平民から貴族令嬢に。それはお断りできますか?

しゃーりん

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ルーズベルトはクレメンスに、ジェシカ嬢と話がしたいと言った。


「ジェシカと?2人きりで?何の話だ?」
 

ナターシャがジェシカ嬢の妹であっても違っても、クレメンスはジェシカ嬢から話を聞くことになるだろう。
であれば、クレメンスに話しても問題ないと思った。


「コダック伯爵領に、ジェシカ嬢の妹かもしれない女の子がいるんだ。攫われた妹のことは聞いてるか?」

「ああ。生きてくれていると信じて待っている。本当に心当たりが?」

「領地の屋敷でメイドをしている。平民として育ったんだ。」

「どうして気づいた?」

「1年と少し前、母親を亡くしたと保護を求めてきた。ナターシャは魔力が多い。」

「それだけで?それならどうして1年前に言わなかったんだ?」

「父は念のため、ナターシャの身元を調べた。母は元子爵令嬢、父は平民だったんだ。
ひょっとすると、母親が高位貴族の男と不貞したか、襲われたかで生まれたのが彼女ではないかと思った。
その場合、実の父親を捜すのは難しい。だから、沈黙することを選んだ。」


クレメンスはルーズベルトの言葉を咀嚼しているようだった。
話に齟齬がないか、彼は慎重に考えている。
 

「そう思うのは妥当だな。だが、それがどうしてジェシカの妹だと思い当たることになった?」

「この間の長期休暇で領地に帰った時、ナターシャが母に遊ばれて昔の姉のドレスを着て庭のお茶会に現れたんだ。
半年会わないうちにナターシャは身長も伸びて、着飾った姿がとても可愛かった。
その時に髪も編み込まれていて……この間、ジェシカ嬢が似た髪形をしていた。前髪を横に流して。」

「あぁ、そうだな。伸びたからイメージを変えてみたって。」

「それを見て、2人が似ているって思ったんだ。顔の造形はそっくりじゃないけど、雰囲気が。
だから、カーマイン侯爵がナターシャの実父の可能性はあるか、と両親に尋ねた。その時に、侯爵家の攫われた令嬢の話を聞いたんだ。
万が一、血縁でなかった場合は夫人のショックが大きいかもしれないから、ジェシカ嬢に。」

 
クレメンスは再び熟考し始めた。


「ジェシカに姉妹か確かめてもらいたいんだな。話は分かった。だが一つ、疑問がある。」

「何だ?」

「お前は、いや、コダック家はメリッサ嬢と婚約解消して、そのナターシャという子が侯爵家の娘であればお前と婚約させたいと思った。違うか?」

「……そうだ。」

「だから、メリッサ嬢と婚約解消できる情報を探そうとした。本当は婚約解消してからジェシカに会わせるつもりだったんじゃないのか?」


クレメンスは聡い。すぐに思惑に辿り着いた。





 
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