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「ロザリア、離婚してほしい。」

「お断りいたします。」


結婚してから3年間、何度も繰り返してきたお互いの言葉。繰り返したといっても15回目かしら?

離婚を言われる回数=旦那様と結婚後に顔を合わせた回数なんですけどね。


いつもならここで終わり、旦那様は逃げるように仕事に向かう。

だけど、今日は違いました。


「君には本当に申し訳ないと思っている。だが、僕の愛する人が帰ってきた。再会してしまったんだ。」

「……お一人で?」

「ああ。どうやら駆け落ちした相手の男とは別れたらしい。浮気ばかりでつらい暮らしをしていたそうだ。
今度こそ僕が幸せにしてやりたい。だから頼む。離婚してくれ。」


旦那様は私に向かって頭を下げられました。

ねぇ、旦那様。あなたは気づいているかしら。

今日は結婚記念日なのよ?これは偶然?偶然なのよね。

結婚して3年経ったということは、白い結婚であれば婚姻無効が成立する日。

白い結婚だったらね?

私たち、違うからね?

旦那様、初夜で酔った勢いで私を抱いたからね?

翌朝、腕の中にいる私を見て嫌な物に触ったみたいに『うわぁっ』って言ったの忘れてないからね?

その直後に1回目の『離婚してほしい』って言葉、あり得ないからね?


もう純潔じゃないから白い結婚は成立しないわ。 

離婚?正直言って、旦那様のことはもういらないから離婚してもいいのよ?


だけど、駆け落ちした元婚約者と再婚するって正気? 

お義父様とお義母様が許すと思う?

社交界が彼女を受け入れてくれると思う?


お義父様はさすがね。旦那様が言いそうなことをちゃんと把握していたのね。

預かっていた届け出する書類はこの部屋にあるわ。
いつもなら義両親と朝食をとっている時に離婚話を言いに来るけれど、今回は私の部屋だったから。

さすがに、両親の前で元婚約者と再婚したいと言う前に、私との離婚を確実なものにしたいと考える頭はあったようね。

まぁ、お義父様はその行動を読んでいたってことだけど。
 
 

私はお義父様から渡されていた書類を取りに立ち上がり、窓の近くにある机の引き出しを開けた。

その時、旦那様が呟いた。


「その、髪の色……」


色がどうしたの?今までも見ていたでしょ?……あぁ、光が当たって違って見えたのね。
私の髪は太陽光や照明の光に当たると違って見えるらしいから。

初夜以降、ほとんど顔も合わせたことがないから知らなかったのね。

そんなに眉をひそめるほど嫌な色かしら?失礼な人ね。綺麗って言われることの方が多いわよ?


旦那様の前に戻って、紙を差し出した。


「離婚届を準備していたの……か?……はぁ?こ、これは貴族籍の除籍届じゃないか!
え……証人欄に父の名前がある。僕がサインするのか?あ、違うな。君だろう?僕への脅しか?
僕と離婚することになれば、君は平民になるように父から言われてるんだ。
平民になりたくないから離婚はしない。そういうことだろう?
これを見せれば僕が離婚を踏みとどまると思ったのか?だが、申し訳ないが僕は君よりも彼女を選ぶ。
平民として楽に暮らせる慰謝料は払おう。だからサインを………」


これ以上、聞いているのがどうでもよくなって、無作法だけど旦那様の言葉を押しとどめるように手のひらを彼に向けました。

そしてその手のひらをそのまま除籍届のサインをする欄を指示して告げたの。


「こちらにサインをするのは私ではなく旦那様ですわ。」と。  



 

 
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