王太子殿下と婚約しないために。

しゃーりん

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ラミレスは婚約者候補の残り3人にベルーナに言ったことをどう思うか聞いてみた。


「え?ベルーナ様が正妃で何もせず、側妃が仕事も出産もするのですか?」

「いや、この案は私が思っているだけで正式なものではない。
 どう思うかを聞いているだけだ。」

「正直に申し上げますが、それは側妃となる貴族家を馬鹿にしたような案だと思いますよ。
 認められるわけがございません。
 それに、ベルーナ様はそれを良しとされる方だとは思えませんが。」

「……そうなんだよ。人形扱いかって怒られた。ただ、側にいてほしいだけなのに。」


パンジーの公爵家、アネモネの侯爵家は王太子のこの案に対して国王陛下に苦情を申し入れた。 
パンジーとアネモネは同じような反応を示したのだ。


ただ、違ったのはカシアの侯爵家。

ラミレスがカシアにどう思うかを聞いた時、カシアはパンジーとアネモネとは違うことを言った。


「ラミレス殿下、逆ですよ。
 正妃は婚約者候補の中から選ぶのです。仕事はもちろん、跡継ぎを産む正式な妃として。
 ベルーナ様は側妃にするべきなんです。
 ただ側にいてほしいだけならそれが当然ではありませんか?
 正妃の座に据えようとすると、側妃の家は不満に思うことでしょう。
 表に出るのは正妃なのですから。
 いくら、跡継ぎを産むのは側妃と約束されたとしても影のような存在ですもの。
 ベルーナ様を表に出す必要はないではありませんか。
 王宮で大切に囲って、殿下だけがお会いになればいいと思いますよ。
 もちろん、ベルーナ様がそれを望まれるならば。」

「そうか!その案の方が誰からも不満が起こらないだろう。なるほどな。ありがとう。」


ラミレスは、これこそがベルーナが笑顔を見せてくれる案ではないだろうかと期待した。





父である国王陛下に呼び出されたラミレスは、カシアからの提案を認めてもらおうと向かった。


「……お前は婚約者候補たちに何と愚かな提案をしたんだ。」

「あ、ひょっとして側妃に仕事と跡継ぎをという話でしょうか?
 あれは、どう思うかを聞いてみようと思っただけで、正式なものでは……」

「馬鹿者っ!正式だろうと正式でなかろうとお前は国を支えてくれている貴族たちを怒らせたいのか!
 何もしなくていい妃など人形ではないか。
 ベルーナ嬢もサーキュラ公爵もそんな案を喜ぶわけがなかろうがっ!」

「ええ、ベルーナ嬢にも怒られました。
 しかし、カシア嬢が良い提案をしてくれたのです。
 婚約者候補を正妃、ベルーナ嬢を側妃にすると批判がなくなるのではないか、と。
 これならばどうです?」

「……お前は本当にそれで上手くいくと思うのか?」

「これならば文句のつけようがありません。」

「……わかった。ならば、ベルーナ嬢を婚約者候補から外すことに同意しろ。」

「え?どうしてです?」

「正妃にできないものを候補として残すわけにはいかない。そうだろう?」

「…………わかりました。ベルーナ嬢を婚約者候補から外します。」


ラミレスはようやくベルーナを婚約者候補から外すことに同意した。

そのことを、ラミレス以外の者たちが待ち望んでいたこととは知らずに……


 


 
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