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しおりを挟むここからはフランクとも一緒に話をしたいと、ウィルベルト王太子殿下は別室で待機していたフランクを連れて来るように侍従に伝えた。
「ディアンヌは以前と変わらず美しいね。
それに、相変わらずズバズバと思っていることを口にする。好ましく思ったままだ。」
「ありがとうございます……?ではなく、申し訳ございません。かしら。」
「ははっ。構わない。……だがあのままあなたがいてくれれば、と何度も思ったよ。」
「いいえ、私には向いていません。ただあなたを後宮で待つだけの暮らしは。」
「……そうだな。閉じ込めても逃げ出してそうだ。」
……そうかも。
フランクが連れて来られて、3人で話を続けた。
「デルード伯爵、私の子と知りながらルドルフを育ててくれたことは感謝する。
だが、知った以上、あの子は王族としてここで育てていきたい。」
「あの子はどういう扱いになるのでしょうか。」
「先ほど、ディアンヌ夫人にも話したが、オリアナは隣国に嫁ぐことになると思う。
実は体質なのか、水が合わないんだ。
キャサリンの食事や飲み物は、我々が普通に使う水ではなく隣国と同じ水脈から運んでいる。
2日ほどならうちの水でも大丈夫だが、それ以上は体調を崩す。
オリアナも、キャサリンほどではないが似た体質なんだ。
彼女たちは隣国で暮らすことを望んでいる。」
水が合わないって、本当にそのままの意味だったのね。
この国に馴染めないってことかと思っていたわ。
調査した結果、我が国でも隣国に近い領地は隣国と同じ水脈のようだった。
そして王都から1日半のところがその水脈の境目で、そこから毎日水を運んで来ているそうだ。
「ということは、ルドルフを殿下の次の後継者にと考えておられるということでしょうか。」
「ああ。もちろん、素質を確かめてからのことになるが、教育は充分に間に合う年齢だ。」
「そうですか。もう決定事項なのですね。」
「すまないが、そうだ。もう王宮内ではいろいろと動き始めている。
それと、デルード家の跡継ぎがいなくなる件なのだが、あなたたち夫婦に子はいない。
養子をとるにしても、親戚もかなり遠縁をあたることになる。
となると、伯爵に期待するしかない。が………失礼だが伯爵には子種があるのか?」
ウィルベルトの問いかけに驚いた。
「ルドルフが私の子供だと伯爵は知っていた。
あれだけ私に似ていれば、いつか王家の耳にも入ることは想像できる。
そうなった時、跡継ぎがいなくなる可能性を考えたはずだ。
なのに、他に子供はいない。
考えられることは、伯爵に子種がないかディアンヌ夫人と閨を共にしていないか、だと思った。
仮に伯爵に愛人がいたとしても、その愛人にも産ませていない。
ということは、伯爵に子種がないか愛人が産めないか。
それを婚約中から知っていたから、ディアンヌ夫人は跡継ぎのために前伯爵と結婚することにした。
だが、前伯爵は急な事故で、ディアンヌ夫人が妊娠する前に亡くなってしまった。
あくまでも私の想像だ。失礼なことを言ったな。」
「……いえ。大きく外れてはいません。
確かに、私の愛人は子供を産めません。
ディアンヌは婚約中から私たちの仲を認めてくれていました。
なので、子供を産むために父と結婚しました。
ディアンヌと私の結婚後、妊娠がわかった時も殿下の子供だとわかっていました。
私とディアンヌは閨を共にしたことがありませんので。」
ウィルベルトに実情に近いことを言い当てられてしまい、フランクは正直に話した。
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