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しおりを挟むコダック伯爵は、ナターシャに会うためだけに領地に戻ってきた。
王都から領地までは3日かかる。
領地から、保護を求める平民の少女の魔力が並の貴族以上だと手紙が届き、慌てた。
気が変わって、別の領地や王都で保護を求められては困るからだ。
顕現できても魔力が少なければ、日常生活に少し便利という程度でしかない。
だが魔力が多ければ、魔獣退治や災害時に非常に役に立つのだ。
少女ではなく少年であれば、もっと良かった。
騎士団長もそう思ったことだろう。
ルーズベルトよりも2歳下だというその少女。
息子に婚約者がいなければ、と思ったが、平民の少女と結婚させるわけにもいかない。
では愛人にさせるか、というのも平民の魔力持ちを利用したと非難されかねない。
無難なのは、親戚筋の誰かと結婚させて領地に留め置くことだろう。
あるいは徹底的に身元調査をし、貴族の血筋であると確認できれば養女にしてもいい。
しかしその場合、下手をすれば少女の親戚が身元を引き受けると言ってくるだろうことが問題になる。
そんなことを考えながら、手紙を受け取った2日後には領地へと向かったのだ。
そして対面したナターシャという少女。
12歳というには少し小柄に見えるが、可愛らしい少女だった。
だが、話してみると12歳とは思えないほどしっかりしていた。
これは、亡くなったという母親が元貴族か、元貴族の娘、あるいは貴族に仕えていた者に違いない。
話し方だけでなく、さりげない所作を見ればわかる。
教えられたか、あるいは見様見真似であっても、近くに見本がなければ貴族の所作にはならないだろう。
しかも、ナターシャは火と水の2属性という申告だったらしいが、魔石に込めた魔力を見ると別の属性も使えるのではないかと感じた。
本人は気づいていないのかもしれない。
いつか、騎士団長の元で試させてみよう。
しかし、平民が3属性あるいは4属性などあり得ない。
やはり、母親は元貴族に違いない。父親もそうかもしれない。
ひょっとして、母親は不義の子を生んだのか?相手は高位貴族の男の可能性は高い。
そう思った。
ナターシャの身元を詳しく調べるように手配をし、王都に戻った。
しばらくしてから届いたナターシャの調査書。
母親は、元子爵令嬢のミオナ。
父親は、平民のターリオ。
父親は平民ということだったが、ミオナが高位貴族に遊ばれたか襲われて妊娠していた場合、ターリオが父親でも血の繋がりはない可能性はある。
そうでないと、ナターシャの魔力の多さと属性が腑に落ちない。
ミオナの実家の子爵家は誰もが1属性で、両親も兄弟も顕現させることはできても魔力が多いとされる者はいなかったのだから。
ちなみに、ミオナと実家は音信不通。
平民の男を選んだことで、疎遠になったのだろう。
ミオナの死を知らないらしく、孫であるナターシャの存在を知れば引き取るに違いない。
それが愛情からではなく、多い魔力が魅力的だからだということになるのは間違いないだろう。
ナターシャがどこまで知っているかはわからないが、母親の素性を秘密にすると決めた。
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