上 下
20 / 20

20.

しおりを挟む
 
 
夜会の日以降、私と旦那様は夫婦の寝室を使うようになりましたわ。

ええ。ようやく夫婦です。同居人でも友人でも兄妹でもなく、夫婦。

何だかもう一度結婚した気分になりましたわ。

お義父様とお義母様は本当に旦那様とやり直し、いえ、新たに夫婦として始めていいのかと真剣に聞かれましたが、戻ってきてからの旦那様に不快な言動はありませんし、元々期待しておりませんでしたので問題ありませんわ。



そしてエルビスが3歳の誕生日を迎えてすぐ、私は妊娠していることがわかりました。

旦那様はご自分が望んでいたにも関わらず、狼狽え始めましたのよ?


「リア、ベッドで寝ていなきゃダメなんじゃないのか?僕が運んで行こう。」

「リア、階段を降りて来たのか?危ない。部屋を1階にしないと。」

「リア、エルビスを膝に乗せるのは負担になるからよくない。」


毎日毎日、口うるさくて困ります。


「旦那様はご存知ありませんでしたが、妊娠は2回目ですので大丈夫ですわ。妊娠は病気ではありませんので過剰な心配をされると逆に気持ちが疲れてしまいます。
旦那様は騎士をされている時に、街で妊婦をご覧になったことはありませんか?私は妊婦が腕に1歳くらいの子供を抱いて更に3歳くらいの子供の手を引いて歩いているところを見たことがありますの。さすがに3歳のエルビスを抱いて歩くことは致しませんが、まだお腹がせり出していない今は膝に乗せるくらい平気ですわ。」


ちょっと嫌みたらしく言ってしまったかしら。落ち込んでしまわれたわ。
だけど心配ばかりして喜んでくれないから。


「旦那様、私、まだ聞いていませんわ。娘かどうかは産まれるまでわかりませんが、もう一人子供が欲しかったのではなかったのですか?旦那様の子供を身籠った私に言う言葉はありませんか?」


ハッとした顔で旦那様は私を見たわ。
 

「嬉しい。子供ができて。身籠ってくれて。ありがとう。ごめん。不安になりすぎた。」


私は手を広げました。旦那様は気づいて抱きしめてくれます。
妊娠がわかって以来、心配するばかりで旦那様は触れてくれませんでした。
 

「こうして抱きしめ合うと安心しませんか?私は旦那様に抱きしめられると安心します。
左程日常は変わりませんよ。いつもより少し意識して行動するだけです。多少コケたところで手のひらと膝を打つくらいですし。足のリハビリでは何度もコケましたのでコケ方も上手いと思っていますし。お腹の子というのは意外と強いそうですよ?
もっと気を楽にして、産まれてきてくれるまでの時間も楽しみましょう?」

「……うん。そうだな。リアを抱きしめて落ち着いたよ。」


旦那様は心配性なのですね。不安にさせないように少しは私も安心できるように協力しましょう。
 



そして産み月となり、産まれたのは旦那様ご希望の女の子でした。良かったわ。
女の子でなければ、もう一人産むことになっていたかもしれません。
女の子の名前や服を準備してくださっていましたからね。……本当に良かった。




いつの間にか旦那様に愛され、子供も2人。義両親とも仲良く幸せな毎日。

元婚約者に未練タラタラだという方との結婚のお話をいただいた時はどうなることかと思った結婚でしたが、結果的には上手くいきました。

私が旦那様のことを『もういらないんだけど?』と思っていたあの時期に元婚約者のロザリーさんが問題を起こしてくれて良かったですね?

でないと、旦那様は平民になっていたことでしょうから。

そう考えると、旦那様は運のいい方なのでしょうかね?
 
一度結婚を諦めた私も運がいいと思います。今がとても幸せですから。


<終わり>


 


 
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

私の婚約者は、妹を選ぶ。

❄️冬は つとめて
恋愛
【本編完結】私の婚約者は、妹に会うために家に訪れる。 【ほか】続きです。

君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。

みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。 マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。 そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。 ※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

初恋を奪われたなら

豆狸
恋愛
「帝国との関係を重視する父上と母上でも、さすがに三度目となっては庇うまい。死神令嬢を未来の王妃にするわけにはいかない。私は、君との婚約を破棄するッ!」

形だけの妻ですので

hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。 相手は伯爵令嬢のアリアナ。 栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。 形だけの妻である私は黙認を強制されるが……

王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。 これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。 しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。 それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。 事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。 妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。 故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。

もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました

柚木ゆず
恋愛
《もうすぐアンナに婚約の破棄を宣告できるようになる。そうしたらいつでも会えるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ》  最近お忙しく、めっきり会えなくなってしまった婚約者のロマニ様。そんなロマニ様から届いた私アンナへのお手紙には、そういった内容が記されていました。  そのため、詳しいお話を伺うべくレルザー侯爵邸に――ロマニ様のもとへ向かおうとしていた、そんな時でした。ロマニ様の双子の弟であるダヴィッド様が突然ご来訪され、予想だにしなかったことを仰られ始めたのでした。

処理中です...