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ナターシャは、ルーズベルト様からお土産をいただいた。


「みんなにも王都で有名な焼き菓子を買ってきているけれど、これはナターシャにだけ、な。内緒だぞ?」

「あ、はい。ありがとうございます。」


髪飾りらしく、菓子とはずいぶん値段が違うものに躊躇したが、有難くいただくことにした。


ルーズベルト様が兄だったら、こんなことは当たり前の兄妹になれるのだろうか。

平民から貴族令嬢に。……いや、ないない。お断りさせていただきます。 




そして数日後、お断りしたにも関わらず、伯爵夫人に人形にされてしまった。


「まあ~!可愛いわ。よく似合っているわ。ちょっと微笑んで?うん、そう。
その辺の貴族令嬢よりも気品があるわよ。どこかのお茶会に連れ出したいわぁ。でもさすがに無理だから、お義母様もお招きして庭でお茶会しましょう!」


前伯爵夫人だけでなく、前伯爵も、そしてルーズベルト様も一緒にお茶会をすることになった。
 

「あら。素敵じゃないの。ナターシャは素地がいいものね。紅だけで十分可愛いわね。」

「ですわよね?お義母様。今はまだバッチリお化粧するよりも可愛いと思いましたの。」

「可愛いよ、ナターシャ。母に付き合わせてごめんね。」


ルーズベルト様が申し訳なさそうに謝ってきた。


「いえ、このような姿は初めてですので嬉しいですが、汚しそうでこわいです。」

「汚しても別に構わないさ。それにしても、ナターシャは姿勢や仕草も一段と綺麗になったね。」

「大奥様のご指導のおかげです。」

「お祖母様は容赦ないからなぁ。でも、姉上も恥をかかずに済んだと言っていたことがあるよ。」 


前伯爵様は無言のままだけど、賑やかなお茶会に満足らしく嬉しそうに見えた。
内容がナターシャのことがほとんどで申し訳ないが。


「それにしても、ナターシャが着飾ると、誰かに似てるって思ったのよねぇ。」


と伯爵夫人。


「知り合いの方?」


と前伯爵夫人。


「記憶を掠めた程度ですので、おそらく令嬢かしら?あるいは、子爵か男爵家の若いご夫人なのかも。
全員は覚えきれませんもの。髪色や雰囲気が似ていたのかもしれないわ。」


伯爵夫人はおそらく一度見かけただけなのだろう。

しかし、この会話で思わず考え込んだのが前伯爵夫妻と伯爵夫人。
ナターシャの遠縁なのではないか、と考えてしまったのは無理もない。

ナターシャについては伯爵が調査したということを3人は知らなかった。

今頃になり、魔力の多いナターシャはどこの貴族と繋がっているのだろうかと思い始めたのだ。
 
ナターシャと話していたルーズベルトは、大人3人がそんなことを考えていたことに気づかなかった。




 
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