平民から貴族令嬢に。それはお断りできますか?

しゃーりん

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ナターシャが、街で王弟殿下に会ったと言った。
 
しかも、王弟殿下はわざわざナターシャに会うためにここに来たらしい。

それを聞いて、ルーズベルトは血の気が引くのを感じた。


辺りを見回し、王弟殿下と共に戻ってきたわけではないことを確認した。

王都からコダック伯爵領まで馬車で3日。王弟殿下が馬を走らせたらその半分で着くだろう。

街に着き、コイルが王弟殿下に気づいたことでナターシャも挨拶することになったようだ。


「王弟殿下は今、どこに?」

「……娼館に行くとおっしゃっていました。」

「…………は?」


ナターシャに会いに来て、そのまま娼館???

ナターシャが微妙に元気がない理由はソレと関係あるのか?

ルーズベルトはナターシャの手を引いて、屋敷の玄関近くにある椅子に2人で座った。


「王弟殿下に何を言われたんだ?」

「特には何も。……ただ、成長が見込めない、と。」


意味が分からない。

馬を部下に任せてついてきていたコイルに視線を向けると、代わりに説明してくれた。


「王弟殿下は、ナターシャ様が平民として暮らしていたと聞き、貴族の暮らしが耐えられなければ将来ご自分と国中を回ろうと誘いに来たようですが、ナターシャ様のことを思っていた以上に幼く思われたようです。その、体形的に。
おそらくナターシャ様が妙齢になられても、ご自分の好みには程遠いという意味で、『成長が見込めない』とおっしゃったようでして。」
 

つまり、まだ発展途中と思われるナターシャの胸は、今後もそれほど大きくなる見込みがないと王弟殿下は14歳のナターシャの体形から判断したのだろう。 

ナターシャはそれで落ち込んでいる?

 
「それでも、王弟殿下は、ナターシャ様にどうしたいか確認されましたが、ナターシャ様はきっぱりとお断りされました。それから、貴族が嫌になればいつでも声をかけろとおっしゃってナターシャ様の頭を撫でてから、娼館に向かわれました。……大きな胸は旅の癒しだぁとおっしゃいながら。」


……王弟殿下は巨乳好きらしい。 


「よかった。ナターシャを連れ去る気かと不安になったよ。いきなりで驚いたよな、大丈夫か?」

「……ルーズベルト様は私の胸がこれ以上成長しなくても嫌にならないですか?胸の大きな令嬢がよかったと後悔することはありませんか?」

「え……僕?そもそも胸の大きさで相手を選ぶ気なんてないよ?」


そう言ったけれど、ナターシャは少し考え込んでから言った。


「ルーズベルト様は私のどこがいいのでしょうか?」

「どこ?そうだなぁ。……ナターシャは明るくて元気で、笑顔が可愛くて、一生懸命で前向きだし、こうして素直に聞いてくれるから僕も素直に答えられるし、魔力が必要でも必要でなくても誰かの役に立ちたいと行動できるところがいいと思う。そんなナターシャが僕は大好きだよ。」

 
まだまだ言葉にしきれていないくらい、ナターシャのいいところはたくさんある。

そう思っていると、ナターシャは嬉しそうな笑顔を見せてくれた。


「私もルーズベルト様が大好き。」



ナターシャの言葉に感激していると、周りから拍手が起こった。

いつの間にか、コイル以外にも使用人たちが何人も近くにいたらしい。……祖父母もいた。


「ルーズベルトはいろんなことに無頓着かと思っていたけれど、ナターシャに対してだけはそうでないとわかって嬉しいわ。」


お祖母様、それは言い過ぎでは?ナターシャだけでなく、領地領民のことも気にかけていますよ。
 
 


 
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