17 / 47
17.
しおりを挟むルーズベルトは屋敷に戻ってからも考えた。
そして考えた結果、やはり一日でも早い方がいいだろうという結論に達した。
「父上、母上。ナターシャを王都に呼びましょう。」
「ナターシャを?なぜだ?」
「ナターシャが両親と思っている2人の調査は、ナターシャがカーマイン侯爵家の娘だと判明してから、カーマイン家が行えばいいと思うのです。大事なのは、ナターシャが娘かどうか。そうではありませんか?」
「それはそうだが、お前の婚約解消の目途が立っていない今、ナターシャがカーマイン家の令嬢だと判明しても婚約に話を持っていくことができなくなるぞ?」
「そのことが、ズルいと思ったのです。自分を身綺麗にしてから話を持っていこうとしていることに。
父上、いつ、どうして気づいたかと聞かれて10日前と言うのと半年前と言うのとでは相手はもっと早く知りたかったと思うはずでは?侯爵夫妻の身になって考えるとそう思いませんか?」
「……それはそうかもしれないが、気づいた日はズラせるだろう?」
「後ろめたく思いませんか?侯爵夫妻にも、ナターシャにも。」
「……貴族には多少の駆け引きは必要なものだ。」
「姑息な手で婚約者になってもらうよりも、誠実に接した方が印象もいいのではないかと思います。」
カーマイン家に引き取られた途端、婚約者を決めるわけでもないだろう。
少なくとも、学園に入学するにもまだ1年以上あるのだ。
やっと戻ってきた娘を簡単に手放すような真似はしないと思う。
「……私もそう思うわ。可能性があると知れば一日でも早く会ってみたいし親子か確かめてみたいと思うものよ。
でも、侯爵夫妻は今までに何人もの女の子と会っているわ。その度に、娘ではないとわかって哀しい思いをしてきているの。万が一、違った場合……」
ほぼ、間違いないとは思う。
ジェシカ嬢と似ているし、魔力の属性は3,あるいは4属性だと父は思っていると聞いた。双子の兄が4属性なのであれば属性が一緒でも不思議ではない。
しかし、万が一の場合はぬか喜びもいいところだろう。
コダック伯爵家を責めることはないだろうが、こちらも申し訳ないと思い続けることになる。
「では、ジェシカ嬢に協力してもらう、というのはどうでしょうか。」
「なるほど。姉妹かどうかを確かめるということか。その方がいいかもしれない。
だがお前は本当にいいのか?婚約解消できる保証もなく、ナターシャとの婚約の打診もできない。
メリッサと結婚することになるかもしれないぞ?」
「……仕方ありません。それでもまずはメリッサ嬢との婚約解消を目指します。その後、ナターシャに婚約を申し込むのが正しい流れなのですから。」
父としては、魔力の多いナターシャを見す見す手放すことになるのが惜しいのだろう。
それもわかるが、平民ではなくなるであろうナターシャは領地でずっと暮らすわけではない。
王都にいてはコダック領まで3日かかるのだ。
父や母、僕と同様に、急を要する即戦力にはなれないのだから。
魔力が多い高位貴族が守るべき領地ではなく王都で暮らし、魔力の少ない下位貴族がほぼ領地で暮らしているというこの矛盾。
だからこそ、魔力を顕現できる平民を保護するという名目で、領地に囲っているのが現状だ。
1,226
お気に入りに追加
2,009
あなたにおすすめの小説
婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?
すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。
人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。
これでは領民が冬を越せない!!
善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。
『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』
と……。
そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。

彼女(ヒロイン)は、バッドエンドが確定している
基本二度寝
恋愛
おそらく彼女(ヒロイン)は記憶持ちだった。
王族が認め、発表した「稀有な能力を覚醒させた」と、『選ばれた平民』。
彼女は侯爵令嬢の婚約者の第二王子と距離が近くなり、噂を立てられるほどになっていた。
しかし、侯爵令嬢はそれに構う余裕はなかった。
侯爵令嬢は、第二王子から急遽開催される夜会に呼び出しを受けた。
とうとう婚約破棄を言い渡されるのだろう。
平民の彼女は第二王子の婚約者から彼を奪いたいのだ。
それが、運命だと信じている。
…穏便に済めば、大事にならないかもしれない。
会場へ向かう馬車の中で侯爵令嬢は息を吐いた。
侯爵令嬢もまた記憶持ちだった。

生命(きみ)を手放す
基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。
平凡な容姿の伯爵令嬢。
妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。
なぜこれが王太子の婚約者なのか。
伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。
※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。
にんにん。
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

私を追い出した結果、飼っていた聖獣は誰にも懐かないようです
天宮有
恋愛
子供の頃、男爵令嬢の私アミリア・ファグトは助けた小犬が聖獣と判明して、飼うことが決まる。
数年後――成長した聖獣は家を守ってくれて、私に一番懐いていた。
そんな私を妬んだ姉ラミダは「聖獣は私が拾って一番懐いている」と吹聴していたようで、姉は侯爵令息ケドスの婚約者になる。
どうやらラミダは聖獣が一番懐いていた私が邪魔なようで、追い出そうと目論んでいたようだ。
家族とゲドスはラミダの嘘を信じて、私を蔑み追い出そうとしていた。

婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。
ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。
こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。
(本編、番外編、完結しました)
妹ばかり見ている婚約者はもういりません
水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。
自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。
そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。
さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。
◆エールありがとうございます!
◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐
◆なろうにも載せ始めました
◇いいね押してくれた方ありがとうございます!

婚約者を奪われた私は、他国で新しい生活を送ります
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルクルは、エドガー王子から婚約破棄を言い渡されてしまう。
聖女を好きにったようで、婚約破棄の理由を全て私のせいにしてきた。
聖女と王子が考えた嘘の言い分を家族は信じ、私に勘当を言い渡す。
平民になった私だけど、問題なく他国で新しい生活を送ることができていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる