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しおりを挟む入学式はそのまま医務室で過ごし、教室にも寄らないまま屋敷に戻った。
そのまま2日間休み、翌日は学園に行くつもりで。
その間に、王太子殿下と婚約者候補たちとの交流日を決めた予定表を受け取った。
基本的には、急用や急病でキャンセルしたとしても別の日に振り替えられることはない。
王太子殿下の17歳の誕生日パーティーで婚約者が発表される。
およそ、その2か月前までには内定されるため、実質的にはあと1年ほどである。
内定後は候補の令嬢との交流はなくなるため。
1対1の交流は3回に1回、1対5の交流は2回に1回、参加するくらいになるだろう。
両親からもそれくらい、もしくはもう少し減らしてもいいと言われた。
家族もベルーナを王族に嫁がせる気は全くない。
入学式以来の学園に行き、初めて教室に入った。
ベルーナの従者が予め座席を把握しており、ベルーナを席まで誘導した。
その間、教室にいたクラスメイトはベルーナに注目しており、誰も口を開かなかった。
「サーキュラ公爵家のベルーナ様ですね?
初めまして。テクス公爵家のパンジーと申します。パンジーと呼んでくださいね。
私は隣の席です。お困りのことがあれば、お聞きくださいね。」
「ありがとうございます。パンジー様。
私のこともベルーナで構いませんわ。
休みがちになりますので、ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いしますね。」
ベルーナがたおやかに微笑むのを見て、クラス中がハッと息を詰めたときに王太子殿下ラミレスがやってきた。
「ベルーナ嬢、今日は来ることができたんだね。待っていたよ。
私が何でも手伝うから。困ったことがあれば、いや、困らなくても頼ってくれ。」
「ありがとうございます。ですが、パンジー様が申し出てくださいました。
私といたしましても、同性のパンジー様の方が言いやすいこともございますので。」
だから、あからさまな態度を取らないでほしいのですが?とは言えないけれど、人前で候補者の誰かを優先することは許されていないってわかってるはずなのにその態度なの?やめてよ、もう!
「殿下、私にお任せください。殿下も公務でお休みされることがあるのですもの。
私の方が適任ですわ。」
「そ、そうだね。頼んだよ。」
ベルーナとパンジーにそう言われては、ラミレスもそれ以上言うことができなかった。
パンジーも婚約者候補の1人。ベルーナと同じように接する必要があるのだから。
ベルーナはパンジーに好印象を抱いた。
彼女もベルーナと同じ公爵令嬢と貴族の中では立場が上の令嬢だが、傲慢さは感じられない。
ラミレスを上手く窘めることもできる。
それに、ベルーナをあからさまに気にかけたラミレスに苛立ちも見せなかったから。
まだ彼女にほんの少し接しただけだが、ベルーナの中ではラミレスの婚約者に合うのではないかと感じた。
あとの令嬢に会ってみないと最終判断は下せないけれど。
ベルーナは4人の候補の中でイチオシを選び、さりげなく後押しする気でいるのだ。
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