女長、そして我々だけですね。使用人の口に上がることもあるようですが、そこは公爵家の使用人ですからね。滅多なことを吹聴すれば首が飛ぶことを上から言われれば口を閉じます。高い給金を得られる仕事を失いたくはないでしょうから。」
ジェラルドがジャイルズに似ていると吹聴したところで、ラモン公爵であるセレーネが産んだ子供であることには変わりはない。
ラモン公爵家の養子となっており、オズワルドの遺言でも、そして国王陛下にも正式に認められた公爵であるセレーネを不貞で糾弾しても何の意味もないこと。
真実に気づいても気づかなくても何も変わらない。
そこまで頭の回る貴族は、所詮、他家のことだと静観する。
だが頭の悪い貴族は………それが現れたのはオズワルドの死から10年後のことだった。
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