1 / 20
1.
しおりを挟む「ロザリア、離婚してほしい。」
「お断りいたします。」
結婚してから3年間、何度も繰り返してきたお互いの言葉。繰り返したといっても15回目かしら?
離婚を言われる回数=旦那様と結婚後に顔を合わせた回数なんですけどね。
いつもならここで終わり、旦那様は逃げるように仕事に向かう。
だけど、今日は違いました。
「君には本当に申し訳ないと思っている。だが、僕の愛する人が帰ってきた。再会してしまったんだ。」
「……お一人で?」
「ああ。どうやら駆け落ちした相手の男とは別れたらしい。浮気ばかりでつらい暮らしをしていたそうだ。
今度こそ僕が幸せにしてやりたい。だから頼む。離婚してくれ。」
旦那様は私に向かって頭を下げられました。
ねぇ、旦那様。あなたは気づいているかしら。
今日は結婚記念日なのよ?これは偶然?偶然なのよね。
結婚して3年経ったということは、白い結婚であれば婚姻無効が成立する日。
白い結婚だったらね?
私たち、違うからね?
旦那様、初夜で酔った勢いで私を抱いたからね?
翌朝、腕の中にいる私を見て嫌な物に触ったみたいに『うわぁっ』って言ったの忘れてないからね?
その直後に1回目の『離婚してほしい』って言葉、あり得ないからね?
もう純潔じゃないから白い結婚は成立しないわ。
離婚?正直言って、旦那様のことはもういらないから離婚してもいいのよ?
だけど、駆け落ちした元婚約者と再婚するって正気?
お義父様とお義母様が許すと思う?
社交界が彼女を受け入れてくれると思う?
お義父様はさすがね。旦那様が言いそうなことをちゃんと把握していたのね。
預かっていた届け出する書類はこの部屋にあるわ。
いつもなら義両親と朝食をとっている時に離婚話を言いに来るけれど、今回は私の部屋だったから。
さすがに、両親の前で元婚約者と再婚したいと言う前に、私との離婚を確実なものにしたいと考える頭はあったようね。
まぁ、お義父様はその行動を読んでいたってことだけど。
私はお義父様から渡されていた書類を取りに立ち上がり、窓の近くにある机の引き出しを開けた。
その時、旦那様が呟いた。
「その、髪の色……」
色がどうしたの?今までも見ていたでしょ?……あぁ、光が当たって違って見えたのね。
私の髪は太陽光や照明の光に当たると違って見えるらしいから。
初夜以降、ほとんど顔も合わせたことがないから知らなかったのね。
そんなに眉をひそめるほど嫌な色かしら?失礼な人ね。綺麗って言われることの方が多いわよ?
旦那様の前に戻って、紙を差し出した。
「離婚届を準備していたの……か?……はぁ?こ、これは貴族籍の除籍届じゃないか!
え……証人欄に父の名前がある。僕がサインするのか?あ、違うな。君だろう?僕への脅しか?
僕と離婚することになれば、君は平民になるように父から言われてるんだ。
平民になりたくないから離婚はしない。そういうことだろう?
これを見せれば僕が離婚を踏みとどまると思ったのか?だが、申し訳ないが僕は君よりも彼女を選ぶ。
平民として楽に暮らせる慰謝料は払おう。だからサインを………」
これ以上、聞いているのがどうでもよくなって、無作法だけど旦那様の言葉を押しとどめるように手のひらを彼に向けました。
そしてその手のひらをそのまま除籍届のサインをする欄を指示して告げたの。
「こちらにサインをするのは私ではなく旦那様ですわ。」と。
438
お気に入りに追加
2,709
あなたにおすすめの小説
【完結】『お姉様に似合うから譲るわ。』そう言う妹は、私に婚約者まで譲ってくれました。
まりぃべる
恋愛
妹は、私にいつもいろいろな物を譲ってくれる。
私に絶対似合うから、と言って。
…て、え?婚約者まで!?
いいのかしら。このままいくと私があの美丈夫と言われている方と結婚となってしまいますよ。
私がその方と結婚するとしたら、妹は無事に誰かと結婚出来るのかしら?
☆★
ごくごく普通の、お話です☆
まりぃべるの世界観ですので、理解して読んで頂けると幸いです。
☆★☆★
全21話です。
出来上がっておりますので、随時更新していきます。
あなたの婚約者は、わたしではなかったのですか?
りこりー
恋愛
公爵令嬢であるオリヴィア・ブリ―ゲルには幼い頃からずっと慕っていた婚約者がいた。
彼の名はジークヴァルト・ハイノ・ヴィルフェルト。
この国の第一王子であり、王太子。
二人は幼い頃から仲が良かった。
しかしオリヴィアは体調を崩してしまう。
過保護な両親に説得され、オリヴィアは暫くの間領地で休養を取ることになった。
ジークと会えなくなり寂しい思いをしてしまうが我慢した。
二か月後、オリヴィアは王都にあるタウンハウスに戻って来る。
学園に復帰すると、大好きだったジークの傍には男爵令嬢の姿があって……。
***** *****
短編の練習作品です。
上手く纏められるか不安ですが、読んで下さりありがとうございます!
エールありがとうございます。励みになります!
hot入り、ありがとうございます!
***** *****
君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。
みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。
マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。
そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。
※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓
他の人を好きになったあなたを、私は愛することができません
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私シーラの婚約者レヴォク第二王子が、伯爵令嬢ソフィーを好きになった。
第三王子ゼロアから聞いていたけど、私はレヴォクを信じてしまった。
その結果レヴォクに協力した国王に冤罪をかけられて、私は婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。
追放された私は他国に行き、数日後ゼロアと再会する。
ゼロアは私を追放した国王を嫌い、国を捨てたようだ。
私はゼロアと新しい生活を送って――元婚約者レヴォクは、後悔することとなる。
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
婚約を破棄したいと言うのなら、私は愛することをやめます
天宮有
恋愛
婚約者のザオードは「婚約を破棄したい」と言うと、私マリーがどんなことでもすると考えている。
家族も命令に従えとしか言わないから、私は愛することをやめて自由に生きることにした。
陛下を捨てた理由
甘糖むい
恋愛
侯爵家の令嬢ジェニエル・フィンガルドには、幼い頃から仲の良い婚約者がいた。数多くの候補者の中でも、ジェニエルは頭一つ抜きんでており、王家に忠実な家臣を父に持つ彼女にとって、セオドール第一王子との結婚は約束されたも同然だった。
年齢差がわずか1歳のジェニエルとセオドールは、幼少期には兄妹のように遊び、成長するにつれて周囲の貴族たちが噂するほどの仲睦まじい関係を築いていた。ジェニエルは自分が王妃になることを信じて疑わなかった。
16歳になると、セオドールは本格的な剣術や戦に赴くようになり、頻繁に会っていた日々は次第に減少し、月に一度会うことができれば幸運という状況になった。ジェニエルは彼のためにハンカチに刺繍をしたり、王妃教育に励んだりと、忙しい日々を送るようになった。いつの間にか、お互いに心から笑い合うこともなくなり、それを悲しむよりも、国の未来について真剣に話し合うようになった。
ジェニエルの努力は実り、20歳でついにセオドールと結婚した。彼女は国で一番の美貌を持ち、才知にも優れ、王妃としての役割を果たすべく尽力した。パーティーでは同性の令嬢たちに憧れられ、異性には称賛される存在となった。
そんな決められた式を終えて3年。
国のよき母であり続けようとしていたジェニエルに一つの噂が立ち始める。
――お世継ぎが生まれないのはジェニエル様に問題があるらしい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる