王太子殿下の子を授かりましたが隠していました

しゃーりん

文字の大きさ
上 下
20 / 27

20.

しおりを挟む
 
 
ウィルベルトがディアンヌを手に入れたい衝動に駆られながらも諦めたのは3度。

1度目は、フランクという婚約者がいると知っているのにディアンヌを好きだと気づいたとき。 

2度目は、フランクではなく彼の父バレットと結婚したと知ったとき。

3度目は、愛妾になることを断られてフランクと再婚したとき。


 
ウィルベルトがディアンヌを知ったのは、学園でのこと。

後に側近となる友人とあまり人が来ない場所で休憩していると、よく近くのベンチに来る2人がいた。
それがディアンヌとフランクだった。

2人は私たちが近くにいることに気づいていなかっただろう。

2人の会話は面白く、友人とよくこっそり笑ったものだった。



例えば、


「ねぇ、フランク。昨日ショックだったことがあるの。
 7歳くらいの時に両親からのプレゼントだと思って部屋に置いていたお人形。
 あれ、実は『悪夢を見る呪いのお人形』だったの。」

「……ディアンヌが髪を梳いたりしていたあの人形のことか?」

「そう。ひどいわよね。」

「何で呪いの人形だと分かったんだ?」

「父がね、10年待ったけど私が悪夢を見た様子がないから返してくれって言ったの。」

「ディアンヌを実験台にしたのか?」
 
「実験台、というか……あのお人形は噂を聞いて父が家に送ってもらったものだったの。
 父は母と一緒に呪いの効果を確かめるつもりだったらしいんだけど、私が勘違いしたらしいの。
 私にくれるプレゼントだと思って、部屋に持って行ったらしいわ。
 それで、両親も私が悪夢を見たら泣いて要らないって持ってくるだろうと思っていたって。
 それから10年よ?10年。昨日、思い出したように言うんだもの。」

「それで渡したのか?」

「渡したわよ。だけど、今朝父が夜中に息苦しくて目が覚めて、そこから寝れなかったって言ってた。
 やっぱり呪いの人形だったって言ってたけど、おかしいわよね?
 『悪夢』を見るお人形なのに、夢どころか寝れなかったんだから。あのお人形に失礼だわ!」


……笑いを堪えるのが大変だった。友人も声を出さずに腹を抱えて隣で笑っている。

怖がるべき話のはずだ。だが、彼女は平気だし観点がズレていて笑える。

呪いなどは信じていないが、実際にあったとしても彼女なら弾き飛ばしそうだと思った。


大体の彼女の話は、思い込みや深く考えずに行動したり買ったり貰ったりして、後で後悔したりクヨクヨしたりすることが多かった。
だが、他人からしてみれば呆れたり笑えたりするようなことだ。


「あーもう。早く家から出たい。」


そう呟いたディアンヌに、


「卒業したら入籍前でもうちに入り浸っていればいいよ。」

 
とフランクが答えたことでウィルベルトはショックを受けた。

この2人が婚約者だということは会話を聞いていれば分かっていた。
だが、2人が結婚することを想像することで、ウィルベルトはようやくディアンヌが好きなのだということに気づいた。
結婚すれば、このフランクがディアンヌを抱くのだ。自分は触れることはできない。

しかも彼らはウィルベルトよりも1歳上。先に大人になる。


ずっと性的なことに興味を持てないために閨の実践教育を受ける気にならなかったのだが、女性を抱きたいと初めて思ったのがディアンヌだったのだ。


 


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

どうして別れるのかと聞かれても。お気の毒な旦那さま、まさかとは思いますが、あなたのようなクズが女性に愛されると信じていらっしゃるのですか?

石河 翠
恋愛
主人公のモニカは、既婚者にばかり声をかけるはしたない女性として有名だ。愛人稼業をしているだとか、天然の毒婦だとか、聞こえてくるのは下品な噂ばかり。社交界での評判も地に落ちている。 ある日モニカは、溺愛のあまり茶会や夜会に妻を一切参加させないことで有名な愛妻家の男性に声をかける。おしどり夫婦の愛の巣に押しかけたモニカは、そこで虐げられている女性を発見する。 彼女が愛妻家として評判の男性の奥方だと気がついたモニカは、彼女を毎日お茶に誘うようになり……。 八方塞がりな状況で抵抗する力を失っていた孤独なヒロインと、彼女に手を差し伸べ広い世界に連れ出したしたたかな年下ヒーローのお話。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID24694748)をお借りしています。

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね

江崎美彩
恋愛
 王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。  幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。 「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」  ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう…… 〜登場人物〜 ミンディ・ハーミング 元気が取り柄の伯爵令嬢。 幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。 ブライアン・ケイリー ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。 天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。 ベリンダ・ケイリー ブライアンの年子の妹。 ミンディとブライアンの良き理解者。 王太子殿下 婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。 『小説家になろう』にも投稿しています

【溺愛のはずが誘拐?】王子様に婚約破棄された令嬢は引きこもりましたが・・・お城の使用人達に可愛がられて楽しく暮らしています!

五月ふう
恋愛
ザルトル国に来てから一ヶ月後のある日。最愛の婚約者サイラス様のお母様が突然家にやってきた。 「シエリさん。あなたとサイラスの婚約は認められないわ・・・!すぐに荷物をまとめてここから出ていって頂戴!」 「え・・・と・・・。」 私の名前はシエリ・ウォルターン。17歳。デンバー国伯爵家の一人娘だ。一ヶ月前からサイラス様と共に暮らし始め幸せに暮していたのだが・・・。 「わかったかしら?!ほら、早く荷物をまとめて出ていって頂戴!」 義母様に詰め寄られて、思わずうなずきそうになってしまう。 「な・・・なぜですか・・・?」 両手をぎゅっと握り締めて、義母様に尋ねた。 「リングイット家は側近として代々ザルトル王家を支えてきたのよ。貴方のようなスキャンダラスな子をお嫁さんにするわけにはいかないの!!婚約破棄は決定事項です!」 彼女はそう言って、私を家から追い出してしまった。ちょうどサイラス様は行方不明の王子を探して、家を留守にしている。 どうしよう・・・ 家を失った私は、サイラス様を追いかけて隣町に向かったのだがーーー。 この作品は【王子様に婚約破棄された令嬢は引きこもりましたが・・・お城の使用人達に可愛がられて楽しく暮らしています!】のスピンオフ作品です。 この作品だけでもお楽しみいただけますが、気になる方は是非上記の作品を手にとってみてください。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました

四折 柊
恋愛
 子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

処理中です...