上 下
16 / 47

16.

しおりを挟む
 
 
ルーズベルトは、友人クレメンスに一つ上の学年で情報通の男を知らないか、と聞いた。


「情報通か。ひょっとして、メリッサ嬢について聞きたいのか?」

「ああ。できることなら婚約を解消したいと思っている。だけど、向こうのほうが爵位が上なこともあって、何かネタになるようなものはないか探そうと思っているんだ。」 

「そうだよな。お前とは、性格が合わなさそうだもんな。」


クレメンスが苦笑しながらそう言った。メリッサは派手。ルーズベルトは外見に無頓着。
メリッサに勧められたものは着ることは一生ないだろう。
最近は、身長がまだ伸びているのでサイズが変わるということを口実に購入しないでいる。


「じゃあ、彼女の情報を入手するのと同時進行で、彼女の趣味に付き合える男を探すのはどうだ?」

「あ、それいいかも。メリッサと一緒に目立ってくれる男をあてがえばいいんだよな。」
 
「それでもいいし、彼女の趣味を理解してくれる男や、領地で作られたものを流行らせたいから、派手な彼女に身に着けてほしいと思っている男とかもいいんじゃないか?」

 
なるほど。メリッサを広告塔のように扱いたい男というのもいいかもしれない。
となると、商会を持っている貴族もアリだろう。
 
流行は女性が身に着けるかどうかで変わってくる。
母や姉にも協力してもらい、独身男を探すのもいいかもしれない。


「ありがとう。いい意見をもらえて助かったよ。」
 
「いや、情報の方も頼んでおくよ。」


名前を教えてくれれば自分で頼むつもりだったが、ひょっとすると誰に頼むのか知られたくないのかもしれない。
次期公爵ともなると、伯爵家とは比べ物にならないほどの付き合いがあるに違いないのだから。

それでも断ることなく手を差し伸べてくれるのは、友人だからだ。
 

それなのに、クレメンスの婚約者であるジェシカ嬢の妹かもしれないナターシャのことを黙っていることは正しいことだろうか。
ナターシャを王都に呼んでカーマイン侯爵夫妻と会わせれば、経緯はどうあれ、血縁関係の有無を明らかにすることができるのだ。

後ろめたく思うのは、コダック伯爵家のしていることが間違っているからではないか。
調査は必要だろう。
だが、その調査はコダック伯爵家が行わなければならないものというわけではない。

重要なのは、ナターシャがカーマイン侯爵家から攫われた娘であるかどうか、なのだ。
 
それにルーズベルトの婚約を絡めるのは、違う。

ナターシャと一緒にいたい。

それは、姑息なやり方ではなく堂々と向かってこそ報われるもので、後ろめたさを伴えば一生後悔することになるかもしれない。



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

花嫁は忘れたい

基本二度寝
恋愛
術師のもとに訪れたレイアは愛する人を忘れたいと願った。 結婚を控えた身。 だから、結婚式までに愛した相手を忘れたいのだ。 政略結婚なので夫となる人に愛情はない。 結婚後に愛人を家に入れるといった男に愛情が湧こうはずがない。 絶望しか見えない結婚生活だ。 愛した男を思えば逃げ出したくなる。 だから、家のために嫁ぐレイアに希望はいらない。 愛した彼を忘れさせてほしい。 レイアはそう願った。 完結済。 番外アップ済。

これは一周目です。二周目はありません。

基本二度寝
恋愛
壇上から王太子と側近子息達、伯爵令嬢がこちらを見下した。 もう必要ないのにイベントは達成したいようだった。 そこまでストーリーに沿わなくてももう結果は出ているのに。

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした

基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。 その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。 身分の低い者を見下すこともしない。 母国では国民に人気のあった王女だった。 しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。 小国からやってきた王女を見下していた。 極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。 ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。 いや、侍女は『そこにある』のだという。 なにもかけられていないハンガーを指差して。 ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。 「へぇ、あぁそう」 夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。 今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

彼女(ヒロイン)は、バッドエンドが確定している

基本二度寝
恋愛
おそらく彼女(ヒロイン)は記憶持ちだった。 王族が認め、発表した「稀有な能力を覚醒させた」と、『選ばれた平民』。 彼女は侯爵令嬢の婚約者の第二王子と距離が近くなり、噂を立てられるほどになっていた。 しかし、侯爵令嬢はそれに構う余裕はなかった。 侯爵令嬢は、第二王子から急遽開催される夜会に呼び出しを受けた。 とうとう婚約破棄を言い渡されるのだろう。 平民の彼女は第二王子の婚約者から彼を奪いたいのだ。 それが、運命だと信じている。 …穏便に済めば、大事にならないかもしれない。 会場へ向かう馬車の中で侯爵令嬢は息を吐いた。 侯爵令嬢もまた記憶持ちだった。

生命(きみ)を手放す

基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。 平凡な容姿の伯爵令嬢。 妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。 なぜこれが王太子の婚約者なのか。 伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。 ※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。 にんにん。

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した

基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。 その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。 王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。

魅了から覚めた王太子は婚約者に婚約破棄を突きつける

基本二度寝
恋愛
聖女の力を体現させた男爵令嬢は、国への報告のため、教会の神官と共に王太子殿下と面会した。 「王太子殿下。お初にお目にかかります」 聖女の肩書を得た男爵令嬢には、対面した王太子が魅了魔法にかかっていることを瞬時に見抜いた。 「魅了だって?王族が…?ありえないよ」 男爵令嬢の言葉に取り合わない王太子の目を覚まさせようと、聖魔法で魅了魔法の解術を試みた。 聖女の魔法は正しく行使され、王太子の顔はみるみる怒りの様相に変わっていく。 王太子は婚約者の公爵令嬢を愛していた。 その愛情が、波々注いだカップをひっくり返したように急に空っぽになった。 いや、愛情が消えたというよりも、憎悪が生まれた。 「あの女…っ王族に魅了魔法を!」 「魅了は解けましたか?」 「ああ。感謝する」 王太子はすぐに行動にうつした。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

処理中です...