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14年も待っていたのだから、落ち着いてから数日後に会うことになるだろう。

ナターシャはルーズベルト様とそう思っていた。

だけど、それは当事者ではないルーズベルト様と、当事者であってもどこか他人事のナターシャの考えであって、本当に待ち続けていた実の両親にとってはそうではなかったらしいということがその日のうちにわかった。

連れ帰ろうとしていた姉ジェシカの家族なのだ。 

強引で暴走気味だとも認識したはずなのに。

太刀打ちできないと感じたはずなのに。


午前中に姉だと判明したジェシカが、夕方に馬車に乗ってコダック伯爵家にやってきたのだ。

 
「コダック伯爵様、夫人、そしてルーズベルト様。
妹であるナターシャを保護してくださり感謝申し上げます。
両親からも改めて御礼のご挨拶をさせていただきますが、本日は興奮冷めやらぬため私がご挨拶に参りました。
今にもこちらに押しかけてきそうな両親は屋敷に留めております。
そのため、ナターシャを連れて帰りたいと願った次第でございます。よろしいでしょうか?」


いやいや、その『よろしいでしょうか?』に非常に圧を感じるのですけど?
 
伯爵夫妻が反対する理由はとりあえず無いものね。

行くしかない、よね。

多分、今日はここには戻って来れないよね?

今日だけでなく、ずっと、かも? 

ん-。覚悟はしていたけれど、やっぱり寂しいなぁ。

伯爵家が家族みたいなものだったもの。

……侯爵令嬢だとわかる前から平民の自分を可愛がってくれていた伯爵家が変なのだけどね。

どんな結果になろうと、一度は必ずコダック伯爵領を訪れて前伯爵夫妻にもお礼を言わないとね。
 

ナターシャは領地から持ってきていた荷物を簡単に纏めて、姉ジェシカの馬車に乗った。


コダック伯爵夫人は涙ながらに見送ってくれた。



 
馬車の中で、姉は大はしゃぎだった。


「家に戻ってから両親を弟を集めてね、妹を見つけたって報告したの。呆然としていたわ。
ちゃんと魔力を流して確認したって言ったら両親は抱き合って喜んでいたわ。
ナターシャがずっと平民だったことも伝えたし、あなたの希望も伝えた。
もちろん、困惑はしていたけれど、会うのが先だ!って聞かなくてね。」

「まさか、今日とは思いませんでした。」

「ナターシャも少し前に聞いたばかりなのよね。
亡くなった両親が実の両親ではないかもしれないって言われて戸惑ったのに、もう実の両親に会うことになる。おそらくあなたは、私たち家族のことを家族だと思えるには時間がかかるのではないかしら。
でもね、両親は本当に生きてるって信じてこの日を待っていたの。それはわかってね。」

「はい。」

「ディオルの誕生日はあなたの誕生日。いつも一緒にお祝いしていたわ。もうすぐ14歳ね。」

「10月20日、ですか?」

「……いえ、10月22日、よ。」


この2日の差。これが攫われた事実に関係するのかどうか。


「2回、お祝いしてもいいわね。」
 

優しい姉は、今までの誕生日も祝ってくれる気らしい。でも……


「22日だけでいいですよ。」
 

ナターシャはそう言った。

侯爵家の家族は20日を気持ちよく祝えないだろう。

だから20日は、育ててくれた両親との誕生日を一人で思い返すことにする。

 


 
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