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しおりを挟むお茶会で出会った賢い令嬢は、カルーセル公爵令嬢のユリアーナ様で1歳下だった。
ナターシャがお茶会の話を家族にしていると、兄ディオルが言った。
「ユリアーナ嬢の婚約者がまだ決まっていないのなら、ゆっくり話してみたいな。」と。
ディオルはお茶会や学園に入ってから自分の目で見て婚約者を選びたいと言っていた。
ディオルはカーマイン侯爵家の跡継ぎのため申し込みは多いが、しばらく縁談は断っているのだという。
そのディオルが興味を示したので、家族で驚いた。
「カルーセル公爵家は昨年息子が誕生したから、ユリアーナ嬢は跡継ぎではなくなったはずだ。
年齢のつり合う王子もいないし、婚約者ができたとはまだ耳にしていないな。」
「そうね。婚約前提としてではなく、一度お誘いしてみるのもいいかもしれないわね。」
「ナターシャが『兄と3人でどうですか?』ってお誘いしたらどう?察してくれるわ。」
姉ジェシカにそう言われて、なるほどな、と思った。
兄に誘われると期待、あるいは警戒するかもしれないが、ナターシャも一緒なら周りにも言い訳が立つ。
お茶会では一対一で話したくとも、すぐに邪魔が入りお互いを深く知ることは難しい。
貴族とは本当に面倒なやり取りを経なければ、男女がゆっくりと話す機会は難しいのだ。
ナターシャは、ルーズベルトと婚約していなければ、自分が一目惚れされるとは思えないので、両親の勧める縁談を嫌々受けていたのだろうなぁと思った。
ユリアーナ様をお呼びして、兄と3人でお茶を飲む。
このお茶会の意図をユリアーナ様も理解しており、主に兄と会話をしていた。
しかし、段々と領地が~とか、特産が~とか、雇用が~とかという話になっていった。
ナターシャにも平民がどう思うだろうかと視点を聞かれたりして、14歳と13歳にしては会話の内容が間違っている気がすると感じたが、そう思ったのはナターシャだけだったようだ。
ユリアーナ様も少し前まで自分が公爵領を継ぐつもりで学んでこられていたので、令嬢らしい会話よりも領地経営の方に興味があり、兄と意気投合していた。
でも、これでは婚約するような雰囲気ではないかなぁと思ったのだけれど……
兄ディオルとユリアーナ様は双方が婚約を望み、結果、婚約が結ばれることになった。
こういう婚約もアリ……なのね?
姉ジェシカは、ゲートルード公爵家クレメンス様と婚約しており、将来は公爵夫人になる。
兄ディオルは、カルーセル公爵家ユリアーナ様と婚約し、将来はカーマイン侯爵になる。
ナターシャは、コダック伯爵家ルーズベルト様と婚約しており、将来は伯爵夫人になる。
……失礼だけど、すっごく失礼だけど、ルーズベルト様が伯爵家でよかった。
客観的に見て、姉と比較されると可哀想な妹に思えるかもしれないけれど、侯爵令嬢が伯爵家に嫁ぐことは普通にあることで非難されるような嫁ぎ先ではない。
伯爵位より高すぎると逃げたくなるし、子爵・男爵位だと家格のつり合いが取れなくて両親にも迷惑をかけるところだった。
それに、やっぱり平民として暮らしていたから下位貴族しか貰い手がなかったのだと言われると両親が心を痛めたかもしれない。
ルーズベルト様との婚約は、あの時必死で考えた最善だと思っていたけれど、今となってはこれ以上ない最善だったと思えた。
両想いだし?
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