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しおりを挟む仕事の合間に、ロザリーの様子を見に行った。
ロザリーを住まわせる時に少し纏まった金も渡しておいたが、日用品や食材、外食などで無くなってしまったらしい。
下着しか買えなかったので服を買う金が欲しいと言われて渡したが、それでは数枚しか買えないと言われて再び届けた。
平民の相場は知らないが、渡しすぎた気がすると後で思った。
今回は初期費用として仕方がないが、もし僕が平民になれば同じように渡せないのだ。
そして問題なのが、『パーティーに行きたい』と言われたことだ。
ロザリーは貴族の僕と一緒であれば、貴族が主催のパーティーに行けると思っている。
だが僕には妻がいる。公のパーティーにロザリーは連れて行けない。
そう言うと、ロザリーは『ダンスパーティーがあると聞いたから』と言った。
主催は下位貴族で、未婚か既婚か、貴族か平民かは問わずダンスを楽しむパーティーらしい。
と言っても、平民ならば貴族との縁がある富裕層や愛人が多いのだが。
それならば、と了承した。………了承してしまった。妻ともパーティーなど行ったことがないのに。
だが、ロザリーのことをコッソリ聞いて回るいい機会だと思い直した。
だがその後に言われた言葉に少し引いた。
『ドレス代、くれる?』
ロザリーは平民だ。ドレスを買ったところで使い道はほとんどない。
あぁ、そうか。僕はまだ平民になるかもしれないことを伝えていない。
ロザリーは今、貴族である僕の愛人のような立場のつもりでいるのだ。
しかし、僕が貴族のままロザリーを愛人にすることはできない。ロザリーと関わりがあれば僕は平民になるのだ。
僕が平民になることを告げれば、ロザリーは喜んでくれるだろうか。それとも………
いや、先にパーティーでロザリーの情報を仕入れよう。
そう思い、彼女には貸ドレスにしてくれるように頼んだ。
ロザリーに渡した金は、騎士としての給金を貯めたものからだ。
宿舎で暮らしているため、衣食住にかかった金額は給金から差し引かれている。
妻にプレゼントを贈ったこともないため、そこそこはあるが。
もし、ロザリーが貴族時代に着ていたようなドレスを望めば、貯めた給金はすっからかんになる。
平民になる可能性もあるため、貯金は残しておきたかった。
ロザリーは貸ドレスと金額の指定に不満そうだったが、自由になる金が少ないことを話して納得してもらった。
『まぁ、貸ドレスでもダンスで目立てばいいわよね』
……目立つようなドレスを着るつもりだったのか?
というか、ロザリーが駆け落ちしたということを知っている人も来るかもしれないんだぞ?
そこは気にしないのか?目立っていいのか?
あれ?ロザリーが目立てば、一緒に行く僕も目立たないか?
元婚約者同士だぞ?僕は妻がいるんだぞ?ロザリーのことは絶対に愛人だと思われるよな。
離婚するのなら、問題ないか?その時は貴族でもなくなっているし。
あぁ………自分の気持ちが貴族かロザリーかで定まっていないから、自分がどう動けば問題行動にならないのかがわからない。
いや、ロザリーと会い続けると平民になることは確実なのだ。
今の自分の行動は、平民一直線に向かっているんじゃないのか?
それでいいのか?……覚悟が決まっていないのに2人で出かけるのは間違いな気がしたきた。
アドバスは頭を抱えたが、今更ダンスパーティーには行かないと言えなかった。
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