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しおりを挟む姉ジェシカに、『今から家に帰りましょう』と言われてナターシャは戸惑った。
どう言えばいいかわからないナターシャに代わり、ルーズベルト様が言ってくれた。
「ジェシカ嬢、今日は妹が見つかったということを持ち帰るだけにしてくれないかな?
クレメンスから聞いたと思うけど、ナターシャが平民のままでいたいことと、娘が見つかったからとお披露目するような晒し者にはされたくないということ、両親だと思っていた育ての親がナターシャを攫ったことに関係していたとしても悪口は聞きたくないということ。 これをご家族にも伝えてほしいんだ。」
そうそう。先に知っておいてほしいわ。改めて自分の口から言うには勇気がいるから。
「見つかったということは徐々に広めることもできるし、晒し者なんかにする気はないわ。
育てのご両親のことも調べてみないことにはわからないけれど、ナターシャが幸せに育ってきたのであれば、あなたの前で非難するようなことは言わない。
だけど、平民でいたいということは難しいと思うわ。一度は家族に戻ってほしい。貴族の暮らしにどうしても我慢できないようであれば、みんなが納得する方法を考えればいいわ。」
それは平民になれる可能性もあるってこと?
「とりあえず、そのことを侯爵家に持ち帰ってくれないかな?
再会したばかりのナターシャが平民のままでいたいと言ったら、侯爵夫妻は反対しかしないだろう?
それではナターシャも息苦しいと思うんだ。検討の余地というか、お互いの妥協点というか、ジェシカ嬢がさっき言ったようにみんなが納得する方法を時間をかけて探すべきだと思う。」
「そうだな。頭ごなしに反対されては、ナターシャは今度は家出するかもしれないよ?」
クレメンス様の言葉は魅力的だった。家出? するならコダック伯爵領に向かうわ!
というか、コダック伯爵領に荷物も置いたままだし。
一度は家族にならなきゃいけないなら、取りに行かせてもらえるかな?みんなに挨拶もしたいし。
もちろん、本当の両親が『見つかってよかった。でも平民でいたいならいいよ』と言ってくれるのであれば、そのままコダック伯爵領で使用人生活を送らせてもらうけど。
「今日はダメなの?ナターシャの部屋はちゃんとあるのよ?」
そうなの?本当に、いつか帰ってくると待っていたんだ。
嬉しい気持ちもあるけれど、やっぱりちょっと複雑。
こちらにしてみれば、『はじめまして』のお貴族様としか思えないし。
家族になるって、そんな簡単なものかな?
「ジェシカ。まずは、侯爵夫妻とディオルに話をしてからだ。」
クレメンス様の言葉に頷いた姉ジェシカにホッとしてまた後日と別れたけれど、まさかその日の夕方に迎えに来られるとは思いもしなかった。
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