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しおりを挟むルーズベルト様の学園後期が終わった後の長期休暇に合わせて、ナターシャも一緒にコダック伯爵領に行くことになった。
お世話になった方々や、前伯爵夫妻にご挨拶がしたかったからである。
残してきた荷物の中にも、育ての親の形見もあったからだ。
侯爵令嬢ナターシャには侍女がついた。
しかし、それはルーズベルト様と結婚するまでの侍女としており、嫁いだ後は、コダック伯爵領の屋敷にいる誰かでいいと思っている。
カーマイン侯爵家とは違い、コダック伯爵家の屋敷ではナターシャは自由に過ごすつもりだからだ。
侯爵家で令嬢付となれる優秀な侍女に付き合わせては、気の毒だろうから。
それでも、もし付いて来たいというのであれば、それもいい。
なので、この機会に一緒についてくる侍女アリシアは令嬢らしくないナターシャを目の当たりにして驚くに違いなかった。
それを両親に報告されたとしても、ナターシャは構わない。
ルーズベルト様との結婚は、解消になることはないのだから。
久しぶりのコダック伯爵領の屋敷。
馬車から降りると久しぶりの顔が並んでいた。
「「「ようこそお越しくださいました、カーマイン侯爵令嬢ナターシャ様。おかえりなさいませ、ルーズベルト様。」」」
そう言いながら、みんなどこか笑っている気がした。
「「「ご婚約、おめでとうございます。」」」
「ありがとうございます。ただいま戻りました。」
ナターシャは少しふざけて挨拶を返した。
『おかえりなさい』という声があちこちから帰ってきた。
やっぱり、ここの屋敷は居心地がいい。貴族らしくかしこまりすぎていない感じがとてもいい。
「ナターシャ様、大旦那様と大奥様がお待ちでございますよ。」
「ナターシャなの?僕は?」
孫であるルーズベルト様よりもナターシャが呼ばれたことに驚いていた。
「もちろん、ルーズベルト様もご一緒で大丈夫だと思いますよ?」
そこは定かではないのね。
サンルームで前伯爵夫妻が待ってくれていた。
「お疲れのところ、ごめんなさいね。2人とも、婚約おめでとう。」
「「ありがとうございます。」」
「大奥様、長らくご無沙汰をしてしまい、申し訳ございませんでした。」
「ナターシャが謝ることではないわ。短い間に状況が変わってしまって大変だったわね。」
「はい。でも、これからも、ちょくちょくこちらに来られることになりました!」
「ふふ。嬉しそうね。私も嬉しいわ。ねぇ、ナターシャ。これからはお祖母様と呼んでくれるかしら?」
「はい!お祖母様、お祖父様も、これからもよろしくお願いいたします。」
無口なお祖父様も、嬉しそうに笑い皺を見せてくれた。
いくら侯爵令嬢だったとわかってもこの間までは平民だったナターシャを、コダック伯爵家のみんなは温かくルーズベルト様の婚約者になったことを喜んでくれた。
今回は、ルーズベルト様と一緒にコダック伯爵領に来たくてワガママを言った。
まだ、カーマイン侯爵領には行っていないのだ。領地には祖父がいるという。
しかし、ナターシャにとっての祖父母はここの2人。先に挨拶に来たかった。
両親の領地にはそれぞれ祖父がいる。祖母はどちらも亡くなったそうだ。
もし祖母が生きていたら、祖父を引きずって王都の屋敷に来ていただろうと両親は苦笑いをしていた。
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