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しおりを挟む月日は経ち、ナターシャは学園に入学する。
ルーズベルト様の元婚約者、メリッサ様は卒業されてもうじき結婚される。カールス様は5歳年上なので本当にすぐらしい。ド派手なウエディングドレスなんだろうなぁと少し楽しみにしている。
姉とクレメンス様、ルーズベルト様は最終学年になる。
1年しか一緒に通えないのは寂しいけど、双子の兄ディオルと一緒なので不安はないし、初めて友人になった辺境伯令嬢アンジュ様とも仲良くしている。お茶会で友人も増えた。
兄ディオルの婚約者ユリアーナ様は来年入学だし、アンジュ様の親戚の侯爵令嬢イリアナ様も来年になる。
年上に同級生、年下とこの一年でたくさんの友人ができて嬉しかった。
それでも、あと3年我慢しなければならないという思いが強い。
ナターシャは、貴族令嬢として学園生活を楽しもうとは思っているが、それよりも早く卒業してルーズベルト様と結婚したいと思っていた。
お茶会や夜会などの社交をできる限り減らし、コダック伯爵夫妻に任せて領地へと引っ込みたい。
寂しがるので王都にいる両親や姉、兄とは定期的に会うつもりでいるけれど、8割は領地にいたい。
もちろん、領地では次期伯爵夫人として学ばなければならないことを頑張るつもりでいる。
つまりは、働きたい、動きたい。
じっとしているのが苦手なのだ。
魔力で木を伐採してほしいとか、畑を耕してほしいとか、大規模な水やりとか、そういうことを頼まれる方がナターシャの性に合っていると思っている。
魔獣を倒すのは騎士団の皆様にお願いしたいが、多い魔力を役立てることのできる場所にいたい。
ナターシャのその思いは、ルーズベルト様はもちろん、コダック伯爵夫妻も認めてくれている。
だからこそ、いっそのことルーズベルト様と一緒に卒業してしまいたいと思うほどなのだが、侯爵家の家族が縋るので3年間学園に通うことになった。
ナターシャに会ったことがなかった令息令嬢には平民だったことを好奇心からか見下されたり、嘲笑されたりもしたが、完璧な礼儀作法と魔力の多さ、そして4属性だと知ると、目すら合わせなくなった。
自分どころか、家ごと消されると怯えてのことだった。
「失礼だと思わない?それこそ、高飛車で傲慢な侯爵令嬢って噂がまた回ってしまいそう。」
ナターシャは何もしていないのだ。彼らが勝手に近寄ってきて的外れな思い違いを吐き出してただけなのに、今度は勝手に怯えて逃げ惑うのだから。
「大丈夫だよ。ナターシャが相手しないとわかれば、彼らも落ち着くさ。それでもまた調子に乗るようなら、ご両親に報告すれば簡単だよ。」
ルーズベルト様は何かを払うような仕草をした。
つまり、彼らを学園から追い出す、あるいは、家ごと消すということらしい。
まぁ、確かに?
彼らのような貴族が領主になれば、領民は腹が立つかもしれない。
以前、ユリアーナ様がどこかの令嬢に言ったように、領主への不満から暴動を起こされることになりかねないのだ。
「お父様たちが手を下す必要はないけれど、領民が可哀想だから忠告はしてもいいかも。」
自分たちが貴族でいられるのは平民たちの頑張りのお陰なのだ。平民は見下していい存在ではないという忠告を受け止めることができれば、彼らは変わるだろう。
「ナターシャは優しいね。領民に被害が出ないことを先に考える。貴族らしい考えだと、平民が限界ギリギリになるまで待つか、暴動を煽って領主を挿げ替えさせる。なかなか他領地のことには口出しできないからね。」
本当に、貴族って面倒。
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