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7.
しおりを挟むグレッグが確認するように聞いてきた。
「お前、サルボア公爵に歯向かってまで彼女を守る気なのか?それとも別れる気はあるのか?
今のままでは、お前は少しヤバい立場だ。彼女がお前の愛人だと知っている者は他にいるか?」
「……妻と、おそらく父も。それから、ロザリーに再会した時にエリックと巡回していた。エリックはロザリーの特徴に気づいていた。」
「エリックか。わかった。で?別れるのであれば案がある。それに乗るのならお前の体面は守られるだろう。ただし、上司には経緯は話してもらうことになるが。」
「……ロザリーは何をしたんだ?」
グレッグは呆れたようにため息をついた。
「それを聞かなきゃ別れる判断がつかないのか?自分の体面より彼女をとるのか?
平民がサルボア公爵の怒りを買っているんだぞ?お前が愛人として一緒に責任を負う気があるなら構わない。ただし、彼女を匿った罪で騎士は首だし伯爵家も非難される覚悟があるってことでいいか?」
そうだ。ロザリーが何をしたかということの中身は関係ない。公爵を怒らせた平民を捜索させている事実があるのだ。例え、何らかの誤解によるものだったとしても、ロザリー側につくということは貴族として致命的になる。
ロザリーか貴族か。悩んでいた結論がここで出た。出さざるを得なかった。
「……悪かった。グレッグの案に乗る。僕はどうしたらいい?」
僕は貴族であることを選び、ロザリーを見捨てる。
「ちょっと来い。」
グレッグに連れられて、ホールの端で大方の話を聞いた。
ロザリーはサルボア公爵令嬢の婚約者の令息と関係を持った。
高級宿での事後、令息は婚約者のサルボア公爵令嬢に出会ってしまったらしい。
婚約者の令息はサルボア公爵令嬢に謝ったが、ロザリーが公爵令嬢の怒りに火をつけた。
『手取り足取り閨事について教えて差し上げたので感謝してくださいね?あなたの婚約者は私のような豊満な胸がお好きなようですよ。柔らかさに夢中でなかなか離してくれませんでしたので。あなたのその胸、もう少し育てられた方がよろしいのでは?』
それを聞いた男が慌てて王都の外れにロザリーを捨ててくるように御者に命令した。
『二度と顔を見せるな』とも告げたというが、その後の行方がわからなかった。
つまり、そこに出くわして街に連れ戻したのがアドバスということだ。
屋敷に帰ったサルボア公爵令嬢は、父親である公爵に話をした。
娘が娼婦如きに侮辱されたと公爵は怒り、ロザリーを不敬罪で捕まえようと考えた。
そして騎士団にも捜索指示が出ていたのだ。
一方、婚約者の令息が言うには、娼婦はローズと言い娼館に属している娼婦ではなく人づてに紹介してもらう娼婦だと言うことだった。
閨事の経験がない男や自信がない男を相手にしているという触れ込みだった。
希望する男に、このダンスパーティーでローズの姿を見せる。
この時点ではまだ紹介しておらず、ローズでいいかと確認をする。
ローズを見た者はほとんどが紹介を希望する。確かに外見はいいし、胸が魅力的だから。
その後、顔合わせを済ませ、約束の日時と場所を決めるのだ。
1度のパーティーで3人~5人ほど約束するという。
ローズを斡旋しているのは、このダンスパーティーが行われている施設の関係者。
この1年ほどローズはここに住んでいたが、王都の外れに捨てられてからは戻っていなかった。
荷物を取りにも来ていないということは、もう王都にはいないのではないか。
あの程度の不敬罪・侮辱罪では、王都外まで捜索は出来ない。手配書を送る程度だ。
だが、ローズがダンスパーティーに現れるかもしれないと思い、グレッグたちはパーティーにいたという。
そしてローズの顔を知っている関係者から先ほどローズがいたと教えられた。
アドバスの隣に。
ローズと呼ばれていた娼婦は、8日前にアドバスの愛人になったロザリーだったのだ。
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