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しおりを挟む長期休暇が終わり、ルーズベルトは母と一緒に王都へと戻って来た。
王都はいつも賑やかで、人が多く、なんでも揃う。
だが、貴族同士、貴族と平民、平民同士のトラブルが、毎日のようにあちこちで起こっている。
ルーズベルトは領地のような穏やかなところが好きだった。
母は帰りの馬車の中で、ナターシャについて調べると息巻いていた。
確かに、母が言う通り魔力の多いナターシャが普通の平民だということに疑念を抱く。
だがもし、貴族の血筋だと暴いてしまえば、ナターシャは領地からいなくなってしまうのではないか。
ルーズベルトは母にそう聞いた。
「その可能性はあるわね。でも、何も知らないでいるのと、知っているのとでは、万が一の場合の対処に後れを取らずに済むと思うの。
ナターシャの意思を尊重してあげたいけれど、保護した伯爵家としてはこのままいてほしいのが本音だわ。」
「うん。僕もそう思う。」
ナターシャはわずか半年で思った以上に成長していた。
孤児になった可哀想な少女が屋敷で可愛がられて働いている姿を見るのが楽しかった。
それなのに、少女が大人に近づいていく姿に驚かされた。
毎日見ていれば、変化にそれほど驚かなかったのだろうが、半年ぶりだと明らかに違いがわかった。
確実に、大人に向かっている姿だった。
ドレス姿のナターシャは、ルーズベルトの感情を揺さぶった。
どこかで、ナターシャが貴族に引き取られたら、彼女と結婚する道もあるのではないかと期待した。
しかし、それ以前にルーズベルトには婚約者がいる。
婚約解消は簡単ではない。
それに、引き取った貴族がナターシャを結婚させない可能性もあるのだ。
元平民のため婚家に迷惑がかかると言い訳して、魔力の多いナターシャを領地に留め続けるかもしれない。
それだけ、ナターシャの魔力の多さは魅力的であると言える。
ルーズベルトは、それだけと言えない感情を抱いてしまったことが苦痛に感じた。
そして、王都の屋敷で、ナターシャの素性調査をしてほしいと言った母に、父は苦笑して言った。
「とっくに済ませてある。」と。
調査結果によると、ナターシャの母は元子爵令嬢で父は平民ということだった。
母親は1属性、父親は魔力の顕現なし。
どうにも腑に落ちない。
「父上、この結果は本当に間違いないのでしょうか?」
「ナターシャがこのミオナという元子爵令嬢から生まれたことは間違いない。だが私は、父親に関してはこのターリオという平民ではないと思っている。」
「違う男の子供を身籠った状態でこのターリオと結婚したということですか?」
「いや、そう思ったが、日数的には妊娠したのは結婚してからのようだ。つまり、ミオナが不貞をしたか、襲われたのではないかと思っている。」
母は驚いたようだ。もし襲われたのであれば新婚夫婦は辛い思いをし、隠すことを選んだのだろう。
「魔力の多さや属性を考えると、父親は高位貴族の可能性が高いですよね?」
「そうだろう。だが、ミオナは実家とは疎遠なため、本当の父親の素性は明かしていないはずだ。
ということは、ナターシャの存在を子爵家が知ることになれば、引き渡しを要求してくるだろう。」
だから、父はナターシャの素性について沈黙を選んだのか。
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