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しおりを挟む葬儀を終え、遺言執行者に任命されていた代理人によって遺言書が公開された。
ものすごく遠い親戚は、オズワルドの父親の妹の身内になる。
オズワルドの父の妹の子供はオズワルドの従妹にあたるが既に他界しており、その従妹の子供とその子供たちが来ているといった状態だ。
オズワルドからしてみればものすごく遠い親戚とまではいかないが、セレーネの歳からしてみればオズワルドの従妹の孫と同年代なのだ。ものすごく遠い親戚に思えたのは仕方がない。
そんな連中が集まっていたが、当然、何一つ譲られるものなどなかった。
『セレーネ及びセレーネが産んだ子供にのみ公爵家の全権と財産を渡す』
そう記されていたからだ。
『但し、セレーネが望まない子供を産んだ場合はその子供に財産の権利はない』
つまり、セレーネの子供であっても無理やり産まされた子供であった場合は、衣食住は保障されても持参金等を公爵家からは出せないということになる。
金を引き出す金蔓としてセレーネを妊娠させても無意味ということだ。
当然、ものすごく遠い親戚たちは喚きだした。
「セレーネというこの女は公爵を騙して妻の地位についたんだ!」
「たとえそうだとしてもセレーネ様の権利は変わりません。」
代理人は淡々と答える。
「この女が産んだ子供が公爵の子供ではないとしてもか?」
「……たとえそうだとしてもセレーネ様の権利は変わりません。セレーネ様は正式に公爵家の籍に入っておられますので。」
代理人の答えに親戚たちは驚いた。
「この女は公爵家の養子になっているのか?再婚した場合はどうなる?」
「再婚なされてもセレーネ様の権利は変わりません。セレーネ様に全権が渡されており、それはジェラルド様あるいは新たにお生まれになるお子様のどちらかが正式に公爵家を継がれるまで変わりません。
敢えてお伝えしておきますが、セレーネ様方に何か不慮の事態が起こった場合でも、あなた方に爵位や財産が回ることはございません。今後一切、親戚と名乗ることも許されておりませんのでご了承ください。」
セレーネたちにもしものことがあれば、公爵領は国に管理されることになっているのだ。
ものすごく遠い親戚一同は、これ以上あがいても心証を悪くするだけだし脅せば騎士に突き出すと言われて、渋々帰って行った。
「モックスさん、ありがとうございました。」
セレーネは親戚一同を追い出してくれた代理人モックスにお礼を述べた。
「いえいえ。慣れておりますからね。いくら怒鳴っても脅しても貰えるものなどない者に限って似たようなことをするのですよ。故人が存命中に交流があったのかと言えば口ごもるような親戚がほとんどですね。」
あのものすごく遠い親戚たちは気づいたのだろうか?
それともセレーネから権限を奪うために口から出まかせを言ったのだろうか?
『この女が産んだ子供が公爵の子供ではないとしてもか?』
そう言われた時、少しドキッとした。
その通りだから。
セレーネが産んだジェラルドもお腹の中にいる子供も、オズワルド・ラモン公爵の子供ではないのだから。
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