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しおりを挟む3日後より1日早い2日後、ナターシャはルーズベルトに言った。
「私が攫われた令嬢なのかどうかは、ちゃんと確かめることにします。
もし、そうであった場合は両親にも会うことになるのでしょうが、貴族になりたくはないと事前に知っておいてほしいです。」
「……うん。わかった。だけど、認めてくれるかどうかは別問題だということもわかってほしい。」
「はい。それと、見つかったからと晒し者にされるのも嫌です。」
「そうだね。それも伝える。だけど、見つかったという事実はどんな形であれ公表されるということは知っておいてほしい。」
「はい。それから、亡くなった両親が子供を攫ったことに関係していたとしても、悪く言われるのは聞きたくありません。」
「わかった。まだ亡くなったご両親と実のご両親との間に関わりがあったかどうかは調査中なんだ。
もしも、どうしてこんなことになったのかわかれば、知りたい?」
両親が亡くなっている以上、どこまで調べられるかはわからない。
けど、生きている関係者がいないとも限らない。
両親を非難されるのは聞きたくないけれど、経緯を知れば、わかることもあるかもしれない。
「そうですね。教えていただけるのでしたら、知りたいです。」
「わかった。他には何かある?」
「爵位は何なんでしょうか。」
「……侯爵家だ。」
侯爵家?!コダック伯爵家よりも上?!それくらい、平民でも知ってるよ?
せめて、コダック伯爵家と同じくらいの貴族の方がよかった。
だって、コダック伯爵家って貴族にしては多分、緩いよね?
ルーズベルト様に伯爵夫妻はもちろん、前伯爵夫妻も優しいし、ナターシャみたいな孤児に使用人も優しいし。
毎日楽しかったよ?
働いて、美味しいもの食べられて、ちょこっと人の役に立てて。
こんな生活をずっと続けたいと思っていたのに。
侯爵家だなんて、絶対に堅苦しいに違いない!
そんなところで貴族の令嬢になんてなったら、息苦しくて逃げちゃうかも。
だからやっぱり平民がいいよね。
今まで通り、コダック伯爵家で働きたいって……今は言えないよね。
「その、姉は何歳なのでしょうか?」
「僕のクラスメイトだよ。16歳だ。」
まさかのクラスメイト!
強制じゃないって言ったのに、やっぱり強制だったんだ!
思わず睨むと、ルーズベルト様はナターシャの思っていることに気づいたのか慌てて言った。
「ジェシカ嬢にはまだ君の話はしていないよ。彼女の婚約者に話したんだ。」
姉はジェシカという名前らしい。
「婚約者?」
「ああ。僕の友人でもあるんだ。ジェシカ嬢が君に会う直前に伝える役目をしてくれる。」
「妹かもしれない子が来るって?」
「うん。前もって話すと、家族中が押し寄せるかもしれないから。」
確かに、それは困る。
「明後日、喫茶店の一部を貸し切って会うことになってるんだ。人払いするから心配ないよ。」
「その婚約者の方の爵位は?」
「……公爵家だ。」
侯爵家より上の公爵家?!
もうダメだ。
粗相をして蔑まれる未来しか見えない。
『妹だと判明しましたが、貴族に相応しくないのでもう会う必要はありません』
姉には家族にそう報告してもらうことにしよう。
ナターシャは自分が逃げられると本気で思っていた。
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