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ベルーナが王都にいないということをラミレスが気づいたのは、ベルーナが婚約者候補から外された3日後だった。

学園に来ないベルーナを心配して、来ないでほしいと言われていた公爵邸までやってきた時だった。


「え?いない?この屋敷に?じゃあ、一体どこにベルーナ嬢はいるんだ?」

「ベルーナお嬢様は領地へとご出発なさっております。」

「領地!?何で?どうしてだ?学園は?」

「学園は既に卒業済でございます。」

「え?卒業試験を受けたのか?もう学園に戻って来ない?」

「はい。そのように伺っております。」


ラミレスは放心状態のまま、いつの間にか馬車に乗って王宮まで戻って来ていた。

どうしてだ?まだ側妃の話をしていないのに。

そうだ!領地まで行って側妃になってくれと頼めばいいんだ。
仕事なんてしなくていい。子供も産まなくていい。側にいてくれるだけでいいのだから。
今度こそ、喜んでくれて笑顔を見せてくれるに違いない!

父上にお願いしに行こう。
もうすぐで1年生が終わり、ひと月の休みがある。
その時にサーキュラ公爵領に行って、ベルーナに告げたいということを。
いっそのこと、先にベルーナを王宮に入れたいと言おう。 


その思いをそのまま、国王陛下に告げた。


「……それは無理だ。ベルーナ嬢に側妃の資格はない。」

「どうしてですか!仕事も跡継ぎも正妃に任せます。側妃ならば問題ないではないですか。」

「……ベルーナ嬢は、結婚した。だから側妃の資格はない。」

「けっこ…ん?結婚?まさか。そんなウソを言わないでください。」

「嘘ではない。サーキュラ公爵から届があった。
 ベルーナ嬢には昔から結婚を約束した相手がいたそうだ。
 病弱でいつまで生きられるかわからない娘の願いを叶えてやりたい。
 そう言われて、認めないわけにはいかない。
 それに、王都の空気は体に合わないらしい。早くここから出たいと毎日泣いていたそうだ。」

「泣いて……王都では暮らせないと……
 結婚を約束した相手……私の婚約者候補だったのに?」

「その相手とは5歳の頃に結婚の約束をしたそうだ。
 10歳になったら正式に婚約を結ぶ予定だった。10歳までは口約束だけだからな。
 だが、その直前にお前が婚約者にしたいと言い出したんだ。
 公爵もベルーナ嬢も辞退を言い続けていただろう?
 王都に住めないベルーナ嬢がお前の婚約者になれるはずがないのだから。
 どうしても納得しないお前のために、この1年間学園に通ったんだ。
 彼女はとっくに卒業認定されていた。
 婚約者候補から外されるのを待っていただけだよ。」


父の呆れたような憐れむような顔を声に、ワザと候補を外すように誘導されたのだと気づいた。


「父上は息子の味方をしてくれなかったということですか?」

「当然だろう?人形のように側にいるだけでいいなんて馬鹿なことを言う息子なんだ。
 ベルーナ嬢の気持ちがお前にあって、だが病弱で正妃は難しいということならば側妃は許した。
 でもそうじゃないだろう?
 彼女の気持ちがお前にないのに縛り付けてどうする?
 泣き暮らし体調を崩す彼女を見て、お前は後悔しないと言えるのか?」

「それは………」


後悔するだろう。それどころか、ベルーナ嬢は私を恨むだろう。
彼女の笑顔が見たいと思っていたのに、それを奪っているのは私か……

彼女は好きな人と結婚した。私は諦めなければならないのだ。


「ベルーナ嬢は誰に嫁いだのですか?」

「……それを教えることはできない。もうお前とは関係ないんだ。未練は捨てろ。」


そうだな。知ってしまうと会いに行きたくなってしまう。

私は……フラれたのだ。
 



 
 


 
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