6 / 15
6.
しおりを挟むセレーネからマローネとのことは嘘だと指摘されたオズワルドは驚いていた。
何を嘘だと言われたのかもわかっていないのかもしれない。
「マローネはとっくの昔に亡くなっているので嘘がバレると思っていませんでしたか?」
「嘘、とは。どこがだ?」
「マローネがあなたのことを好いていた?愛人にはなれないから別れを選んだ?違いますよね。
マローネはあなたを全身で拒否していたんでしょう?先ほどそうおっしゃいましたよ。矛盾してますね。」
オズワルドは考え込んでいるように見えた。ひょっとして本当に好かれていると思っていた?
「マローネは実家に戻って私とのことを話したということか?」
「……話さないでどうやって縁談を断るというのです?親には話すしかないじゃないですか。純潔だと嘘をつけと?」
「……そうだった。私はマローネの純潔を奪っておきながら、逃げた彼女は見合い相手と結婚したものだと思い込んでいたんだ。何年も経ってから彼女が独身で亡くなったことを耳にした時に純潔じゃなかったから結婚できなかったんだということに気づいた。」
「身勝手な人ですね。マローネの人生を壊しておいて。彼女の見合い相手は初恋の人でした。その人の婚約が解消になってマローネと結ばれるはずだったんです。相手の方はマローネが縁談を断っても諦めませんでした。だから純潔じゃないことを話したそうです。相手の方はそれでも構わないと言ってくれて縁談はまとまりかけました。
ですが、結婚できませんでした。なぜだかわかります?……マローネが妊娠していたからです。」
オズワルドが目を見開いてセレーネを見ていた。
襲っていながら、その先に起こり得ることを考えたこともなかったのだろう。
「妊娠……?わ、私の?」
「……あなた以外にいるわけがないじゃないですか。
妊娠に気づいたことで、病に罹ったことにして結婚の話はなくなりました。マローネの兄夫婦が自分たちの子供として籍に入れると言い、マローネの義姉は妊娠を装って屋敷から出ませんでした。やがて産まれたのが女の子。私の母ですね。兄夫婦の末っ子として育てられました。マローネも一緒に暮らしていましたが、産後体調が悪いまま戻らなくて、母を産んで1年後に亡くなりました。」
「では、セレーネは私の孫、ということか?」
「そうですよ、クソジジイ。あなたが存在すら知らなかった母も5年前に亡くなりました。」
母はパルフェ伯爵の後妻だった。母に惚れた伯爵が強引に娶ったのだ。
「どうして言ってくれなかったんだ。私の血縁はセレーネだけだ。私と結婚しなくても公爵家はお前のものじゃないか。」
「どうして?って、どうやって証明するのです?私が名乗り出れば、他にも名乗り出る人が出てきますよ?嘘と真実をどうやって判断するのですか。祖母であるマローネが嘘をついたんだと罵られるかもしれない。自分の子供として籍に入れた大伯父や伯父たちも非難されるかもしれない。誰も巻き込みたくないから黙っていました。
だけど、あなたは私を妻に選んだ。だったら結婚後に暴露してやろうと思ったんです。若い小娘を孕ませようとしている好色ジジイに、孫を抱く気ですか?って。」
そう。暴露して妻を抱けないと知ったクソジジイを嘲笑ってやるつもりだった。
だけどその前に、クソジジイは私の内面がマローネと違うことで興味を失ったようだった。
412
お気に入りに追加
1,143
あなたにおすすめの小説


初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました
山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。
だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。
なろうにも投稿しています。

もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました
柚木ゆず
恋愛
《もうすぐアンナに婚約の破棄を宣告できるようになる。そうしたらいつでも会えるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ》
最近お忙しく、めっきり会えなくなってしまった婚約者のロマニ様。そんなロマニ様から届いた私アンナへのお手紙には、そういった内容が記されていました。
そのため、詳しいお話を伺うべくレルザー侯爵邸に――ロマニ様のもとへ向かおうとしていた、そんな時でした。ロマニ様の双子の弟であるダヴィッド様が突然ご来訪され、予想だにしなかったことを仰られ始めたのでした。

〖完結〗旦那様が私を殺そうとしました。
藍川みいな
恋愛
私は今、この世でたった一人の愛する旦那様に殺されそうになっている。いや……もう私は殺されるだろう。
どうして、こんなことになってしまったんだろう……。
私はただ、旦那様を愛していただけなのに……。
そして私は旦那様の手で、首を絞められ意識を手放した……
はずだった。
目を覚ますと、何故か15歳の姿に戻っていた。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全11話で完結になります。

結婚式をボイコットした王女
椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。
しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。
※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※
1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。
1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)

【完結80万pt感謝】不貞をしても婚約破棄されたくない美男子たちはどうするべきなのか?
宇水涼麻
恋愛
高位貴族令息である三人の美男子たちは学園内で一人の男爵令嬢に侍っている。
そんな彼らが卒業式の前日に家に戻ると父親から衝撃的な話をされた。
婚約者から婚約を破棄され、第一後継者から降ろされるというのだ。
彼らは慌てて学園へ戻り、学生寮の食堂内で各々の婚約者を探す。
婚約者を前に彼らはどうするのだろうか?
短編になる予定です。
たくさんのご感想をいただきましてありがとうございます!
【ネタバレ】マークをつけ忘れているものがあります。
ご感想をお読みになる時にはお気をつけください。すみません。

公爵令嬢は運命の相手を間違える
あおくん
恋愛
エリーナ公爵令嬢は、幼い頃に決められた婚約者であるアルベルト王子殿下と仲睦まじく過ごしていた。
だが、学園へ通うようになるとアルベルト王子に一人の令嬢が近づくようになる。
アルベルト王子を誑し込もうとする令嬢と、そんな令嬢を許すアルベルト王子にエリーナは自分の心が離れていくのを感じた。
だがエリーナは既に次期王妃の座が確約している状態。
今更婚約を解消することなど出来るはずもなく、そんなエリーナは女に現を抜かすアルベルト王子の代わりに帝王学を学び始める。
そんなエリーナの前に一人の男性が現れた。
そんな感じのお話です。

【完結】やってしまいましたわね、あの方たち
玲羅
恋愛
グランディエネ・フラントールはかつてないほど怒っていた。理由は目の前で繰り広げられている、この国の第3王女による従兄への婚約破棄。
蒼氷の魔女と噂されるグランディエネの足元からピキピキと音を立てて豪奢な王宮の夜会会場が凍りついていく。
王家の夜会で繰り広げられた、婚約破棄の傍観者のカップルの会話です。主人公が婚約破棄に関わることはありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる