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しおりを挟むウィルベルトがディアンヌを手に入れたい衝動に駆られながらも諦めたのは3度。
1度目は、フランクという婚約者がいると知っているのにディアンヌを好きだと気づいたとき。
2度目は、フランクではなく彼の父バレットと結婚したと知ったとき。
3度目は、愛妾になることを断られてフランクと再婚したとき。
ウィルベルトがディアンヌを知ったのは、学園でのこと。
後に側近となる友人とあまり人が来ない場所で休憩していると、よく近くのベンチに来る2人がいた。
それがディアンヌとフランクだった。
2人は私たちが近くにいることに気づいていなかっただろう。
2人の会話は面白く、友人とよくこっそり笑ったものだった。
例えば、
「ねぇ、フランク。昨日ショックだったことがあるの。
7歳くらいの時に両親からのプレゼントだと思って部屋に置いていたお人形。
あれ、実は『悪夢を見る呪いのお人形』だったの。」
「……ディアンヌが髪を梳いたりしていたあの人形のことか?」
「そう。ひどいわよね。」
「何で呪いの人形だと分かったんだ?」
「父がね、10年待ったけど私が悪夢を見た様子がないから返してくれって言ったの。」
「ディアンヌを実験台にしたのか?」
「実験台、というか……あのお人形は噂を聞いて父が家に送ってもらったものだったの。
父は母と一緒に呪いの効果を確かめるつもりだったらしいんだけど、私が勘違いしたらしいの。
私にくれるプレゼントだと思って、部屋に持って行ったらしいわ。
それで、両親も私が悪夢を見たら泣いて要らないって持ってくるだろうと思っていたって。
それから10年よ?10年。昨日、思い出したように言うんだもの。」
「それで渡したのか?」
「渡したわよ。だけど、今朝父が夜中に息苦しくて目が覚めて、そこから寝れなかったって言ってた。
やっぱり呪いの人形だったって言ってたけど、おかしいわよね?
『悪夢』を見るお人形なのに、夢どころか寝れなかったんだから。あのお人形に失礼だわ!」
……笑いを堪えるのが大変だった。友人も声を出さずに腹を抱えて隣で笑っている。
怖がるべき話のはずだ。だが、彼女は平気だし観点がズレていて笑える。
呪いなどは信じていないが、実際にあったとしても彼女なら弾き飛ばしそうだと思った。
大体の彼女の話は、思い込みや深く考えずに行動したり買ったり貰ったりして、後で後悔したりクヨクヨしたりすることが多かった。
だが、他人からしてみれば呆れたり笑えたりするようなことだ。
「あーもう。早く家から出たい。」
そう呟いたディアンヌに、
「卒業したら入籍前でもうちに入り浸っていればいいよ。」
とフランクが答えたことでウィルベルトはショックを受けた。
この2人が婚約者だということは会話を聞いていれば分かっていた。
だが、2人が結婚することを想像することで、ウィルベルトはようやくディアンヌが好きなのだということに気づいた。
結婚すれば、このフランクがディアンヌを抱くのだ。自分は触れることはできない。
しかも彼らはウィルベルトよりも1歳上。先に大人になる。
ずっと性的なことに興味を持てないために閨の実践教育を受ける気にならなかったのだが、女性を抱きたいと初めて思ったのがディアンヌだったのだ。
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